公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座










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公認会計士高田直芳:原価計算や管理会計のシステムは何故、複雑怪奇なのか

公認会計士という職業柄、様々なシステムに触れる機会があります。 そのたびに抱く疑問があります。
【資料1】
  • 巨額の資金を投じて、どうして、こんなに複雑怪奇なシステムを導入したの?
  • 高価なシステムを使わずに、どうして表計算ソフト Excel なんかを使っているの?
上場企業などでは内部統制上、米マイクロソフト社製の表計算ソフト Excel の使用が原則として禁止されています。 「不適切な会計処理」の温床になりかねないからです。
【資料2:関連ブログ】
ところが、「隠れ Excel ユーザー」はなくなりません。 なぜでしょう。
まず、日本経済新聞の記事の一部を引用します。
【資料3】日本経済新聞2014年10月30日

国立大病院の経営状況を正確に把握する目的で開発、導入された管理会計システム「HOMAS」の運用状況を会計検査院が調べた結果、神戸大や高知大など24の国立大病院で十分に利用されていないことが、30日までに分かった。

24病院が導入に投じた費用は少なくとも計約1億8千万円に上(る)。(途中略)

HOMASは、診療科や検査部門ごとの原価計算や損益の要因分析などを可能にしたシステム。

「国立大学付属病院長会議」が約1億3千万円かけて2005年度までに開発し41大学が導入した。

このうち信州大や神戸大など11病院は導入から約10年がたっても利用開始に至らず、東北大や愛媛大、高知大など13病院は利用した時期はあったものの、13年度末までに停止していた。

システム開発会社としては、「利用する側(国立大病院)の体制が悪いのであって、システムが悪いのではない」ということなのでしょう。 しかし、「利用されないシステム」は、システム自体にも問題があることを認識する必要があります。
そこで、製造業の多くで利用されている生産管理システムを見てみましょう。 これは各社の個性が出るので、複雑怪奇なものとなるのは、やむを得ません。 ところが、それがアダとなります。 1つめのアダは、開発担当者が異動してしまうと、それまで利用していたシステムのほとんどが、利用されなくなってしまう点を指摘できます。 組織内の不正を防ぐには、異動は不可欠です。 巨額投資して導入した生産管理システムであろうとも、米マイクロソフト社製の Access で開発したシステムであろうとも、新任の者にとって、前任の者が利用していたシステムはブラックボックスです。 そこで、新任の者は、表計算ソフトの Excel で、手っ取り早く作り直すことになります。 そうしなければ、業務がまわらないからです。
2つめのアダは、システムが大規模になればなるほど、現場で日々取り組まれているカイゼン活動に、即応できなくなる点を指摘できます。 某システムを扱っているベンダー会社では、ユーザーから科目の追加設定を依頼された場合、1件ごとに数千円の手数料を徴収するのだとか。 これでは、コスト削減に苦労しているユーザー側が、システムを敬遠するに決まっています。 そこで、現場では、表計算ソフト Excel を使うことになります。 もちろん、現場で日々取り組まれているカイゼン活動に即応しようとして、日々改良に努めているシステムもあります。 しかし、そうしたものは、地方の病院や老舗旅館でよく見かける姿になります。 つまり、建て増しに、建て増しをしていくため、廊下は入り組んだ迷路となります。 迷っていては、仕事が定時で終わりません。 結局、先ほど述べた「1つめのアダ」に戻ることになります。
企業の役員は、現場がどのような苦労をしているのかを知りません。 まさか巨額投資したシステムが、まったく利用されず、役員会に提出される資料が表計算ソフト Excel によって作られているとは、夢にも思っていないでしょう。 役員の方々が、その事実(巨額投資したシステムがまったく利用されず、役員会に提出される資料が表計算ソフト Excel によって作られている事実)を知るのは、「不適切な会計処理」が発覚してから、というケースが多いようです。
以上の問題点を解決していく強力な方法としては、システムを「シンプルな構造」とすることです。 例えば、原価計算管理会計のシステムをどれほど複雑なものにしたところで、「真実の原価」に近づく保証はありません。 これは、公認会計士としての、私の経験です。 それにもかかわらず、原価計算システムや管理会計システムは、なぜ、複雑怪奇なものへと突き進むのでしょうか。 理由の1つめは、外部のシステム開発会社が、独自性を打ち出そうとするからです。 原価計算や原価管理のシステムを構築するにあたっては、企業会計審議会『原価計算基準』に準拠している必要があります。 『原価計算基準』に準拠せずに独特の考えかたでシステムを開発している例を見かけますが、それは独自性をはき違えたものであり、粉飾決算への扉を開けるようなものです。 各社のシステムが『原価計算基準』に準拠しようとすると、当然、没個性となりますから、ボタンの配置やアイコンのデザインで独自性を打ち出そうとします。 ちまちまとした画面構成に拘る余り、どこがどうなっているのか、わからない仕組みになるのです。
理由の2つめは、企業会計審議会『原価計算基準』に、「理論上の瑕疵」がある点を指摘できます。 それを指摘したのが、次の受賞論文です。
【資料4】
【資料5:関連ブログ】
学術論文で「賞」の一つも獲らずに、管理会計の理論を語ったり、原価計算のシステムを開発したりすのは、「恥ずかしいことだ」という思いがあったので、上記の賞を得たことは大きな励みになりました。
上記の受賞論文の基になるのが、次の書籍です。 上記の受賞論文や書籍は、現場の人たちと一緒に汗を流して、企業実務を徹底的に検証した結果、編みだしたものです。 現実の企業活動は、次に示す現象になっていることを観察することができます。
【資料6】
  • 製造業に勤務する人であれば、工場内の各工程を観察してみてください。

    • 工場内に無数に存在する工程に、材料費・労務費・経費を次々と投入していくと、無限回数の振り替え計算が行なわれていることがわかります。

    • 材料・仕掛品・製品などが入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 流通業に勤務する人であれば、店舗に置かれた商品を観察してみてください。

    • 日々仕入れた商品は、棚に補充したそばから、消費者へ次々と販売されていきます。

    • 膨大な商品が入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 財務や経理に携われる人であれば、手元にある帳簿を観察してみてください。

    • 上場企業のような大規模組織になると、帳簿に記帳される仕訳の数は、1日で数百行や数千行にものぼります。

    • 振り替えの仕訳を含めれば、年間では数億行や数十億行の仕訳の数になります。

    • 入金と出金を無限回数で繰り返すその様は、無限連鎖の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 株式市場や仮想通貨市場を観察してみてください。

    • 人気が沸騰すればするほど、限りなくゼロに近い時間軸の中で、膨大な数の取引が行なわれます。

    • 買いが買いを呼び、売りが売りを呼ぶその経済現象は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • マクロ経済の産業連関表を観察してみてください。

    • ある産業で生産された中間財は次の産業へ投入され、そこで生産された中間財は次の産業へと投入されていきます。

    • その流れは、マクロ経済レベルで、無限連鎖の複利計算を行なっていくことと同じです。
すなわち、企業のコスト構造やミクロ・マクロの経済構造は、無限回数で連鎖する複利計算機構を内蔵していることがわかります。 上記の考えかたを原価計算や原価管理に当てはめた理論を、「タカダ式変動予算」といいます。 空調のきいた部屋でプログラミングをしているSE(システムエンジニア)たちには決して理解されない理論が、上記の受賞論文や書籍に記述されています。
そこで問題となるのが、企業会計審議会『原価計算基準』です。 これは全編を通して、1次関数を用いた単利計算構造で構成されています。 したがって、『原価計算基準』に準拠したシステムはすべて、単利計算構造で構築されることになります。 『原価計算基準』に準拠していないシステムも、単利計算構造で構築されています。 日本製のシステムだけでなく、アメリカ製やドイツ製のシステムも、単利計算構造で構築されています。 世界中でどれくらいの数の、原価計算システムや管理会計システムがあるのかは知りませんが、そのすべてが、単利計算構造で構築されている事実に、驚いてください。
原価計算管理会計を、複利計算構造で解き明かそうとするシステムは、『公認会計士高田直芳の原価計算&管理会計システム』のみです。 略称を『高田原計』といいます。 上記の受賞論文や書籍よりも前に、複利計算構造で、原価計算や原価管理を説いた理論は存在しません。 当然、複利計算構造で構築されたシステムも存在しません。 以上のことから、世にある原価計算システムや管理会計システムが、複雑怪奇なものとなる「最大の理由」を説明することができます。 例えば、銀行預金を複利運用で預けたとしましょう。 預金者が受け取る元利合計額は当然、複利で計算されたものです。 複利で計算された元利合計額を、単利計算の式(1次関数)で検算できると思いますか。 ところが、「検算してみせるぞ」ということで、せっせせっせと取り組んでいるのが、『高田原計』以外のシステムなのです。 日本製だけでなく、アメリカ製やドイツ製も同じです。 システムが複雑怪奇なものとなる理由が、自ずと知れようというものです。
冒頭で紹介した「国立大学病院システム」は、「原価計算や損益の要因分析」を行なうために導入したシステム。 原価計算や損益分析をしようというのに、そもそも1億8千万円のコストを無駄遣いしているのですから、笑ってしまいます。 この国立大学病院システムは、2016年にバージョン2が導入されるのだとか。 さらなる税金の無駄遣いが行なわれるものと推測しています。 他人のカネ(税金)だからこそ、無駄遣いしても心が痛まない。 レンタカーを洗車する人がいないのと同じ理屈です。
【関連ブログ】