公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座

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公認会計士高田直芳:適切な会計処理とは何か


「適切な会計処理」とは何か

今回の東芝問題で、一躍脚光を浴びることになった「不適切な会計処理」。
そもそも、適切や不適切というのは、どういう意味なのでしょうか。 かつて、クリントン米元大統領のときに、「不適切な関係」という表現が、しばしば用いられました。 それとは、まったく異なります。
不適切というのは、違法ではありません。 会社法に反するわけではないですし、金融商品取引法に反するわけでもありません。
「不適切な会計処理」であっても、業務上横領などがない限り、今回の問題で逮捕者が出ることはないはずです。
会計処理が適切か、適切でないかは、「フェアであるか、フェアでないか」と言い換えることができます。 例えば、A事業部では、厳密なコスト管理を行なった結果、10億円の利益を計上することになったとします。 B事業部では、コスト管理が杜撰であったために、▲5億円の損失を計上することになったとします。 このとき、B事業部が、15億円分のコストを貸借対照表へ振り替えた場合、▲5億円の損失から一転、+10億円の利益を計上することになります。 税務当局の立場からすれば、当期の納税額が増えるので、不満はありません。 A事業部もB事業部も、結果的に10億円の利益を計上することになったのですから、両事業部とも同等の業績評価を受けることになります。 しかし、A事業部の立場からすれば、納得がいきません。 B事業部の会計処理は「フェアではない」ことになります。 フェアでなければ、それは「不適切な会計処理だ」となります。 他者との比較において「フェアか、フェアでないか」という視点が重要になります。
B事業部としては、「貸借対照表へ振り替えた15億円分については、来期で頑張るから、当期は見逃してくれよ」という言い分を通したいところ。 しかし、業績評価というのは、当期の努力(コスト)と成果(売上高)とをセットで行なうべきもの。 その一部を来期に繰り延べるのは、厳密なコスト管理を励行しているA事業部の立場からすれば、やはり「フェアではない」となります。 また、来期、B事業部の長を任された者にとって、その前の期までB事業部の長を務めていた者のやった会計処理は、「フェアではない」となります。 視野を広げて、株主の立場から見ても、B事業部のやっていることは「フェアではない」となります。
今回、東芝で問題となった工事進行基準という会計処理には、当期の努力(コスト)の一部を、来期へ繰り延べる仕組みがビルトインされています。 それを悪用することは、コスト管理を厳密に行なっている他の事業部からすれば、業績評価の点で「フェアではない」となるのです。 もちろん、ビジネスは結果がすべてですから、コストの一部を来期へ繰り延べようとも、工事完成後のトータルの結果が黒字で着地すれば、それでいいじゃないか、という見方もあります。 そうであるならば、工事進行基準ではなく、最初から工事完成基準を採用すべきです。 案件によって、工事進行基準を採用したり、工事完成基準を採用したりするのも、「フェアではない」となります。
二宮尊徳の言葉に「道徳なき経済は、犯罪なり」というのがあります。 道徳を「フェア」に置き換え、経済を「会計」に置き換えると、「フェアでない会計は、犯罪なり」となります。 冒頭で述べたように、フェアでない会計処理が犯罪(刑事罰)に問われることはないでしょうが、道義的な責任は問われることになります。 フェアプレーの精神は何も、スポーツの分野に限った話ではないのです。
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