公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座

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公認会計士高田直芳:シャープの主力銀行は何を見ていたのか


シャープの主力銀行は何を見ていたのか

2015年5月19日付の日本経済新聞では「危機のシャープ1」というタイトルで示されるように、シャープに関する連載が始まりました。
私が唖然としたのは、次の【資料1】の記事です。
【資料1】

シャープが15年3月期に2期ぶりに赤字に転落することが明らかになったのは14年12月27日だ。

毎週土曜日に開かれる恒例の経営会議に財務部門から報告された。

2人の橋本には「青天のへきれき」。

社長の高橋ですら「本当に赤字なのか」と肩を落としていた。

2015年5月19日付、日本経済新聞
次の【資料2】の記事が続きます。
【資料2】

「シャープには表と裏の数字がある」。

強力な経営トップが長く君臨し、責任追及を恐れる事業部が悪い情報をあげない社風を揶揄(やゆ)した言葉だ。

2015年5月19日付、日本経済新聞
「おいおい、銀行さんよ、それはないだろう」というのが、私の感想です。 上記で「唖然とした」と記述したのは、2人の銀行員と一緒に「青天の霹靂」を味わったからではありません。 2014年12月27日の前日まで、この2人の銀行員は何をやっていたの? という意味での、唖然です。
いま(2015年3月期)から遡ること、1年前の2014年3月期決算について、私は次の「ダイヤモンド・オンライン(DOL)」で、シャープの業績には「下駄が履かされている」ことを指摘しました。
【資料3】 ダイヤモンド・オンライン 第137回    3期連続無配のシャープは復活したといえるのか?    「在庫の積み増し」だけで増益を画策できる会計制度の罠
DOLで上記のコラムを公開したのは、2014年7月18日。 上記【資料1】にある「14年12月27日」よりも、5か月以上も前の話です。 しかも私は、有価証券報告書という「表の数字」しか知りません。 それにもかかわらず、上記【資料3】のコラムでは、私は、シャープの棚卸資産に注目して、次の事項を指摘しました。
  1. 在庫の積み上げは、それを単に積み上げるだけで売上総利益や営業利益などの「会計上の利益」を増やす効果がある。 → そのカラクリを、シャープの2014年3月期に係る決算データで分析しました。
  2. 上場企業をはじめとして、すべての企業で採用されている原価計算制度は「全部原価」を基本としする。 → DOLのコラムでは、管理会計の世界に引き戻して、私個人の力で推算しました。 → 会社から「裏の情報」に関する情報を提供してもらわなくとも、自らの分析力によって「裏の数字」を炙り出すことは可能なのです。
  3. 2014年3月期の計上された当期純利益116億円は、棚卸資産に含まれる減価償却費136億円だけ「下駄を履かされて」おり、2014年3月期は実質的に当期純損失▲20億円(=116億円-136億円)であった。
  4. 在庫の圧縮を図ると、下駄を脱ぐことになるので、業績が急速に悪化することを指摘した。 → 2014年3月期の「表の情報(有価証券報告書)」で、それを見抜けなかった主力銀行は、何をしていたのでしょうか。
シャープや主力銀行にも、気の毒な面はあります。 なぜなら、現代の管理会計原価計算・経営分析の理論には、致命的な瑕疵(かし=キズ)があるにもかかわらず、それを会計学者・公認会計士経営コンサルタントたちが誰一人として理解していないからです。
現代の管理会計や経営分析では、CVP分析(損益分岐点分析・限界利益分析)が基礎理論として君臨しています。 そのCVP分析に基づいて、上記【資料3】のコラムで私が作成した図表を、次の【資料4】に転載します。 【資料4】 上記【資料4】の縦軸上にある「CVP固定費4637億円」は、線形回帰分析を利用した「最小自乗法による固変分解」(以下、最小自乗法)に基づいています。 上場企業の有価証券報告書では、そのほとんどで「勘定科目法による固変分解」(以下、勘定科目法)を適用できないからです。
上記【資料3】のコラムでは、タカダ式操業度分析の解析結果も掲載しています。 タカダ式操業度分析とは、次の【資料5】に示す受賞の栄誉を受けた論文で述べているものです。
【資料5】
タカダ式操業度分析を初めて世に問うた頃(2008年当時)は、あまりに独創的すぎたために、多くの人から嗤(わら)われました。 それにもめげず、タカダ式操業度分析を、シャープの2014年3月期に適用したのが、次の【資料6】です。 【資料6】 上記【資料4】と【資料6】の決定的な違いは何か。 それは、【資料4】のCVP分析は1次関数の単利計算構造に基づいているのに対し、【資料6】のタカダ式操業度分析は複利計算構造に基づいている点にあります。 シャープのような製造業の原価台帳を観察していると、前工程に投入されたコストは後工程へ次々と再投入(=複利運用)されていることがわかります。 工場内に無数にある工程に、材料費・労務費・経費を次々と投入していくと、これらのコストは工程間で無限回数の振り替え計算を行なうことになります。 それを数学的に表わすと、上記【資料6】で描かれるような複利曲線(正確には「自然対数の底e」を用いた指数曲線)になる、というわけです。
上記【資料6】では、タカダ式操業度分析の固有の用語として「基準固定費」が表示されています。 その額、1兆2144億円。 上記【資料4】の「CVP固定費4637億円」の、2.62倍に達します。 次の関連ブログでは、シャープの社長が「固定費削減」に取り組むことを紹介しました。 シャープの社長が想定しているのは、上記【資料4】のCVP分析ですから、自社の固定費を過小評価している可能性があります。
「勘定科目法を用いれば、上記【資料6】の基準固定費を上回るのではないか?」という疑問ほど、愚かなものはありません。 推測で述べるのではなく、自ら実際に検証することです。 実証を怠り、空想で理論を構築しようとするから、CVP分析という「瑕疵ある理論」が跋扈するのです。 私は、次のシステムをご利用いただいている企業の使用許諾を得て、月次決算データに勘定科目法を適用してみました。
「勘定科目法の固定費」は、上記【資料6】の基準固定費を超えることはありませんでした。 なぜなら、勘定科目法といえども、それは1次関数の単利計算構造だからです。 CVP分析が単利計算構造に基づくものである限り、最小自乗法であろうと、勘定科目法であろうと、複利計算構造のタカダ式操業度分析を超えることはないようです。
主力銀行の、みずほ銀行三菱東京UFJ銀行も、上記【資料4】のCVP分析(損益分岐点分析・限界利益分析)を利用しているはず。 なぜなら、上記【資料5】や【資料6】のタカダ式操業度分析は、著作権法上、私しか用いることができないからです。 タカダ式操業度分析を初めて世に問うたのは、次の書籍です。 上記の書籍を出版した2008年よりも前に、企業のコスト構造を複利計算構造で解き明かした理論や学説は存在しません。 日本だけでなく、欧米の会計学や経済学などの書籍や論文にも存在しません。 単利計算構造のCVP分析ではなく、複利計算構造のタカダ式操業度分析を用いて融資先企業を分析した場合、たとえメガバンクといえども、著作権侵害で「一発退場!」になるので気をつけましょう。
私が顧問先の役員会に出席するときは、企業側から提出される分析資料を鵜呑みにすることはありません タカダ式操業度分析や、タカダ式キャッシュフロー方程式を駆使した、オリジナルの分析資料で、企業に問いかけます。 それが、公認会計士としての矜持です。 単利計算構造の【資料4】を見ながら、シャープ、みずほ銀行三菱東京UFJ銀行は、毎週土曜日に集まって、何を議論してきたのでしょう。 プロとしての矜持がなく、固定費や損益分岐点といった「伝統的な管理会計」に頼っているようでは、あらゆる企業で、高い確率で「経営危機」が起きることを憂います。
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