公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座










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公認会計士高田直芳:あなたがたには原価計算や原価管理などわかるまいという暴言


「あなたがたには原価計算や原価管理など
わかるまい」という暴言

『高田直芳の実践会計講座 原価計算』補足説明

東芝の「不適切な会計処理」問題に関して、日本経済新聞では次の記事が掲載されていました。
本社の経理部門は受注時の総原価の見積もりには関与するが、工事が始まってからの見直しはほぼ事業部門の裁量に任されていたという。
日本経済新聞2015年5月21日
証券取引等監視委員会に届いた内部通報がきっかけで発覚した不適切会計を発表したのは4月3日。
日本経済新聞2015年5月23日
東芝経理部門や監査部門に対して、「何をやっていたんだ!」と批判するのは簡単なこと。
東芝の肩を持つ義理はありませんし、同社を代弁するわけでもありませんが、実務がどのようになっているのかを理解しないで、新聞記事だけを読んで批判するのは避けたいものです。
なお、「内部通報」の可能性については、次のブログ記事で、すでに言及していたところです。
どんなに細心の注意を払って粉飾決算に取り組んでも、バレるときはバレるのです。 そのキッカケは、主流派と反主流派の対立から生まれる内部告発です。
【関連ブログ】東芝問題は「対岸の火事」なのか
(2015年5月21日)
東芝でどのようなコスト管理が行なわれているのか、私は知りません。 ただ、組織が大きくなればなるほど、コスト管理の全体を見渡すことが困難になる、というジレンマが、現場にあることは知っています。 組織が大きくなると、「部品担当」「外注担当」「間接費担当」「資産管理担当」というように、人に応じてコスト管理が細分化されるようになります。 「間接費」の担当者からすれば、「部品費」や「外注費」「資産管理」がどうなっているかは、ブラックボックスです。 担当以外のものを気にしていたら、自分の仕事が終わらないですし。
個々の担当者からの資料を集めて、全体を検証するのは、事業部門の長の役割です。 しかし、取引金額が数十億円・数百億円にもなると、事業部門の長が、金額を子細に検証するのは不可能になります。 部品費も外注費も間接経費も、事業部門の長の段階になると、そのすべてがブラックボックスと化します。 ましてや、事業部門から経理部門や監査部門へ「コスト管理に関する資料」が渡されたとしても、経理部門や監査部門が、ブラックボックスに納められた金額を、子細に解き明かすことなど不可能です。
経理部門や監査部門の、その道のプロともいえる人たちが、事業部門から渡された「コスト管理に関する資料」を、なぜ、即座に解き明かせないのか、その原因がわかりますか。 次の例を考えてみます。 100万円を、年利1%で10年間、複利運用で金融機関に預けたとしましょう。 10年後に、預金者が受け取る元利合計額は「1,104,622円」になります。 さて、ここで問題です。 預金者が受け取る元利合計額「1,104,622円」が正しいかどうかを、1次関数( ax )で、制限時間1分以内で検算してみてください。
時間制限がなければ解けないこともない問題ですが、制限時間が1分間では不可能です。 なぜなら、1次関数は「単利計算」の式であり、これで「複利運用」された利息を計算すること自体がナンセンスだからです。
このナンセンスな作業を行なえと、平然と唱える人たちがいます。 それが金融庁企業会計審議会が定める『原価計算基準』であり、原価計算・原価管理というタイトルが付いた書籍の執筆者や、ビジネススクールなどの講師たちです。 そこにある理論(予定配賦や公式法変動予算など)はすべて、1次関数の単利計算構造に基づいています。 IFRS基準(国際会計基準)も、その基本思想は、1次関数の単利計算構造です。 難解な英文のどこを探しても、企業のコスト構造を、複利関数(正確には「自然対数の底e」を用いた指数関数)で理解しよう、という条項は存在しません。
もちろん、企業のコスト構造の本質が、単利計算構造であるならば、それを1次関数で解き明かすことはわけもないでしょう。 ところが、現実の企業活動では、次の事実を観察することができます。
  • 製造業に勤務する人であれば、工場内の各工程を観察してみてください。

    • 工場内に無数に存在する工程に、材料費・労務費・経費を次々と投入していくと、無限回数の振り替え計算が行なわれていることがわかります。

    • 材料・仕掛品・製品などが入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 流通業に勤務する人であれば、店舗に置かれた商品を観察してみてください。

    • 日々仕入れた商品は、棚に補充したそばから、消費者へ次々と販売されていきます。

    • 膨大な商品が入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 財務や経理に携われる人であれば、手元にある帳簿を観察してみてください。

    • 上場企業のような大規模組織になると、帳簿に記帳される仕訳の数は、1日で数百行や数千行にものぼります。

    • 振り替えの仕訳を含めれば、年間では数億行や数十億行の仕訳の数になります。

    • 入金と出金を無限に繰り返すその様は、無限連鎖の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 株式市場や仮想通貨市場を観察してみてください。

    • 人気が沸騰すればするほど、限りなくゼロに近い時間軸の中で、膨大な数の取引が行なわれます。

    • 買いが買いを呼び、売りが売りを呼ぶその経済現象は、無限連鎖の複利計算を行なっていることと同じです。
  • マクロ経済の産業連関表を観察してみてください。

    • ある産業で生産された中間財は次の産業へ投入され、そこで生産された中間財は次の産業へと投入されていきます。

    • その流れは、マクロ経済レベルで、無限連鎖の複利計算を行なっていくことと同じです。
つまり、東芝に限らず、企業のコスト構造やミクロ・マクロの経済構造は、「無限回数の複利計算構造を内蔵している」ことがわかります。 売上高が数兆円にもなる企業の場合で、複利計算の金額単位を無限小(現実には1円単位)にまで追い求めていくと、数兆回の複利計算を行なうことになります。 5回や10回程度の複利計算を、1次関数で解き明かすのとは事情が異なります。 数兆回にものぼる複利計算構造を、1次関数で解き明かすことは不可能なのです。
ところが、会計基準や書籍は、複利計算が数兆回も行なわれている企業のコスト構造を、1次関数で計算し管理することを平然と説いているのです。 東芝に限らず、トヨタ自動車日立製作所パナソニックなどで行なわれている原価計算制度もすべて、会計基準や書籍に倣い、1次関数の単利計算構造で行なわれています。 標準原価、予定原価、基準原価、活動基準原価など、その表現をどのように取り繕うとも、所詮は「言葉の遊び」にすぎず、上場企業3千社で行なわれているコスト計算やコスト管理は、1次関数を用いた単利計算で行なわれているのです。 その事実に驚いてください。
「そんな愚かな話があってたまるか」ということで、東証一部上場企業の看板を掲げてふんぞり返る人たちの、化けの皮を剥がすために執筆したのが、次の受賞論文です。
また、上記の受賞論文を詳述したのが、次の拙著です。 上記の受賞論文や拙著に記述した基本思想は、企業のコスト構造が複利計算構造であることを認識し、それを複利関数(正確には「自然対数の底e」を用いた指数関数)で解き明かしていることです。
ところが、現場ではどのようなことが行なわれているか。 企業のコスト構造は複利計算構造を内蔵しているにもかかわらず、事業部門ではそれを単利計算構造(1次関数)で、コスト管理に関する資料を作成しています。 先ほどの預金の例でいえば、事業部門が作成する資料は、元利合計額「1,104,622円」を、1次関数で説明しようとしているのです。 これが第一の躓(つまず)き。 事業部門から資料を渡された経理部門では、これまた1次関数で検算します。 これが第二の躓き。 さらに外部監査を請け負う監査法人も、1次関数で監査を行ないます。 これが第三の躓き。 三度も躓いては、どれほどの人と時間を投入しても、原価計算や原価管理が定時で終わるわけがありません。 現場のそうした苦労を知らずに、単利計算構造の理論を観念的に唱える人たちが、学界や実務界を横行闊歩しています。 「机上の空論を振り回すあなたがたには、事業部門や経理部門が抱えるジレンマや苦労がわかるまい」といったところです。
複利計算構造を内蔵した企業のコスト構造を、単利計算構造で表わそうとする限り、コスト管理に関する資料はますますブラックボックスと化し、「不適切な会計処理」を見抜くことが困難になります。 現代の管理会計論や原価計算論の根本にある「単利計算構造の思想」を、駆逐していかないと。 上記の受賞論文などで述べている「タカダ式操業度分析」や「タカダ式変動予算」の実証に協力してくださる企業を、1社でも多く探し求める日々であります。
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