公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座










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公認会計士高田直芳:キャッシュフローの話【その5】タカダ式フリーキャッシュフロー

以下は、「キャッシュフローの話【その4】最適キャッシュ残高とデフォルト残高」の続編です。
さて、〔図表13〕から〔図表15〕までにおいて、青色で描いた最適キャッシュ残高を用いると、次の「オプション・キャッシュフロー」(タカダ式フリーキャッシュフロー)を求めることができます。
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〔図表16〕は、「実際キャッシュ残高」と「最適キャッシュ残高」との差額が、使途自由なキャッシュとなる、という概念に基づいた式です。
管理会計や経営分析の世界における「通説的な指標」として、フリーキャッシュフローがあります。 これは〔図表17〕で表わすように「営業活動キャッシュフロー」と「投資活動キャッシュフロー」を足し合わせたものです。
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〔図表17〕には、創造や革新のカケラがなくて、好きになれません。
〔図表17〕のフリーキャッシュフローを用いている人を見かけると、「実務家としての矜持はないのか」と思ってしまいます。
〔図表16〕のオプション・キャッシュフローを赤色で描き、〔図表17〕のフリーキャッシュフローを黒色で描いたものが、〔図表18〕と〔図表19〕です。
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〔図表18〕と〔図表19〕から浮かび上がる特徴を、いくつか指摘します。 1つめは、〔図表18〕のエディオンでは、フリーキャッシュフローが大幅に落ち込んでいます。 これは、棚卸資産が200億円近く増加したことが原因です。 〔図表8〕の棚卸資産回転期間の上昇と連動しています。 ところが、〔図表14〕の実際キャッシュ残高には影響を及ぼしていません。 同時期の財務活動キャッシュフローを参照すると、ほぼ同額の借入金200億円によって、在庫運転資金200億円が賄われていることが判明します。
2つめは、〔図表19〕のケーズでも、フリーキャッシュフローが大きく落ち込んでいることです。 これは納税資金80億円の影響です。 ところが、〔図表15〕の実際キャッシュ残高には影響を及ぼしていません。 同時期の財務活動キャッシュフローを参照すると、ほぼ同額の借入金80億円によって納税資金80億円が賄われていることが判明します。 経営分析の世界において「通説的な指標」として用いられるフリーキャッシュフローは、水面下にある財務活動キャッシュフローによって容易に操作が可能であり、指標としての意義をなさないことがわかります。
3つめは、〔図表18〕と〔図表19〕の左端で、黒色のフリーキャッシュフローが大きく盛り上がっていることです。 東日本大震災のときに、これほど大きな「使途自由な資金」を抱えていたとは到底考えられません。
以上、3つの点において、黒色の実線で描かれたフリーキャッシュフローは、「現場の感覚」と懸け離れた動きをします。 フリーキャッシュフローを「使途自由な資金」と称するなど、指標としての名折れもいいところ。 にもかかわらず、フリーキャッシュフローを後生大事にする人たちが、あちこちにいます。 「現場の感覚」とは異なる「机上の感覚」を大切にする人たちなのでしょう。
4つめは、赤色のオプション・キャッシュフロー東日本大震災後、徐々に回復を見せてきましたが、その後は2社とも右下がりになっていることです。 資金繰りが、かなりタイトになっています。 これが、消費増税後の「現場の感覚」というべきものでしょう。
近年、気になるのは、上場企業の一部で、連結キャッシュフロー計算書の開示が省略されていること。 会計制度上は確かに、開示の省略が認められています(四半期連結財務諸表規則5条の2第2項)。 それは、わかっているつもり。 しかし、連結キャッシュフロー計算書など、間接法で作成すれば、1人の力で、半日程度でできるシロモノ。 連結貸借対照表連結損益計算書はできあがっても、連結キャッシュフロー計算書が決算短信の掲載に間に合わないようでは、上場企業として「鼎の軽重」を問いたい。
連結キャッシュフロー計算書の開示を省略する企業が多いのは、分析する側にも責任があります。 連結貸借対照表連結損益計算書に対する分析は精緻なものなのに、連結キャッシュフロー計算書に対する分析がフリーキャッシュフローだけでは、上場企業の側も作る気が失せるというもの。 〔図表17〕で示したように、フリーキャッシュフローを「営業」と「投資」の単純合算で求めようとするのも、安易な姿勢の表われ。 キャッシュフローは、みんな、避けて通ろうとしているのが、よくわかります。
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