公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座

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公認会計士高田直芳:ROE(自己資本利益率)はなぜ急激に改善するのか【前編】


ROE(自己資本利益率)は、なぜ
急激に改善するのか【前編】


今回は【前編】と【後編】に分けています。
さて、2015年5月6日付の日本経済新聞では「株2万円、IT相場と差は―ROE重視、海外が評価」というタイトルの記事が掲載されていました。 この記事の中で、気になる一文がありました。
2年前に5%台だった日本企業のROEは今期10%に乗せそうで、急激に改善している。
2015年5月6日付の日本経済新聞

ここで問題です。 ROEは、なぜ「急激に改善している」のでしょうか。
「ニッポン企業の、特に製造業の業績が急激に改善しているから → ROEも急激に改善しているのだ」と考えているようでは、会計知がないのも甚だしい。 正解は、「ROEには、レバレッジ(梃子=てこ)効果が働くから」です。
自己資本利益率ROEは、分子に当期純利益、そして分母に自己資本を置いて計算するものです。 問題は、分子にある当期純利益です。 売上高が3%増加したら、当期純利益は5%くらいの増加になるのかな、と考えるのは大間違い。 正解は、売上高が3%増加したら、当期純利益は30%くらい軽々と増加します。 理由は、「売上高の増加率」と「当期純利益の増加率」との間では、次の式が成り立つからです。
(売上高の増加率)×(当期純利益の弾力係数)
=(当期純利益の増加率)
上記の式にある「弾力係数」については、次の拙著263ページで詳解しています。 2014年10月に大幅改訂を行ない、第2版としています。 弾力係数の正体は固定費にあり、これがROEにレバレッジ効果として作用します。 すなわち、固定費の大きい企業ほど弾力係数は大きくなり、レバレッジ効果も大きく働いて、ROEは急激に改善される、というカラクリです。 「東京証券取引所有価証券上場規程施行規則407条」を参照すると、上場企業が業績予想の修正を行なう基準として、次の事項が掲げられています。
  • 売上高が10%以上、増減すること
  • 当期純利益が30%以上、増減すること (制度上は「親会社株主に帰属する当期純利益」)
なぜ、「10%」と「30%」の違いがあるかというと、レバレッジ効果が考慮されているからです。 「当期純利益は、売上高よりも金額が小さいから30%に設定されているだろう」などと考えているようでは、会計知がないのも甚だしい、というわけです。
管理会計や経営分析の世界で絶対的通説として君臨するCVP分析(損益分岐点分析・限界利益分析・線形回帰分析)によれば、企業は「固定費型」と「変動費型」とに分類されます。 製造業は固定費型であり、流通業は変動費型である、と分類するものです。 この絶対的通説によれば、固定費型の製造業にはレバレッジ効果が強く働き、ROEは急激に改善される、と説明します。 また、変動費型の流通業ではレバレッジ効果の働きが弱いので、ROEはそれほど急激には改善されない、と説明します。 したがって、絶対的通説によれば、近年、ニッポン企業のROEが急激に改善されるのは、製造業が復活しているからだ、と説明することになります。
しかし、固定費型・変動費型の分類がナンセンスであることは、次の受賞論文で論証しています。
上記の受賞論文で証明しているように、セブン&アイHDやイオンなどの流通業も膨大な固定費を抱えており、製造業に負けず劣らず、レバレッジ効果は大きく働きます。 したがって、近年、ROEが急激に改善しているのは、製造業・流通業の別なく、膨大な固定費を抱えている企業にレバレッジ効果が強く働いているからなのです。 製造業に限った話ではありません。 そうしたカラクリを知らないでいると、今後、業績の悪化に伴い、急減するROEに慌てることになるのです。 以上、CVP分析(損益分岐点分析・限界利益分析・線型回帰分析)の、固定費型と変動費型にこだわっている人たちには、決して理解できない話でありました。 続きは【後編】にて。
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