公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座










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公認会計士高田直芳:不適切な会計処理【東芝の場合】


不適切な会計処理
東芝の場合】


「粉飾・逆粉飾」という表現ではなく、「不適切な会計処理」という表現が用いられるようになったのは、2005年あたりから。
日本公認会計士協会が2005年3月に、「情報サービス産業における監査上の諸問題について」を公表しています。
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当時は、いわゆる「ITバブル」が弾けて、情報サービス産業で循環取引が横行しました。 循環取引とは、A社→B社→C社へと転売していき、再びA社に戻る取引形態のこと。
A社とC社だけの相対取引では、売掛金と買掛金の両建計上となり、すぐにバレてしまいます。 B社を間に絡ませるのが、循環取引のポイント。
有形の製品や商品ではなく、無形のソフトウェアを取引対象とするのが、循環取引のもう一つのポイントです。 伝票1枚で売買取引を偽装できるからです。
これに手形を絡ませて金融機関で割り引いてもらうと、粉飾決算の古典的名作「融通手形」になります。
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このところ、メディアを騒がせている「不適切な会計処理」は、工事進行基準を利用したものだとされています。 他にも問題があるようですが、以下では工事進行基準の「こわさ」を説明しておきます。 例えば、顧客と建設業者との間で締結した契約金額が、10億円であったとします。 これは契約書を取り交わしたのですから、確定金額です。 この工事案件について、建設業者は、その工事原価の総額を8億円と見積もったとします。 建設業者にとって、差し引き2億円の利益が生じます。
第1期の決算をしめたときに、工事原価の実際発生額が4億円であったとします。 工事原価の見積もり総額は8億円でしたから、工事の進捗度は50%になります。 この50%を、契約金額の10億円に乗ずると、第1期の売上高は5億円になります。 したがって、第1期の損益計算書は、【資料1】の通りとなります。 【資料1】  売上高    5億円        工事原価   4億円         利益      1億円
ところが、例えば円安によって資材が高騰し、工事原価の実際発生額が4億円におさまらず、実は6億円であったとしましょう。 正直な損益計算書を作成するならば、【資料2】になります。 【資料2】  売上高    5億円        工事原価   6億円         利益    ▲1億円 上記【資料2】を見た役職員は慌てます。 なんとか、【資料1】のようにはならないか、というインセンティブが働きます。 工事に係る契約金額は確定しているので、操作することはできません。 操作できるのは、工事原価のほうになります。 上記【資料1】の4億円と、上記【資料2】の6億円の差額である2億円を、何とかできないかと。 古典的な手法としては、この2億円を、建物の柱や壁に塗り込んだり、立場の弱い子会社や下請会社に貸付金などでねじ込んだり、債券化して「簿外」とし、海外へ「飛ばし」たりします。 いまはデリバティブ取引が高度化しているので、第三者委員会の調査報告書を俟たねばなりません。
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問題は、工事進行基準と工事完成基準のどちらがいいか、という会計処理の選択ではありません。 上場企業の間で、不適切な会計処理が行なわれている「確率」はどれくらいあるのか、という点にあります。 今回の件で、上場企業のほとんどで「不適切な会計処理」が横行している確率が高まった、といえるかもしれません。 大半が、業績予想の修正の範囲内で収まっているだけなのかも。 不適切な会計処理が表面化したときに、当該企業はどのように対処するのか。 かつて経団連会長を輩出した企業の「鼎の軽重」が問われます。 現場がトカゲのシッポ切りにならぬよう、今回の難局は何としても乗り切ってほしいというのが、部外者からのエールです。
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