公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座

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公認会計士高田直芳:シャープやソニーを迷走させる元凶は何か


シャープやソニーを迷走させる元凶は何か

2015年5月9日付の日本経済新聞で「シャープが減資、資本金1億円に」という記事を見たとき、別に驚きはしませんでした。 シャープについては、このブログですでに言及していた話です。
【関連ブログ】シャープ「甘やかしの構造」
今回は、シャープ、そしてソニーを迷走させた元凶について考えてみます。
結論を先に述べると、上場企業3千社で取り組まれている管理会計経営管理が、CVP分析(損益分岐点分析・限界利益分析・線形回帰分析)に基づいているのが、元凶です。
CVP分析は、戦線を拡大しようとするときの企業経営者の判断を誤らせるだけでなく、リストラという戦線縮小のときにも企業経営者の判断に「悪さ」をすることを、以下で論証します。 「観念的管理会計」や「空想的経営分析」によって、手前勝手な論証を行なうつもりはありません。 次の【資料1】に示す「新日本法規財団 第4回 奨励賞 受賞論文」に基づいて論じます。 【資料1】

まずは、現在の会計において、絶対的通説として君臨するCVP分析の説明から始めます。 これは、次の【資料2】の図表で説明されます。 下記で〔図表3〕とあるのは、私が執筆した『ダイヤモンド・オンライン 第142回 これも「ゴーン・マジック」なのか?3期連続で増収「減」益を繰り返す日産自動車の不可解』からの転載です。 【資料2】
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管理会計や経営分析の書籍を開くと、【資料2】の図表が必ず掲載されています。 ビジネススクールやビジネスセミナーでも、一つ覚えのように、【資料2】の仕組みを必ず説明します。 全国に数百万本も普及している財務会計システムにも、【資料2】が必須コンテンツとして搭載されています。
上場企業3千社が、CVP分析を利用している証拠は、決算短信1ページの最下段にある「業績予想」で確認することができます。 CVP分析を利用しなければ、営業利益、経常利益および当期純利益を予想することができないからです。 上記【資料2】の右端にある「CVP固定費」は、「CVP分析の固定費」の略称です。 CVP分析(損益分岐点分析・限界利益分析・線型回帰分析)は、理論面においても実務面においても、絶対的通説として君臨する理論です。 したがって、上場企業の経営幹部たちは、寄ってたかって【資料2】の図表と睨めっこしています。
ところが、これが元凶の始まり。 上場企業が3千社もありながら、これら3千社は、CVP分析から導かれる次の【資料3】に示す「恐ろしい命題」を、まったく理解していないのです。 その恐ろしさを理解せずに、上記【資料2】のCVP分析を用いているのですから、輪をかけた恐ろしさがあります。 【資料3】
【CVP分析から導かれる恐ろしい命題】
  1. 作った製品や仕入れた商品は、すべて定価で売れる。 →「量産効果は無限に働く」と表現することもできる。 →定価で売れるのだから、売上値引きは、理論上あってはならない企業活動である。
  2. 売上高が損益分岐点を超えると、無限の利益拡大が保証される。 →販売促進費や広告宣伝費を投入すればするほど、増収増益が達成される。 →売上高が増えるのに利益が減る、という「増収減益」は、あってはならない。
  3. 限界利益という経営指標は、1年365日、稼働率100%の状態であることを想定する。 →(限界利益)=(利益)+(固定費)
  4. 経営資源ボトルネックは存在しない。 →工場にある生産工程に、滞留在庫は存在しない。 →固定資産(機械装置や不動産など)の購入・売却は、即座に対応可能である。 →従業員の中途採用や強制解雇は、いつでも自由に行なえる。
上記【資料3】1.について──。 現実のビジネスでは、「売上値引き」は必ずあります。 そうした価格競争を想定した場合、【資料2】の総コスト直線は、逓増していかなければなりません。 経済学は「費用逓増」として、これを想定しています。 ところが、CVP分析の総コスト直線は「直線」を死守することから、費用逓増を想定していません。 液晶やスマホなどが、価格競争に巻き込まれることを想定しないのが、CVP分析です。 上場企業3千社は、CVP分析を絶対的通説として信じているために、現実の価格競争は「あってはならないこと」として、目をそらしているのです。
上記【資料3】2.について──。 上記【資料2】にある損益分岐点を超えると、利益(線分ED)は無限に拡大していきます。 これを信じた経営者は、工場をばんばん新設し、販社コストをどんどん投入することになります。 販社というのは、販売子会社のこと。 これについては、いまから1年前の2014年5月15日付の日本経済新聞に、ソニーについて、次の記事が掲載されていました。

すでに公表したパソコン撤退のほか、エレキ事業の販売会社やソニー本体の人員削減にも踏み切る。

特に足元で2900億円にのぼる販社コストはソニーにとって最も重い課題の一つ。

今回のリストラ効果で、16年3月期までに海外中心に販社コストを前期比2割減、ソニー本体のコストも同3割減らす計画だ。

──2014年5月15日付、日本経済新聞
販社コストを減らす必要があるということは、それ以前に、販社コストをがんがん投入してきた証拠です。 これはまさに、損益分岐点を超えれば、利益は無限に拡大する、というCVP分析の教えを妄信したからです。
上記【資料3】3.について──。 限界利益は、利益に固定費を加え合わせたものとして定義されます。 EBITDAも、限界利益に似た構造をしています。 問題は、限界利益の式の右辺第2項にある固定費です。 稼働率などお構いなしに、工場をどんどん新設し、販社コストをがんがん投入すると、限界利益はぐんぐん増加します。 その恐ろしさについては、次の【関連ブログ】で証明しています。
ダイヤモンド・オンライン『大不況に克つためのサバイバル経営戦略』
第128回「アベノミクスでハローキティの付加価値が急落?       現代の会計理論が容認する情報システムによる隠蔽工作」 第141回「損益分岐点や限界利益は、暗愚が用いる指標なり       瑕疵ある理論からは瑕疵ある実務解しか導かれない
ところが、上場企業3千社は、限界利益のこの恐ろしさを理解していません。 「限界利益と、貢献利益・EBITDAとは、異なる概念だ」と主張する向きもあります。 しかし、稼働率などお構いなしに、工場をどんどん新設し、販社コストをがんがん投入すれば、貢献利益やEBITDAがぐんぐん増加する点では変わりがありません。 限界利益と、貢献利益・EBITDAとの違いを強調するのは、問題の本質を理解していない証拠です。
もう一度、【資料2】にある総コスト直線に注目します。 CVP分析の総コスト直線は費用逓増を認めないのですから、CVP分析では残業手当やメンテナンス費用などの「余計なコスト」の発生を想定しません。 すなわち、ヒトやモノなどの経営資源に、ボトルネックは存在しないことを、CVP分析は想定しています。 ヒトに限って説明するならば、人手不足になれば労働市場からいくらでも人を雇うことができ、人員が余剰になれば数百人・数千人規模で解雇することができる、というわけです。 これがCVP分析から導かれる理論的な帰結です。 シャープやソニーでは現在、数百人・数千人規模の人員整理が行なわれています。 これはまさに、CVP分析が教えるとおりのリストラです。 攻めの経営のときにCVP分析を用いて失敗し、リストラするときもCVP分析を用いて苦悩する、というわけです。 どこまでいっても「CVP分析の呪縛」から逃れることができません。
「当社は、シャープやソニーの二の舞にはならないぞ」という考えは甘いです。 なぜなら、CVP分析は絶対的通説として君臨する理論であり、上場企業3千社はすべて、「CVP分析の呪縛」から逃れることができないからです。 これでは身も蓋もないので、私から示す解決策が、上記【資料1】の受賞論文で述べている「タカダ式操業度分析」です。 その論文に掲載している〔図表6〕を、次の【資料4】に示します。 【資料4】
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上記【資料2】のCVP分析の本質は、総コスト直線を1次関数で描くことから、単利計算構造であることは明らかです。 今日稼いだキャッシュを明日へ再投資(複利運用)することなく、金庫に死蔵する。 それが単利計算構造です。 しかし、企業活動をよくよく観察すると、「昨日稼いだキャッシュは今日へ再投資(複利運用)され、今日稼いだキャッシュは明日へ再投資(複利運用)されている」ことがわかります。 すなわち、企業のコスト構造は、複利関数で描くべきであり、その発想に基づいているのが、上記【資料4】の総コスト曲線です。 この曲線は、複利関数(正確には「自然対数の底e」を用いた指数関数)で描かれています。
上記【資料1】や【資料4】の「タカダ式操業度分析」を平易に解説した書籍は次の通り。 タカダ式操業度分析の著作権は、私(高田直芳)が所有しています。 日本だけでなく、欧米の書籍や学術論文を検索してみても、企業のコスト構造を複利関数で解き明かしたものは、1冊も1本もありません。
私が開発したシステム『公認会計士高田直芳の原価計算&管理会計システム』を利用している企業以外に、タカダ式操業度分析の二次使用は一切認めておりません。 略称を『高田原計』といい、vector.co.jpで、フリーソフトを公開しています。 2015年5月11日付、日本経済新聞では、著作権に詳しい弁護士の発言が掲載されていました。
例えば企業内や研究の現場でする資料のコピーも厳密には著作権侵害とされる。
──2015年5月11日付、日本経済新聞
福井健策弁護士の話を引用
TPP(環太平洋経済連携協定)では、現在の著作権が、50年から75年に延長される予定。 『高田原計』のアドバイスを受けない企業は、あと100年間、「CVP分析の呪縛」にもがき苦しみ、迷走を続けることになります。 もし、社内で、米マイクロソフト社の表計算ソフトExcelなどを用いて、タカダ式操業度分析を描いた場合、【資料4】の画面を開いた瞬間に、著作権侵害で「一発アウト!」になるので、十分に注意してください。 まさか上場企業が、コンプライアンスを疎かにすることはないでしょう。
なお、東京、名古屋、大阪で開催するセミナーでは、単利計算構造のCVP分析で迷走する上場企業の苦悩ぶりを、解き明かす予定でおります。
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