公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座

読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる










工数を悪用した水増し請求は粉飾決算の温床

不正会計&監査の蹉跌 すべてを表示 財務会計 管理会計 税制 法務

工数を悪用した水増し請求は
粉飾決算の温床


今回は、次の【資料1:関連ブログ】のスピンオフ。
【資料1:関連ブログ】
工数を悪用した水増し請求と、そこから派生する粉飾決算の話です。
女子高校生を主人公とした『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』の感想ブログをアップロードした直後に、難解な会計の話を持ち出す。 こうしたギャップが、本ブログの特徴です。
今回はスピンオフということで、上記【資料1】で説明した意義や図表などは【資料1】を参照してもらうこととし、今回は次の論点を扱います。
【資料2】

  1. 工数を悪用した水増し請求は、どのようにして行なわれるのか。

  2. クライアントに対しては工数を前面に押し立てたセールスを行ないながら、社内のコスト管理で工数が粗雑に扱われるのは何故なのか。

  3. 残業手当の未払い問題は、工数管理を軽視した「監査の失敗」であることを理解しているか。

【資料2】2. にあるコスト管理は、具体的には「部門別計算」といい、次の手順で行なわれます。
【資料3】部門別計算と製品別計算

  1. 縦軸に労務費や製造経費の予算を見積もる。
    →これらのコストを「間接費」といいます。

  2. その予算額をさらに、固定費と変動費とに割り振る。
    →費目別精査法または科目別按分法といいます。

  3. 横軸に、予定される(標準となる)操業度を見積もる。
    →操業度には、生産数量・作業時間・機械加工時間・工数などがあります。

  4. 縦軸の予算額を、横軸の操業度で割って、固定費率と変動費率を求める。
    →2つ合わせたものを、予定配賦率(標準配賦率)といいます。

    ここまでの手順を「部門別計算」といい、以下の手順を「製品別計算」といいます。

  5. 固定費率と変動費率に、実際の操業度を乗じて、固定費と変動費の予定コスト(標準コスト)を製品へ振り替える。
    →これを配賦(はいふ)といいます。

  6. 実際に発生したコスト(実際コスト)を集計する。

  7. 予定コストから実際コストを減算して、固定費と変動費それぞれの原価差額を求める。
    →原価差異分析といいます。

【資料3】の手順は、会計基準で定められているものです。 詳細は、、次の拙著の第12章を参考にしてください。 上っ面の知識で、水増し請求や粉飾決算を批判するのはやめてほしい。
【資料1:関連ブログ】で述べたワイシャツの第1ボタンは、【資料3】1. にあります。 これって、本当に見積もることができるの? 例えば、向こう3か月間(四半期)で、あなたに支給される給与の額を、見積もることができるでしょうか。
  • 残業手当は? 昇給昇格は? 人事異動は?
  • リストラは? 不祥事は? 技術革新は?
  • ノルマを達成した者と未達となった者の格差はどうする?
──等々について、数十人・数百人・数千人について、同じことを見積もり、集計して、【資料3】1. を設定することができますか? 「できるぞ!」という前提で組み立てられているのが、現在の会計制度です。 これを「机上の空論」といいます。
いえ、「机上の空論」でも通用する時代がありました。 会計の仕組みが編み出された草創期です。 それははるか昔、大正デモクラシーの時代に遡ります。
【資料4】
昭和や平成ではないですからね。
当時は、次のことが想定されていました。
【資料5】
  • 作ったものは、すべて売れる。
  • 定時出社、定時退社(残業なし)。
  • 定年退職するまで、同じ職場で同じ作業を行なう。
  • 技術革新はない。
現在でも【資料5】を想定して、【資料3】のコスト管理が行なわれています。 ただし、それは対外的な体裁を取り繕うための建前。 現在の企業活動で、【資料3】のコスト管理を、そのまま行なうのは難しい。 そこで、以下で紹介するような「手抜き」が行なわれます。
【資料4】の操業度に注目します。 これには、生産数量・作業時間・機械加工時間・工数などがあります。 クライアントとの価格交渉で提示される操業度は、工数が圧倒的でしょう。 これは次の式で計算されます。
【資料6】
  • (工数)=(時間)×(人数)
例えば、ある仕事について、1人あたり8時間で、5人を投入する場合、その工数は「40」です。 これを予定工数または標準工数といいます。 実際工数が「38」や「39」くらいであれば問題になりません。
現実はどのような運用になっているか。 人数は5人であっても、時間のほうははるかに少ない実績になっているはずです。 1人あたり3時間で作業を完成した場合、実際工数は「15」になります。 予定工数(40)と実際工数(15)の差である「25」を、クライアントに請求することを、水増し請求といいます。 防衛産業や公共事業を中心に、広く蔓延している手法です。 【資料6】で工数を計算する場合、「人数」を調整するのは難しい。 しかし、「時間」のほうは、いくらでも調整がきく。 これが水増し請求として利用されます。
百歩譲って、予定工数を集計したものを、【資料3】3. の横軸に設定しているのであれば、まだ救いようがあります。 ところが、上場企業のほとんどは、救いようのない状況にあります。 実際に行なわれているのは、手順の省略です。 例えば、あるコストについて、前期の固定費率と変動費率の割合を「50%対50%」としましょう。 当期は「52%対48%」へ変更する。 翌期は「49%対51%」へ変更する。 上場企業の多くで行なわれているのは、「50%対50%」から「52%対48%」へ変更するにあたり、【資料3】1. から 4. までの手順を省略していることです。 また、「52%対48%」から「49%対51%」へ変更するにあたっても、【資料3】1. から 4. までの手順を省略していることです。 【資料3】1. から 4. までの手順をすっ飛ばし、【資料3】5. の固定費率と変動費率だけを毎期、変更するのです。 これを「部門別計算のブラックボックス化」といいます。 ブラックボックスの中は空っぽなので、その中を覗いたところで、予算の「よ」の字もないし、工数の「こ」の字もない。 ワイシャツの第5ボタンだけをとめて、胸をはだけたままで外を歩くようなものです。 企業側が、固定費率と変動費率の割合を「来期から『49%対51%』へ変更します」と主張すれば、会計監査人は「ああ、そうですか」と了承するだけ。 実務経験のない会計監査人は、上場企業から見下されるのを恐れているので、ブラックボックスに手を突っ込む度胸がありません。
以上の問題から浮かび上がるのは、【資料3】1. の縦軸で、残業手当が予定されていないことにあります。 だから、残業手当の未払い問題が起きる。 また、【資料3】3. の横軸で、クライアントに提示した工数が、コスト管理と連動していないことを指摘できます。 だから、上層部の指示によって、残業時間が書き換えられるのです。 水増し請求も容易に行なわれるのです。 これらは利益の過大計上になっているのですから、立派な粉飾決算であり、「監査の失敗」です。 それとも、仕訳として表わされないものは「監査対象ではない」のでしょうか。 仕訳のチェックだけなら、人工知能AI に任せればいいのであって、ヒト(会計監査人)の出番はありません。
東芝問題により、監査法人もその尻に火が付いたか。 昨今、会計監査人から「部門別計算(縦軸と横軸)の見直しを行なうように」という申し渡しが、あちこちの上場企業で行なわれているようです。 (申し渡しができない腰抜けでは、先が思いやられる) ブラックボックスの中が空っぽであることを暴かれたくない企業の側は、「何をいまさら」と、会計監査人からの要求を突っぱねるのでしょう。 会計監査人からすれば、「オレ(会計監査人)たちは、予算や操業度の見直しを要求した。見直しをしないのは、企業側の責任だ」と言い張るのでしょう。 人工知能AI だ、何だかんだと騒ぎながら、上場企業で行なわれているコスト管理なんて、この程度。 上場企業に問うてみたい。 固定費率や変動費率を、コチョコチョといじり回すことを、原価計算だコスト管理だと、胸を張っていえるのか。
【関連ブログ】

『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』青崎有吾

すべてを表示 企業分析&経済・時事 雑学 趣味 読書 鑑賞 活動履歴

『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』
青崎有吾


従前ブログ『体育館の殺人』では、登場人物を全員、男子高校生に置き換えても、話の本筋が成り立つストーリーでした。 薔薇族の展開になるかどうかは、ともかく……。
第2作『水族館の殺人』に続く、今回の第3作『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』は、学園ミステリーの風味が強く出ており、個人的にはお気に入りの部類。
風ヶ丘高校の周辺で暗躍する人たちの存在が、黒々とした予感を抱かせます。 まさか、百合族が跋扈することはないよなと。
学園ミステリーとしては、米澤穂信の「古典部シリーズ」が抜きん出ていたと思っていたのに、なかなかどうして、青崎作品も捨てがたい。
社会問題をもっと強く盛り込んだら、大きな文学賞を獲れるかも。 推理の技巧にとどまっていないので、将来、大化けするのではないか、という期待感を持たせてくれます。 ただし、作家の力量だけでなく、それをフォローする編集者の力量も必要でしょうけれど。

会計監査で人工知能AIを活用しても粉飾決算は糺せない

不正会計&監査の蹉跌 すべてを表示 人工知能AI ファイナンス 会計物理学

会計監査で人工知能AIを活用しても
粉飾決算は糺(ただ)せない


2017年3月15日付の日本経済新聞では、次の記事が掲載されていました。
【資料1】日本経済新聞「Disruption断絶を超えて(3)」2017年3月15日

原子力事業の混乱で2016年4~12月期連結決算の公表を再度延期した東芝。すべての発端は15年4月に発覚した不適切会計だった。

当時、監査を担当した新日本監査法人の関係者は悔やむ。「AI(人工知能)があれば、不正の温床となったバイセル取引を見抜けたんじゃないか」。

パソコン部門で横行していた利益水増しの取引手法。最も悪質性が高いともされるが、新日本の会計士たちは見過ごしてしまった。

監査実務で人工知能AI を用いれば、粉飾決算など容易に見抜けるぞ、と考えている会計監査人がいるとしたら、その考えは非常に甘い。
第1に、会計監査人の側が人工知能AI を用いるのであれば、企業の側はその能力を上回る人工知能AI を投入するはずだから。
粉飾決算に手を染めた企業が、会計監査人の裏をかこうとするその必死さは、前世紀(20世紀)においても今世紀(21世紀)においても、まったく変わりがありません。 第2に、会計監査人が人工知能AI を導入するには、莫大な投資が必要。 その資金を、被監査会社の報酬から捻り出せるのか。 第3に、人工知能AI を導入するとなると、監査従事者の大半が、リストラの憂き目に遭う。
削減した人件費を人工知能AI への投資にまわしたら、19世紀に前半に英国で起きたラッダイト運動みたいなことが勃発するでしょう。 サーバーの破壊活動とかね。
第4に、会計監査人の側がどれほど高度な人工知能AI を駆使しようとも、現在の会計制度を改めない限り、ザルで水を掬(すく)い取るようなもの。 現在の会計制度が抱える最大の欠陥は何か。 「見積もり」に立脚している点にあります。
上記【資料1】に「利益の水増し」とありました。 利益を水増しするためには、売上高の過大計上か、コスト(原価・費用・損失)の過小計上が行なわれます。 これらに共通するのは、価格に数量を乗じて求める点にあります。 価格を縦軸、そして数量を横軸にとれば、長方形の面積が、売上高やコストを表わします。
まず、売上高の場合、企業が架空伝票や架空契約書などで取り繕うとしても、会計監査人が外部の得意先に問い合わせれば、粉飾の事実を容易に突き止めることができます。 売上高が形作る長方形は、縦軸も横軸も実績値(=実際価格×実際数量)だからです。 次の勘定連絡図で確認します。
【資料2】勘定連絡図
画像
上記【資料2】の勘定連絡図は、次の拙著76ページに収録してあるものです。 【資料2】右端に、売上高勘定があります。 売上高勘定のさらに右には、得意先が控えており、両者で合意した実績値が計上されます。 得意先の協力なしに、実際価格や実際数量を、ごまかすのは難しい。 横領や背任行為のリスクを犯してまでも、得意先が協力してくれるかどうか。 次の関連ブログで紹介した工事進行基準などの例外を除けば、売上高勘定の右側で、価格や数量を意図的に操作する余地は乏しいといえるでしょう。
【資料3:関連ブログ】
売上高を舞台にした粉飾決算については、人工知能AI を利用するまでもない話です。
次に、コストの世界は、「見積もり」で溢れかえり、「恣意性」が我が物顔で横行します。 「勘定連絡図の左端のさらに左には、仕入れ先が控えているのだから、恣意性が介入する余地はないぞ」と思われるかもしれません。 それは買掛金勘定や未払金勘定の話です。 コストの場合、【資料2】にある材料勘定・労務費勘定・製造経費勘定から、仕掛品勘定を経由して、製品勘定に至るまで、すべてが「見積もり」で行なわれます。 見積もりという表現に語弊があるのなら、予定原価や標準原価と言い換えてもいいでしょう。 【資料1】にあった「バイセル取引」は、次の【資料4:関連ブログ】1. で紹介したように、材料勘定と仕掛品勘定の間で行なわれたものです。
【資料4:関連ブログ】
  1. バイセル取引とマスキング価格の裏に潜む怪物
  2. 有償支給のカラクリは、どのようにして悪用されるのか
  3. 「利益の先食い」を誘引させる、部品材料の有償支給
見積もりに基づく予定原価や標準原価には必ず、恣意性が塗り込められます。 肝に銘ずべき事実です。
コストを長方形で描いた場合、上場企業から中堅企業に至るまで、縦軸と横軸の両方で、次の方法による「見積もり」が行なわれます。
【資料5】
  1. 縦軸……費目別精査法
  2. 横軸……公式法変動予算
【資料5】1. の費目別精査法とは、例えば労務費の、向こう1年間の予算が1億円と見積もられる場合、そのうちの80%を固定費、残りの20%を変動費と見積もって、固定労務費8千万円と変動労務費2千万円とに振り分ける方法をいいます。 いまの記述で、「見積もり」という表現が2回も登場しました。 【資料5】2. の公式法変動予算とは、向こう1年間の生産数量・作業時間・機械稼動時間・工数などを見積もり、費目別精査法で求めた固定費と変動費で、固定費率と変動費率とを求める方法です。 縦軸だけでなく、横軸にも「見積もり」という表現が登場しました。 長方形全体が「見積もり」では、どのような「屁理屈」でも成り立ってしまうので、人工知能AI は何をどう判断していいのか、わからなくなります。
「向こう1年間」というスパンが長すぎるのであれば、向こう3か月(四半期)でも構いません。 問題は、たとえ3か月であっても、縦軸の労務費や製造経費の予算額を見積もったり、横軸の生産数量・作業時間・機械稼動時間・工数を見積もったりする行為には、恣意性が溢れかえるということです。

  • 企業側が「労務費の見積額は、1億円です」と主張すれば、会計監査人は「ああ、そうですか」と了承するしかない。

  • 企業側が「工数は10万時間です」と主張すれば、会計監査人は「ああ、そうですか」と了承するかしない。

  • 企業側が「当期の固定費と変動費の割合は80%と20%でしたが、来期は75%と25%にします」と主張すれば、会計監査人は「ああ、そうですか」と了承するしかない。

「見積もり」の恐ろしさは、1万人の担当者がいれば1万通りの見積もりが存在し、それに対して、企業実務を知らない会計監査人は「ああ、そうですか」と了承するしかないのです。
「見積もり」というのは、例えばワイシャツの第1ボタンをとめること。 企業が、第1ボタンを意図的に掛け違えた場合、会計監査人はその掛け違えを正すことはできません。 もし、会計監査人が「第1ボタンの留め方をやり直せ」と主張するのであれば、会計監査人は企業とともに経営責任を負う覚悟が必要です。 机上の試験問題を解く経験しか持たないボンボンに、そんな主張などできるわけがない。 会計監査人にできることといえば、第2ボタンや第3ボタンに掛け違えがないかどうかを、人工知能AI で検証することくらい。 こいつは不毛な作業だ。 さらに厄介なのは、材料勘定・労務費勘定・製造経費勘定から、仕掛品勘定を経由して、製品勘定に至る過程で、コストの一部が、棚卸資産や固定資産、そして子会社や下請業者へ、ボタンを掛け違えたまま流出することです。 そのカラクリについては、有償支給・無償支給の問題と絡めて、【資料4:関連ブログ】2. と 3. で説明しました。 また、次の関連ブログでも、スピンオフとして、同様のカラクリを説明しています。
【関連ブログ】
粉飾決算を予防することだけが目的であれば、すべての取引を、実績原価や実際原価(=実際価格×実際数量時間等)で計算することです。 しかし、実際原価計算制度がどれほど不毛であるかは、原価計算やコスト管理に関する教科書の最初で説かれています。
以上の説明における問題点は、「見積もり」と「恣意性」にあります。 不確定な将来を予測するために「見積もり」を排除することは不可能です。 しかし、見積もりをするにあたって、「恣意性」を排除する方法は存在します。 1万人の担当者が見積もり作業を行なったとしても、その見積もり結果が、たった1つの解に収斂(しゅうれん)していくのであれば、恣意性を排除することができます。 そのように都合のいい方法はあるのか。 あります。 次の受賞論文の26ページ〔図表35〕で説明している「タカダ式変動予算」が、その答えです。
【資料6】
次の【資料7】に、上記の受賞論文で掲載している「タカダ式変動予算」を再掲します。
【資料7】タカダ式変動予算
画像
【資料7】では、その横軸に、売上高を設定します。 売上高は、【資料2】の勘定連絡図にもあるとおり、得意先と合意した実績値です。 恣意的に操作できる余地はゼロです。 【資料7】では、「予算許容曲線」が描かれています。 これは、日々の会計処理を、複利曲線で繋ぎ合わせたものです。 なぜ、複利曲線なのか。 理由は、私(高田直芳)が、企業の原価計算実務やコスト管理活動に取り組んでいるとき、次の事実に気づいたことに端を発します。
【資料8】
  • 製造業に勤務する人であれば、工場内の各工程を観察してみてください。
    • 工場内に無数に存在する工程に、材料費・労務費・経費を次々と投入していくと、無限回数の振り替え計算が行なわれていることがわかります。
    • 材料・仕掛品・製品などが入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 流通業に勤務する人であれば、店舗に置かれた商品を観察してみてください。
    • 日々仕入れた商品は、棚に補充したそばから、消費者へ次々と販売されていきます。
    • 膨大な商品が入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 財務や経理に携われる人であれば、手元にある帳簿を観察してみてください。
    • 上場企業のような大規模組織になると、帳簿に記帳される仕訳の数は、1日で数百行や数千行にものぼります。
    • 振り替えの仕訳を含めれば、年間では数億行や数十億行の仕訳の数になります。
    • 入金と出金を無限に繰り返すその様は、無限連鎖の複利計算を行なっていることと同じです。
つまり、企業のコスト構造の本質は、複利計算構造にあることがわかります。 【資料8】の命題に基づいて描いたのが、【資料7】の予算許容曲線です。 日々の会計処理は「日々の実績」ですから、誰が取り組んでも【資料7】の予算許容曲線は同じ形状で描かれます。 予算許容曲線の形状を、恣意的に操作できる余地はゼロです。

  • したがって、誰が計算しても、縦軸上の基準固定費は一意的に決まります。

  • また、誰が計算しても、横軸上の点E(予算操業度)が一意的に決まります。

タカダ式変動予算に基づく原価計算制度の詳細は、次の書籍で詳述しています。 以上が、ワイシャツの第1ボタンの掛け違えを防ぐ「タカダ式原価計算制度」の方法です。 第2ボタン以降は、人工知能AI に任せればいいだけの話。
中小企業であれば、仕訳の数は年間で数千本になります。 上場企業で子会社を含めた連結集団ともなれば、連結損益計算書連結貸借対照表の裏に隠された仕訳の数は、数十万本・数百万本にもなります。 これだけの数になれば、統計学でいう「大数の法則」が働き、【資料8】で示した「無限連鎖の複利計算構造」が現われることでしょう。 そこに何らかの物理法則を見つけて、解き明かそうというのが、私(高田直芳)が創設した会計物理学の世界です。
【資料9:関連ブログ】
日々の会計処理で、【資料7】にある複利曲線から離れたものがあるならば、人工知能AI は会計監査人に対して注意を喚起することでしょう。 会計監査人は、そこを重点的にチェックすればいい。 いや、複利曲線(予算許容曲線)からの誤差率や乖離率を測定すれば、人工知能AI を利用するまでもない。
最後に注意点をいくつか。 1つめは、企業のコスト構造を複利曲線で描こうとする理論は、日本だけでなく欧米の論文や書籍にも存在しないことです。 2008年に出版した次の拙著が、会計物理学の始まりです。 誰かに師事したわけではなく、いかなる大学院・学会にも属したことはなく、すべて独学です。 上場企業や大学院などの看板を振りかざす者たちに、たった1人で立ち向かう。 公認会計士というのは、そういう職業です。
2つめは、100年以上もの間、実務の世界で用いられてきたのは、【資料5】にある費目別精査法や公式法変動予算だということです。 【資料5】の本質は、1次関数の単利計算構造にあることを、お見逃しなく。 企業活動は複利計算構造を内蔵しているにもかかわらず、それを単利計算構造で解き明かそうというのは、横車を押すのと同じこと。 創造力や革新性を欠いた者たちが、人工知能AI というチカラワザに頼ろうとするのは、当然の帰結だといえるでしょう。 会計監査に携わる者たちよ、人工知能AI で粉飾決算に対峙できると考えているようでは、企業からますます見下されるぞ。 実務は、そんなに甘くない。

『経済データの読み方』鈴木正俊

すべてを表示 人工知能AI ファイナンス 会計物理学 雑学 趣味 読書 鑑賞 活動履歴

『経済データの読み方』
鈴木正俊


マクロ経済学には興味がないけれど、たまに脳をブラッシュアップする意図で、経済学書を読みあさることがあります。 上掲書の「第4章 国民生活」と「第5章 物価」は、身近な話題として腑に落ちる。
とはいえ、テーマは終始、マクロ経済。 GDP(国内総生産)・消費者物価・国際収支などを読んでも、雲の上の話でした。
上掲書を読んでいるとき、1980年代に『日曜日の日本経済読本』というベストセラーがあったことを思い出す。 あれ? どこに仕舞い込んだっけ? と自宅の書棚を探したら、すぐに見つかった。 『日曜日の日本経済読本』は、バブル経済の上昇気流に乗り、将来がバラ色に見えた時代の書籍。 『経済データの読み方』は、バブル経済崩壊後の「失われた15年」を検証するもの。 冒頭で、マクロ経済学には興味がないと書きましたが、1年に1冊くらいは、こういう経済学書を読んで、時代の流れを感じるのもいい。
2017年3月16日付の日本経済新聞『大機小機』は、経済学者に奮起を促す言葉で締めくくられていました。 この要求は難しい。 その日経記事にもある通り、日本の為政者は、ノーベル賞受賞の米経済学者が大好きであり、日本の経済学者には見向きもしないから。 それを嘆いていた経済学者の講演を拝聴したことがあります。
経済学者が奮起しようにも、もっと恐ろしい事態が押し寄せています。 マクロ経済は、ビッグデータの宝庫。 そうなれば、人工知能AI の出番です。 人工知能AI であれば、日本経済や世界経済のデータを瞬時にかき集め、分析を行ない、それなりの解説記事を書くことができるでしょう。 10年後には、「AI 太郎が読み解く日本経済・世界経済」という電子書籍が、ネットで即日配信されるかも。

『水族館の殺人』青崎有吾

すべてを表示 雑学 趣味 読書 鑑賞 活動履歴

『水族館の殺人』
青崎有吾


従前ブログで紹介した『体育館の殺人』の続編。
前作よりも少しだけ「青春の風味」を盛り込んではいるものの、基本は「アリバイ崩し」に徹した本格推理。
長編小説でありながら、中だるみすることなく、読みやすい内容でした。
表紙で描かれている黄色のモップが、事件を解く鍵。 真犯人の動機については、なるほど、そうくるか。
ネフロフィリアの描写は、さらりと受け流す。 ストーリーの伏線となっている、阿部洋一のコミックス『血潜り林檎と金魚鉢男』については、ノーコメントとします。
こわいもの見たさとは、このことか。
水族館の殺人』の冒頭では、「主な登場人物」の品書きとして29人が紹介され、そのうちの11人が容疑者。 普通に読んでいたのでは、何が何だかわからなくなる。 反則技とは知りつつ、殺人事件が起きた時点で最終章に目を通し、真犯人を確認してから、「そこがトリックか!」と確認しながら読み進めました。
本格推理というと陰惨なものが多く、暗く重いイメージがあります。 青崎作品は、緻密な構成に「軽み」という風味が加えられていて、個人的には面白いと思う。 チキンカツサンドに関する駄じゃれは、なかなか良かった。 確か、ケンタッキーフライドチキンに、そんなメニューがあったっけ。 心臓の弱い人が三連勝する秘訣が、こんな食材にあったとは。

東芝問題の行く末を案ずる

不正会計&監査の蹉跌 すべてを表示 企業分析&経済・時事

東芝問題の行く末を案ずる

確定申告業務に忙殺されながらも、新聞などで時事問題はしっかりフォロー。 毎日、いろんな事件が起きるものだなと。
経済記事で頻繁に目に付く企業名は、東芝ヤマト運輸
物流問題は別に論ずるとして、東芝問題に関しては次の関連ブログで、「東芝の近日点」と「ルネサスエレクトロニクスの近日点」とをそれぞれ紹介しました。
【資料1:関連ブログ】
近日点というのは、企業の総コスト曲線(総費用曲線)と、売上高線とが交わらないときに現われる「点」です。
上記【資料1】の関連ブログでは、次の2つの図表を示しました。
【資料2】タカダ式操業度分析 ルネサスエレクトロニクスの近日点
画像
【資料3】タカダ式操業度分析 近日点が現われるケース
画像
上記の【資料2】や【資料3】で、なぜ「曲線」が描かれるのか、その理由については【資料1】の関連ブログを参照。
CVP分析(損益分岐点分析・線形回帰分析)という「なんとかの一つ覚えの財務諸表分析」に拘泥している人たちには、企業業績が崩壊していく様を理解することはできません。
このブログを書いている時点の東芝は、【資料3】にある赤色の総コスト曲線(総費用曲線)上を歩いていることでしょう。 しかしながら、医療機器事業や半導体モリー事業などを売却し、原発事業の減損をかぶるとなると、【資料3】にある赤色の曲線は、青色の曲線へと上方シフトし、その青色の曲線上で近日点 T が現われるだろう、と述べたのが、上記【資料1】のブログでした。
上記【資料3】にある点 T (東芝の近日点)と、【資料2】にある点 R (ルネサスの近日点)とは、見た目は同じです。 しかし、その近日点の行く末は異なるだろう、というのが、私の予想です。 ルネサスは、自動車産業界からの支援が大きい企業です。
【資料4】日本経済新聞2016年11月18日

ルネサスは車載用半導体の世界大手。東日本大震災後に経営危機に陥ったが、機構の支援で持ち直した。

機構は2013年に1株120円で同社株を取得したが今や株価は770円。機構の含み益は7000億円に達する。

東芝の場合、同社を支援するのはメガバンクが中心。 銀行が描く経営戦略は、企業の再生ではありません。 1に借金返済、2に借金返済、3と4がなくても、5に借金返済です。 融資先が破綻することは、銀行にとって最悪の事態ですから、これは何としても避けたい。 そのために、良質な事業を次々と売却することを、銀行は企業に求めます。 東芝が、医療機器事業や半導体モリー事業などの売却を迫られているのは、その現われ。
メガバンクの要求に屈し、カネのなる木を売り払った後に、破綻懸念先企業の本社に残るのは「抜け殻」です。 成長への推進力をなくした企業に現われるのが、【資料3】にある近日点 T というわけです。 そんな結論でいいのかな。 東芝には、銀行からの要求を跳ね返す「別の選択肢」もあると思うのだけれど。 粉飾決算の負い目があるから、銀行に対して強気になれないか。

『99.9%は仮説』竹内薫

すべてを表示 雑学 趣味 読書 鑑賞 活動履歴 財務会計 管理会計 税制 法務

『99.9%は仮説』
思いこみで判断しないための考え方
竹内薫


3月15日が期限の確定申告。 会計事務所の業務として最終コーナーをまわりつつ、時間が空いたので、上掲書をさらりと読みました。、
読後は、奇妙な感覚に襲われる1冊。
文体にかなりのクセがあります。 それを避けるように、すっすっと読んでいくと、ときどき「ああ、なるほどな」と納得する説明に出会えます。
演繹法帰納法のどちらが優位か、という説明は秀逸。 旧来の仮説を打倒するには、上掲書にある通り、演繹法のほうが優れているのでしょう。
しかしながら、例えば、目の前にある青色申告決算書・収支内訳書や確定申告書Bとその第2表を作成しているときに、帰納的に気がつく仮説もあります。
それを論証する時間が足りないのが、実務家にとっての課題というべきか。

公認会計士高田直芳:税の損得分岐点/法人税と所得税はどちらの機会損失が小さいか

すべてを表示 人工知能AI ファイナンス 会計物理学 財務会計 管理会計 税制 法務

~ 税の損得分岐点 ~
法人税所得税
どちらの機会損失が小さいか


管理会計や経営分析などの世界では、「法定実効税率」という概念があります。 これは、法人税・住民税・事業税を組み合わせて、法人が負担する税率を計算したものです。
法定実効税率の計算式については、次の拙著を参照。 日本経済新聞では、法定実効税率ではなく、法人実効税率という名称を用いているので、注意が必要。
【資料2:関連ブログ】
名称がどのようなものであろうとも、法定実効税率(法人実効税率)の本質は、「平均税率」であることです。
会計知や税知のない人たちが、しばしば抱く疑問に、次のものがあります。
【資料3】

納税者の視点に立った場合、「所得税が課せられる個人事業」と、「法人税が課せられる会社」とでは、どちらが有利なのか。

上記【資料3】にある「どちらが有利か」というのは、次の【資料4】の関連ブログで言い換えるならば、「どちらが機会損失を小さくできるか」となります。
【資料4:関連ブログ】
注意したいのは、「法人税法定実効税率」と「所得税法定実効税率」とを比較して、【資料3】の是非を問うのは誤りだ、という点です。 なぜなら、次の経済学書の第3原理にあるとおり、「限界費用に基づいて考える」べきだからです。 経済学のいう「限界費用」とは、管理会計では「変動費率」のこと(変動費ではありません)。 また、経済学のいう「限界費用」とは、税法では「限界税率」のこと。 したがって、【資料3】で、「どちらが機会損失を小さくできるか」を問うためには、平均税率(法定実効税率)ではなく、限界税率で判断する必要があります。
平均税率と限界税率は、どのように異なるのか。 まずは、わが国で定められている税率を参考にして、「法人税の平均税率」と「所得税の平均税率」とを、次の【資料5】で描いてみました。
【資料5】「法人税の平均税率」と「所得税の平均税率」
画像
上記【資料5】を見ると、所得(横軸)が1200万円よりも少なければ、個人事業のほうが機会損失が小さい。 それに対し、所得(横軸)が1200万円よりも多ければ、法人成りして会社にしたほうが、機会損失が小さい。 ──という結論になります。
しかし、平均税率で比較する【資料5】が誤りであることは、すでに述べたとおり。 では、「法人税の限界税率」と「所得税の限界税率」とを比較すると、どうなるか。 それが次の【資料6】になります。
【資料6】「法人税の限界税率」と「所得税の限界税率」
画像
上記【資料6】を見ると、所得(横軸)が400万円から900万円の間であれば、個人事業であろうと、法人成りして会社にしようと、機会費用(機会原価)に大差がありません。 つまり、機会損失は、どちらもほぼ同じ。 ところが、所得(横軸)が900万円を超えると、「所得税の限界税率」が、「法人税の限界税率」を大きく上回ることから、この場合は法人成りしたほうが機会損失を小さくすることができます。
以上が、財務省国税当局などが目論む「税の損得分岐点」。 「損益」を問うのではなく、「損得」を問うので、「税の損益分岐点」ではなく、「税の損得分岐点」と呼びます。 【資料6】では、400万円から900万円までの幅(ゾーン)があることから、「損得分岐点」と呼ぶよりも、「損得分岐ゾーン」と呼ぶのが相応しい。
閑話休題、会計知や税知のない納税者は、平均税率で機会損失の大きさを判断してしまうので、法人成りするよりも個人事業のほうが有利なように見えます。 ところが実際は、所得税のほうが、税負担が大きい。 法人税率の引き下げについては経団連などが要望を出していますが、所得税率の引き下げを要望する団体は存在しません。 おまけに、サラリーマンの大半が、源泉徴収されている自身の所得税に関心がないときたもんだ。 所得税が、「とりやすい税制」といわれる所以です。 【資料5】と【資料6】を見比べると、財務省国税当局などは、うまく制度設計しているなぁ、と感心してしまうのであります。
話のついでに、【資料6】の右半分に注目します。 赤色の線(所得税の限界税率)が、青色の線(法人税の限界税率)を大きく上回っています。 これにより引き起こされる経済現象を、2つ紹介しておきます。 1つめは、役員などの個人へ所得分配するよりも、法人に内部留保したほうが、機会損失を小さくできること。 法人の内部留保が積み上がる理由が、ここにあります。 それを押さえ込もうというのが、同族会社などへの留保金課税です(法人税法67条)。 2つめは、所得税率の高さに嫌気がさした高額所得者は、海外へ資産を移転させたほうが、機会損失を小さくできること。 タックスヘイブン租税回避地)に人気が集まる理由です。
法人税所得税に、機会損失を絡めた論点は、ざっとこんなところ。 どちらの機会損失が小さいかは、【資料6】で描いた2本の線の高低差を見比べれば、容易に判断できる話。 これでは、小学生の算数どまりです。 ですから、「税の損得分岐点」そのものは、私(高田直芳)が創設した「会計物理学」では、序の口の段階にすぎません。 会計物理学が目指すのは、有価証券報告書に掲載されている連結貸借対照表連結損益計算書・連結キャッシュフロー計算書などを用いて、企業ごとに「損得」分岐点を求めることにあります。 その会計物理学から導かれた「タカダ式確率微分方程式」という一般公式からは、いくつかの実務解が導かれます。 「企業活動の損得分岐点」は、そうした実務解の1つです。
【関連ブログ】

公認会計士高田直芳:日本経済新聞AI記者が罷り通る

すべてを表示 人工知能AI ファイナンス 会計物理学 企業分析&経済・時事

日本経済新聞 AI 記者が罷り通る

2017年2月19日付の日本経済新聞に、次の記事が掲載されていました。
【資料】日本経済新聞2017年2月19日

日本経済新聞電子版では人工知能(AI)を使った情報サービス、「決算サマリー」を始めました。

国内の上場企業が発表する決算の要点を発表後すぐに読みやすい文章で提供します。

作業は機械による完全自動で人手は一切介しません。(途中略)

決算の発表からサマリーが掲載されるまでの時間は今のところ2分程度です。

電子版の記事を読んでいて、違和感を覚えないところが、すごいなと。
日経のAI記者は、「ヒトの主観」を排除して、クールな分析に徹している、というのが率直な印象です。
いまは確定申告の季節で、業務に忙殺される日々。 この業務もいずれは、人工知能AI が代替してくれることでしょう。
医療費の領収書をスマホにかざすだけで、「アナタノ還付金ハ、1万円デス」なんて、人工知能AI が即座に返答してくれるのだろうな。
人工知能AI の発達によって、簿記などの知識は不要になる、という記事を、ずいぶん前に読んだことがありました。
現金出納帳は、左側(借方)が入金で、右側(貸方)が出金。 ゆうちょ銀行の貯金通帳も、左側が入金で、右側が出金。
ところが、銀行や信用金庫などの預金通帳は、左側が出金で、右側が入金。 「入金と出金が、なぜ逆になるのか」という理由を語れる人が少なくなりました。
人工知能AI が発達して、簿記が廃(すた)れると、こうした社会制度の基本的な仕組みさえ、ヒトは理解しない。
“ know how ”を操る人工知能AI が増殖するにつれて、それに反比例するかのように、“ know why ”を語れるヒトが減衰していくのでしょう。

公認会計士高田直芳:東芝の債務超過が非でベンチャー企業が是である理由

タカダ式操業度分析vs.古典派会計学 すべてを表示 企業分析&経済・時事

東芝債務超過が非で
ベンチャー企業が是である理由


今回は、変則的な話。
今から十年が経過したとき(2027年や2028年)、そのときから遡って十年前(2017年や2018年)の東芝がどういう業績であったかを予想する話です。
キーワードとなるのが、債務超過
次の【資料1:関連ブログ】では、【資料2】に掲げる疑問を投げかけました。
【資料1:関連ブログ】
【資料2】

  1. メディアの報道を見ると、東芝債務超過の金額がバラバラ。
    • 論ずる者によって、なぜ、金額が異なるのか。

  2. 債務超過というのは、ベンチャー企業でしばしば見かける業績。
上記【資料2】1. については、次の拙著90ページから94ページまでを参照。 会計には、財務会計管理会計の2分野があって、【資料2】1. は財務会計に属する話です。 金融機関の多くは「ああだ、こうだ」「国内基準だ、IFRS基準だ」と理屈をこねることなく、純資産をベースにしていることを申し添えておきます。 会計基準策定団体は、重箱の隅をつつきすぎる。
以下では、【資料2】2. に関する話を進めます。 これは、管理会計では債務超過をどのように評価するか、という話です。 【資料2】では、ベンチャー企業債務超過は「是」だと述べました。 しかし、ベンチャー企業でも「非」の場合があります。 是か非かを分ける分水嶺は、どこにあるのか。 まずは「是」の場合から見ていくことにします。
債務超過は、貸借対照表に現われるものです。 これは結果論。 結果が現われるためには、原因があります。 その原因を表わしているのが、損益計算書です。 毎期、赤字が少しずつ累積していって債務超過に転落する場合もあれば、ある年にドカンと減損処理を行なって債務超過に転落する場合もあります。 どのような場合であろうとも、あと少し我慢すればいずれは黒字に復帰し、過去の債務超過は一掃されるだろう、と期待されるとき、現状の債務超過は「是」と評価されます。 上場企業の場合、上場廃止基準というタイムリミットがあるので、あと少し我慢すれば「いずれは黒字に復帰できるだろう」という期待が持てるとき、メガバンクなどの銀行団が一時的に支援する大義名分が成り立ちます。 ポイントは、「いずれは黒字に復帰できるだろう」と期待できる点にあります。
管理会計の教科書でしばしば登場するCVP分析の図表を用いて、その期待とやらを説明しましょう。
【資料3】CVP分析(損益分岐点分析・線形回帰分析)
画像
【資料3】にある黒色の直線は売上高線であり、赤色の直線は総コスト直線(総費用直線)です。 総コスト直線上にある点Aが、現在の業績だと想定します。 点Aは売上高線を上回っているので赤字決算。 この状態が毎期累積していくと、債務超過に転落します。
【資料3】の中央に、損益分岐点Pがあります。 現在の業績が点Aにあっても、全社一丸となって頑張れば、いずれは損益分岐点Pに到達し、点Pを超えれば無限の利益拡大が保証される。 そうなれば、債務超過など一掃できる。 【資料3】は、そうした期待を持たせるものです。
減損の場合をCVP分析で描くと、次の【資料4】になります。
【資料4】CVP分析 減損のケース
画像
減損処理を行なうと、総コスト直線(総費用直線)は、赤色の直線から青色の直線へ上方シフトします。 損益分岐点は、点Pから点Qへと遠のいてしまいますが、全社一丸となって頑張れば、いずれは損益分岐点Qに到達し、点Qを超えれば無限の利益拡大が保証される。 そうなれば、債務超過など一掃できる。 【資料4】は、そうした期待を持たせるものです。
メガバンクをはじめとする銀行に、どれくらいの数のMBAホルダーが在籍しているのかは知りません。 数の多寡にかかわらず、彼ら全員が、ビジネススクールや大学院で学んできたのは、【資料3】や【資料4】のCVP分析です。 CVP分析は別名、損益分岐点分析や線形回帰分析とも呼ばれます。 管理会計や経営分析などのノウハウを持った銀行員が、全国で10万人いるとするならば、その全員が「CVP分析は絶対に正しい」と教え込まれてきた理論です。
私がかつて属していた銀行業界へ、アドバイスをしておきましょう。
  • 「なんとかの一つ覚え」みたいに、CVP分析は絶対に正しい理論だと信じて、銀行が債務超過の企業を支援するならば、企業も銀行も共倒れになるリスクがあるということを。
理由は、【資料3】や【資料4】のCVP分析には「理論上の瑕疵」があるからです。
【資料3】や【資料4】で描かれている総コスト直線(総費用直線)は、1次関数です。 1次関数とは、単利計算構造のこと。 すなわち、CVP分析は、企業のコスト構造を、単利計算構造で説き明かそうとするものです。 ところが、現実の企業活動では、次の【資料5】に示す事実を観察することができます。
【資料5】
  • 製造業に勤務する人であれば、工場内の各工程を観察してみてください。
    • 工場内に無数に存在する工程に、材料費・労務費・経費を次々と投入していくと、無限回数の振り替え計算が行なわれていることがわかります。
    • 材料・仕掛品・製品などが入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 流通業に勤務する人であれば、店舗に置かれた商品を観察してみてください。
    • 日々仕入れた商品は、棚に補充したそばから、消費者へ次々と販売されていきます。
    • 膨大な商品が入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 財務や経理に携われる人であれば、手元にある帳簿を観察してみてください。
    • 上場企業のような大規模組織になると、帳簿に記帳される仕訳の数は、1日で数百行や数千行にものぼります。
    • 振り替えの仕訳を含めれば、年間では数億行や数十億行の仕訳の数になります。
    • 入金と出金を無限に繰り返すその様は、無限連鎖の複利計算を行なっていることと同じです。
つまり、企業のコスト構造の本質は、複利計算構造にあることがわかります。 それを単利計算構造の【資料3】や【資料4】で解き明かそうとするのは、「瑕疵ある企業分析」なのです。
単利計算構造の【資料3】を、【資料5】の命題に基づいて複利計算構造で描き直すと、次の【資料6】になります。
【資料6】タカダ式操業度分析
画像
【資料6】の総コスト曲線上にある点Eを、現在の業績だと想定します。 点Eは、売上高線を上回っているので赤字決算。 この状態が毎期累積すれば 債務超過になります。
【資料6】の中央に、損益操業度点Sがあります。 企業のコスト構造を複利関数で描く場合、「損益分岐点」ではなく、「損益操業度点」と名を改めます。 損益分岐点が「黒字と赤字が分岐する点」と定義されるのに対し、損益操業度点は「黒字と赤字の分水嶺となる点」と定義されます。 これがタカダ式操業度分析の特徴です。 現在の業績が点Eにあっても、全社一丸となって頑張れば、いずれは損益分岐点Sに到達し、点Sを超えれば何とか黒字を確保できそうだ。 【資料6】は、そうした期待を持たせるものです。
ところが、減損となるとそうはいきません。 単利計算構造の【資料4】を、【資料5】の命題に基づいて複利計算構造で描き直すと、次の【資料7】になります。
【資料7】タカダ式操業度分析 減損のケース
画像
【資料7】は、ある年にドカンと減損処理を行なった場合に限られません。 毎年、赤字が累積していった場合でも、【資料7】にある青色の曲線へ上方シフトすることがあります。
【資料6】や【資料7】で示した「タカダ式操業度分析」は、「机上の空論」ではありません。 【資料7】を具体的に論証したのが、次の受賞論文の15ページ〔図表23〕で描いた、ルネサスエレクトロニクスのケースです。 【資料9】にその概略図を掲げます。
【資料8】
【資料9】タカダ式操業度分析 ルネサスエレクトロニクス
画像
【資料3】では、総コスト直線(総費用直線)が上方へシフトしても、損益分岐点Qが存在しました。 それに対し、【資料7】では、青色の総コスト曲線が、黒色の売上高線と交わらないので、損益操業度点が存在しない状態であることを確認できます。 【資料9】では、24個の点(24四半期)を基に、総費用曲線を描いています。 この総費用曲線が、売上高線と交わっていないことを確認してください。
【資料7】や【資料9】では、総コスト曲線(総費用曲線)が売上高線に最も近づくところを「近日点」と表示しています。 「水星の近日点移動」が、ニュートン力学ではなく、アインシュタイン一般相対性理論で解明された歴史的事実を拝借しました。 それはともかく、損益操業度点ではなく、近日点が現われるときは、全社一丸となってどんなに頑張ろうとも黒字決算に転換することはなく、債務超過を解消することはできない。 この認識が、最も重要。 【資料9】の横軸上に、「近日点売上高」があります。 この売上高を超えようとする努力は、むしろ傷口を広げてしまうことを、【資料7】や【資料9】で確認してみてください。
話を【資料3】や【資料4】に戻しましょう。 これらの図表は、全国の銀行員10万人が「絶対に正しい」と信じるCVP分析(損益分岐点分析)に基づいています。 絶対的通説ともいえるこの理論から導かれるのは、全社一丸となって頑張ればいずれは損益分岐点に到達し、「黒字に復帰できるのだ」「債務超過を解消できるのだ」という幻想を、企業にも銀行にも抱かせることにあります。 経営危機に直面しながらも、経営者が事業売却に未練がましさを見せるのは、CVP分析に毒されている証拠。 経営者に未練を引き起こさせるのは、現代の会計学が抱える「理論上の瑕疵」が原因です。 それが経営者を惑わせる。 こうした瑕疵を抱えた会計学を、「古典派会計学」と呼ぶことにしています。 【資料6】【資料7】【資料9】は、私(高田直芳)がたった1人で始めた「タカダ式操業度分析」であり、この分析方法を含めた一連の体系を「会計物理学」と称しています。
さて、東芝の業績は、どうなっていくのか。 医療機器事業や半導体モリー事業の売却、そして原発事業からの撤退により、【資料7】にある「近日点」が現われるのかどうか。 原発廃炉事業に、活路を見出せるのかどうか。 東芝の損益操業度点や近日点がどのような位置取りになるのかは、今から十年後に、そこから十年前に遡って、私(高田直芳)が検証することになるのでしょう。 タカダ式操業度分析は、日本だけでなく欧米にも存在しない理論であり、著作権法上、私1人しか扱えないですから。
従前ブログで紹介した書籍『福岡伸一 生物と無生物のあいだ』では、次の文章を引用しました。

雑巾がけ、かばん持ち。あらゆる雑役とハラスメントに耐え、耐えきった者だけがたこつぼの、一番奥に重ねられた座布団の上に座ることができる。

古い大学の教授室はどこも似たような、死んだ鳥のにおいがする。

メガバンクなどの審査部では、さすがに死臭はしないでしょう。 しかしながら、古典派会計学のノウハウで、銀行が、企業の再建策を検討するのであれば、十年後には、不良債権という名の腐臭を放つことを予言しておきます。 そのとき、タカダ式操業度分析を中心とした会計物理学を用いると、近日点がくっきりと浮かび上がることでしょう。
私は別段、東芝を擁護しないし、非難もしない。 実務で役立たぬ会計を、実務で役立つように再構築すること。 具体的な数値をもって、企業業績を公正中立に評価すること。 それらを追い求めるために、会計物理学を創設しました。 立ち塞がるのは、古典派会計学を墨守する権威主義。 たった1人で立ち向かうために、会計物理学は強力な武器となることを、東芝問題で再認識しているのでした。

公認会計士高田直芳:『生物と無生物のあいだ』福岡伸一

すべてを表示 人工知能AI ファイナンス 会計物理学 雑学 趣味 読書 鑑賞 活動履歴
著者自身が「象牙の塔」に属しながら、その内部をこれほどまでに徹底批判する書籍も珍しい。 それは後述するとして、上掲書の著者について、最初に読んだのは次の書籍。
動的平衡』は、正直なところ、よく理解できませんでした。 再チャレンジの意味で読んだのが、『生物と無生物のあいだ』。
なるほど、読む順番を間違えました。 『動的平衡』よりも先に、『生物と無生物のあいだ』を読むべきでした。
内容は非常に刺激的で、参考になります。
生命科学分子生物学そのものは門外漢。
それよりも、私(高田直芳)が創設した会計物理学の、その方向性に間違いはないようだ、という確信を得たのが大きな収穫です。
【関連ブログ】
シュレーディンガー方程式」や「シュレーディンガーの猫」で有名な物理学者の卓見が素晴らしい。 自然科学を学んでいると、「原子は、なぜ、そんなにも小さいのか」を問うてしまいがちです。 それは見当違い。 むしろ、「生物は、なぜ、こんなにも大きくなってしまのか」と問うことが重要であると、『生物と無生物のあいだ』で述べられています。

シュレーディンガーが、なぜこようなことを諄々と説明したかといえば、物理法則は多数の原子の運動に関する統計学的な記述であること、つまりそれは全体を平均したときにのみ得られる近似的なものにすぎない、という原理を確認したかったからである。

手前勝手な解釈をさせてもらうならば、財務諸表や決算書などは、多数の会計処理を統計学的に記述したものであり、そこには何らかの物理法則が観測されるであろうこと。 それを解き明かすのが、会計物理学。
私はそう確信しています。
それにしても「象牙の塔」の世界は、名誉欲や嫉妬が渦巻くところなのだなと。

雑巾がけ、かばん持ち。あらゆる雑役とハラスメントに耐え、耐えきった者だけがたこつぼの、一番奥に重ねられた座布団の上に座ることができる。

古い大学の教授室はどこも似たような、死んだ鳥のにおいがする。

他者の論文の「盗み見」のエピソードを読んで、思わず口をあんぐり。 学者はそこまでして、「名誉の先取り」がしたいのか。 アマゾンの書評を見ると、★印1つのものを見かけます。 これって、同業者の嫉妬なんだろうなぁ。 生物でもなく無生物でもない「死臭が漂う世界」を、★印1つの向こうに見る。

公認会計士高田直芳:東芝問題はどこまで突き進むのか

すべてを表示 人工知能AI ファイナンス 会計物理学 企業分析&経済・時事

東芝問題はどこまで突き進むのか

ここ数日で俄然、注目を浴びている「債務超過」という用語。 かつて、日本航空東京電力などでも取り上げられた会計用語です。
素朴な疑問を2つほど。
【資料】

  1. メディアの報道を見ると、東芝債務超過の金額がバラバラ。
    • 論ずる者によって、なぜ、金額が異なるのか。

  2. 債務超過というのは、ベンチャー企業でしばしば見かける業績。
オリジナリティのない分析手法を振りかざしている人たちを見ていると、従前ブログ『山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた』で紹介した「阿倍野の犬実験」を見ているよう。 都合のいい数値を取り上げ、実験で用済みとなれば、溺れる犬を叩くかのごとく。
別に東芝に肩入れする気はないけれど、フェアとも思えぬ道具を持ち出して、東芝を非難するのはやめてほしい。 特に、増収減益や減収増益を「普通に説明できない」会計学に、債務超過の是非を語る資格はない。
【関連ブログ】
債務超過に限らず、あらゆる会計事象に通用する一般公式や図表を提示し、公正不偏な態度で評価すべきです。
それが、本ブログが目指す会計物理学。
東芝について、論ずべき話題はたくさんあります。 ただし、これから「確定申告の季節」。 その後は、「監査の季節」。 タダ働きをしている余裕はありません。
おまけに、読みたい小説が、たくさんあるし。 私にとっては、そちらが喫緊の課題。 ぼちぼちと行きましょう。
東芝は、“ too-big-to-fail company ”。 あわてない、あわてない。

公認会計士高田直芳:減収増益や増収減益を図解できない会計学のその愚かさを問う

すべてを表示 人工知能AI ファイナンス 会計物理学 企業分析&経済・時事

減収増益や増収減益を図解できない会計学
その愚かさを問う

~会計物理学はマクロ経済をも解き明かす~

2017年2月11日付の日本経済新聞では、次の記事が掲載されていました。
【資料1】日本経済新聞2017年2月11日

上場企業の2017年3月期業績が2期ぶりに最高益を更新しそうだ。

前期よりも円高水準にあり、全体で7期ぶりの減収になるものの、付加価値の高い製品やサービスで採算が大きく改善する。

上掲の記事はこの後、2面にわたる解説が展開されています。 付加価値などにツッコむ余地がありますが、記事は緻密に分析された内容です。 いや、ちょっと待てよ。 「2期ぶりに最高益を更新」と「7期ぶりの減収」の関係を、どれだけの人が正確に理解しているだろうか、と心配になってしまいました。 なぜなら、会計の専門家を自認する会計学者・公認会計士コンサルタントたちにとって、「2期ぶりに最高益を更新」と「7期ぶりの減収」の関係は、まったく説明がつかない現象だからです。
まず、定義を整理しておきます。 「減収」というのは、売上高が減少する略称です。 売上高が増加することを、「増収」といいます。 売上高からすべてのコスト(総コストまたは総費用)を減算したものが「利益」であり、これには営業利益・経常利益・当期純利益などがあります。 「増益」は利益が増えることであり、「減益」は利益が減ることです。 以上を組み合わせると、企業業績は次の4つのパターンに色分けされます。
【資料2】

  1. 増収増益
    ……売上高が増えて、利益も増えること

  2. 減収減益
    ……売上高が減って、利益も減ること

  3. 増収減益
    ……売上高は増えるが、利益は減ること
      「利益なき繁忙」といいます。

  4. 減収増益
    ……売上高は減るが、利益は増えること

上記【資料1】の記事は、【資料2】の「 4. 減収増益」のことを述べています。
そこで問題となるのは、現代の会計学は【資料2】の4つのパターンを、きちんと説明できるのか、という点です。 答えは、「できない」。 その理由を考えてみます。
ひと口に会計学といっても、これは管理会計・財務分析・経営分析・原価計算など多岐に分かれます。 ただし、どのように枝分かれしようとも、そこで示されるのは、次の【資料3】です。
【資料3】CVP図表(損益分岐点図表)
画像
上記【資料3】を用いて【資料2】のパターンを説明する方法を、CVP分析・損益分岐点分析・限界利益分析といいます。 「損益分岐点分析と限界利益分析は違うぞ」と反論する向きには、次の関連ブログを紹介しておきます。
【資料4:関連ブログ】
上記【資料3】において赤色で描かれた直線は、1次関数で表わされることから、CVP分析(損益分岐点分析)は別名「線形回帰分析」と呼ばれることがあります。 1次関数の線型回帰を原価計算制度に応用したものが、上場企業から中小企業に至るまで、大正9年から「なんとかの一つ覚え」のごとく採用されている予定原価・標準原価です。
【資料5:関連ブログ】
【資料3】の縦の線分ABEに注目します。 売上高が点Eにあるとき、利益は線分ABで表わされます。 売上高が点Eから点Fへ減ったとしましょう。 これは「減収」です。 このとき、利益は、線分ABから線分CDへ「縮小」しますから、「減益」となります。 売上高が点Fから点Eへ増加(増収)した場合は、線分CDから線分ABへと伸長(増益)します。 【資料3】を用いて説明できるのは、【資料2】の「1. 増収増益」と「2. 減収減益」の2つのパターンだけです。 【資料3】をどのように引っ繰り返しても、【資料2】の「3. 増収減益」と「4. 減収増益」は説明できません。 これが、現代の会計学が抱える「理論上の瑕疵(かし)」です。
さすがに経済学は、会計学のような瑕疵を抱えていません。 次の【資料6】に示す経済学書などを参照すると、2次関数または3次関数を用います。
【資料6】
次の【資料7】は、2次関数で描いたものです。
【資料7】経済学(2次関数)
画像
【資料7】において、横軸にある売上高が点Eから点Fへと減少(減収)したとき、利益は線分ABから線分CDへと伸長(増益)します。 これが、減収増益です。 【資料7】を用いれば、【資料2】に示した4つのパターンすべてを説明することができます。 会計学は2つのパターンしか説明できないのに対し、経済学は4つのパターンすべてを説明できる。 会計学が、経済学から見下される理由が、よくわかるというものです。
【資料8:関連ブログ】
「理論上の瑕疵」を放置している現代の会計学を、「古典派会計学」と呼ぶことにしています。
ただし、残念ながら、私(高田直芳)にいわせるならば、古典派会計学も経済学も、五十歩百歩で、どちらも大したことありません。 なぜなら──、
【資料9】
  • 上記【資料3】や【資料7】の赤色の直線または曲線が、企業のコスト構造を表わすものとした場合、
  • それが、なぜ、1次関数・2次関数・3次関数で描かれるのか、その説明がなされていないからです。
ちなみに、【資料7】の曲線は2次関数ですから、経済学では、企業活動を「放物運動」として捉えていることがわかります。 すなわち、等速度運動と等加速度運動の合成です。 しかし、なぜ、放物運動なのか。 経済学者は、【資料7】の上方に、ブラックホールなどの重力場でも想定しているのでしょうか。 日本だけでなく欧米の経済学書や論文などを調べてみましたが、【資料9】の「なぜ」に答えてくれる文献を見つけることはできませんでした。 そもそも、上場企業の有価証券報告書データなどを用いて、2次関数・3次関数を具体的に描いてみせた書籍や論文も存在しませんでした。 経済学よ、実務を愚弄するにもほどがある。 ──と批判するなら、自ら対案を示す必要があります。 それが、栃木の野に下った実務家の意地というものです。 税金を原資とした俸給で、ぬくぬくと暮らしている連中に、負けるわけにいきません。
私は、企業実務の最前線で、汗と油にまみれて働いているとき、次の事象を見出しました。
【資料10】
  • 製造業に勤務する人であれば、工場内の各工程を観察してみてください。
    • 工場内に無数に存在する工程に、材料費・労務費・経費を次々と投入していくと、無限回数の振り替え計算が行なわれていることがわかります。
    • 材料・仕掛品・製品などが入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 流通業に勤務する人であれば、店舗に置かれた商品を観察してみてください。
    • 日々仕入れた商品は、棚に補充したそばから、消費者へ次々と販売されていきます。
    • 膨大な商品が入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 財務や経理に携われる人であれば、手元にある帳簿を観察してみてください。
    • 上場企業のような大規模組織になると、帳簿に記帳される仕訳の数は、1日で数百行や数千行にものぼります。
    • 振り替えの仕訳を含めれば、年間では数億行や数十億行の仕訳の数になります。
    • 入金と出金を無限に繰り返すその様は、無限連鎖の複利計算を行なっていることと同じです。
つまり、企業活動の本質は、複利計算構造にあることがわかります。 それに基づいて描いたのが、次の【資料11】に示す「タカダ式操業度分析」です。
【資料11】会計物理学(タカダ式操業度分析)
画像
【資料7】と【資料11】それぞれの赤色はどちらも曲線であり、これらを曲線回帰といいます。 ただし、【資料7】と【資料11】とでは、その基本構造はまったく異なります。 【資料7】は2次関数の曲線型であるのに対し、【資料11】は複利関数の曲線形です。
【資料11】では、横軸の売上高が点Eから点Fへ減少(減収)するとき、利益は増加(増益)します。 これは、減収増益です。 もちろん、【資料11】を用いると、【資料2】の4つのパターンをすべて説明することができるし、【資料1】の記事も納得できる内容となります。 「いや、上記【資料1】の記事は、上場企業全体の集計であり、いわばマクロ経済である。マクロ経済では、複利計算構造はあり得ない」という反論がありそうです。 その反論はお門違いであることを、内閣府が公表している資料で検証してみます。
次の【資料12】は、内閣府のウェブサイトにある「国民経済計算(GDP統計)SNA産業連関表」でアップロードされているものを、私(高田直芳)が加工したものです。
【資料12】内閣府「SNA産業連関表」より
画像
【資料12】(1)の産出額を「ひぃ、ふぅ、みぃ」と数えていくと、「891兆6614億01百万円」であることがわかります。 【資料12】の1列目にある (1) から (16) までは、SNA産業連関表を構成する項目であり、2列目の (17) 以降は私(高田直芳)のほうで計算構造を示しました。
【資料12】にある「 (3) 支出=付加価値」を、国内総生産GDPと同義であると解釈します。 なぜなら、総務省統計局「国民経済計算」を参照すると、「国内総生産GDP)は、国(地域)内の生産活動による財貨・サービスの産出から原材料などの中間投入を控除した付加価値の総計である」と定義されているからです。 縦割り行政とはいえ、内閣府総務省とでその解釈が異なることはないでしょう。 したがって、【資料12】 (3) にある「支出=付加価値464兆2309億59百万円」を、この年の国内総生産GDPと同義であると解釈します。
次に、過去のSNA産業連関表をもとに、次の【資料13】で時系列展開を行ないました。
【資料13】SNA産業連関表の時系列展開
画像
【資料13】の最下行にある金額(産出額から間接税・補助金まで)が、【資料12】の金額と一致していることを確認します。 これにより、この年の国民所得 NI は、【資料13】の右端にある1330兆2668億66百万円と推計されます。 この推計方法は、総務省統計局「国民経済計算」に従っています。
国内総生産GDPから国民所得NIを計算する「初級マクロ経済学」を展開していて、面白い符合に気がつきます。 それは、次の対応関係があることです。
【資料14】

  1. 産出額
    →損益計算書の売上高

  2. 国内総生産GDP
    →付加価値(上掲【資料1】にあるものと同じ)

  3. 国民所得NI
    →損益計算書の利益(営業利益・経常利益・当期純利益

【資料14】の組み合わせは、暴論といわれそうです。 それは違います。 経済学を専門とする人々は、会計学を見下しているので、損益計算書や貸借対照表に興味はないし、会計学を専門とする人々は、マクロ経済に興味を持っていません。 互いに興味がなければ、互いを関連づけようという発想は生まれない。 門外漢は口を挟むな、という風潮もあるでしょう。 ただそれだけの話です。
総仕上げです。 次の【資料15】は、「産出額」と「中間投入・固定資本減耗・間接税・補助金」の関係を分布させたものです。
【資料15】会計物理学・タカダ式操業度分析(マクロ経済編)
画像
【資料15】の横軸は「売上高」に相当し、縦軸は「総コスト」に相当します。
【資料15】にある点の並びを、よぉく見比べてみてください。 これらの点は、【資料7】の2次関数ではなく、【資料11】の複利関数の形状をしていると読み解くことができます。 日本というマクロ経済も、複利計算構造を内蔵していることがわかります。
【資料15】は、なぜ、【資料11】の複利関数で読み解くべきなのでしょうか。 理由は簡単です。 【資料12】や【資料13】のSNA産業連関表にある「中間投入」は、産業から産業へと資源が再投入(複利運用)されていくからです。 それは、【資料10】で述べた「無限回数の複利計算構造」に他なりません。 アメリカの著名な経済学者といえども、マクロ経済を「日々複利の連鎖からなる計算構造」と見立て、複利関数でマクロ経済を描写する思考には至っていないことを申し述べておきます。 経済学者やエコノミストたちの思考は、1次関数であり2次関数であり3次関数どまりなのです。 以上の論旨は、次の【資料16】の受賞論文や、【資料17】の拙著に基づいています。
【資料16】
【資料17】
上記の受賞論文や拙著で展開している体系を「会計物理学」として創設し、私(高田直芳)のオリジナルとして展開しているのがこのブログです。
【資料18:関連ブログ】
会計物理学は、古典派会計学を凌駕し、ミクロ経済学だけでなく、マクロ経済学に変革を求めるものです。 その基本路線は、「文章だけの分析」に飽き足らず、具体的な数値をもとに図を描いて、実務に即した分析を行なうところにあります。

公認会計士高田直芳:偽ニュースやデマサイトへの防衛策

すべてを表示 企業分析&経済・時事 雑学 趣味 読書 鑑賞 活動履歴

偽ニュースやデマサイトへの防衛策

いつごろから「偽ニュース」や「デマサイト」という表現が使われるようになったのでしょう。 そんなことを詮索するよりも、いま、どのような情報に接するか、が大切。
私の場合、次の新聞3紙のコラムは、毎朝、欠かさず目を通すようにしています。
【資料1】
無数にあるメディアの記事で、「中庸」の論調を探すのは難しい。 下掲【資料2】にあるように、インターネットは「見えない洪水」であり、かいくぐって読んでいる時間もないし。
毎日新聞産経新聞はときどき、1つの事象について正反対の論調を掲載するので、それを参考にして「このあたりが、ニュートラルなのだろう」と解釈するようにしています。
ただし、次の関連ブログでも紹介したように、メディアというものは「批判はするが、それについて責任を負わない」点に注意する必要があります。
【関連ブログ】
また、新聞で「景気のいい」記事が掲載された日は、「今日の株価は下がるのだな」と考えたほうがいいでしょう。 景気が悪くなりそうだから、メディアはそれを阻止しようとする。 「時の政権」の意向を受けているかどうかまでは、忖度(そんたく)しないことにしています。
インターネットで専門情報を調べる場合は、税理士や弁護士などの肩書きを示している人のサイトのみを、私はチェックしています。 上掲の三紙に限定しているのも、メディアとしての矜持を信用できるから。 これが偽ニュースに騙されないための、第1の防衛策。 メディアや国家資格の「権威」にどれほどの価値があるかはわかりませんが、資格と署名がセットになっているサイトについて、私は偽ニュースと判断しません。
匿名サイトは、まったくといっていいほど見ることがありません。 偽ニュースに騙されないための、第2の(消極的な)防衛策の一つといえるでしょう。 結局、インターネットに溢れる情報については、自らの選択能力が重要だということ。 次の日本経済新聞「春秋」を引用しておきます。
【資料2】日本経済新聞「春秋」2017年1月30日

恐ろしいのは、大統領から一般のネット投稿者まで、あからさまな嘘を連発する人が増えて受け手が「嘘慣れ」し、事実が何かなどどうでもいいと感じ始めることかもしれない。

糸川さんらは見えない洪水への対抗策の一つに「高水準の教育に支えられた人々の情報選択能力」を挙げた。

話の真贋を見極める目が問われる。

公認会計士高田直芳:『夫以外』新津きよみ

すべてを表示 雑学 趣味 読書 鑑賞 活動履歴 財務会計 管理会計 税制 法務

『夫以外』
新津きよみ


全6話からなる短編集。 そのうちの、第1話「夢の中」のあらすじは、次の通り(アマゾンのサイトより)。

子供のいない40代後半の聖子は、一回り年上の夫を、急性心不全で亡くすという不幸に直面した。

同世代の友人・美智子に手伝ってもらった葬儀後、遺産を渡す目的で、亡夫の甥にあたる青年に会った聖子は、彼に心を奪われてしまった。

どろどろのストーリー展開になるのかと早とちりすると、最後のオチで足をすくわれます。 「あ、そっちへ転ぶのか」と。
全6話とも、品のいいミステリー小説です。 人間の深層心理を抉(えぐ)る話もあって、読みようによってはホラー小説かも。 第6話「紙上の真実」に登場する「姻族関係終了届」は、既婚者であれば知っておいて損のない法律知識。 「逆みくだり半」といったところ。 話が淡々と進むわりには、ところどころで、ドキリとさせられる短編集でした。