公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座

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公認会計士高田直芳:在庫の評価減?その話ちょっと待った!


在庫の評価減? その話、ちょっと待った!

2015年6月23日付の日本経済新聞では、東芝の在庫に係る評価減の記事が掲載されていました。
【1面】

東芝は2012年の工場再編時、供給維持のため在庫を多く持ったが、売れ行きは低調。

にもかかわらず将来の需要回復を期待して評価減をしなかったとみられる。


【14面】

在庫を多く持つこと自体は経営判断と見ることができる。

その後に適正価格で販売できれば問題にならないが、この時点で将来の需要は不透明だった。

日本経済新聞、2015年6月23日付
上記の記事を読んで「んん~」と、腕を組んだまま、かたまってしまいました。
「評価減をしなかった」というのは、別にどうでもいい話。 (どうでもいいわけではないけれど)
それよりも疑問に感じたのは、「供給維持のため在庫を多く持った」「在庫を多く持つこと自体は経営判断と見ることができる」の箇所です。
まず、一般的な話をしましょう、 流通業の棚卸資産は「商品」であり、製造業の棚卸資産は「製品・仕掛品」です。 これは、付加価値を加えるか、加えないか、の違いです。 製造業は工場を構えて、独自の付加価値を加えるので、その棚卸資産は「製品・仕掛品」です。 流通業は、左から仕入れて、右へ販売するだけであり、独自の付加価値を加えることがないので、その棚卸資産は「商品」です。 セブン&アイセブンプレミアム」やイオン「トップバリュー」などのプライベート・ブランドは、確かに、各社の付加価値を加えたものです。 ただし、これは製造子会社(または受託メーカー)が手がけるものであり、製造子会社が出荷した「製品」は、流通親会社では「商品」になります。
ここで重要なのは、製造業の製品は主に「評価減」がつきまとい、流通業の商品は主に「廃棄損」がつきまとう、という点です。 廃棄損というのは、消費期限や賞味期限が切れたものを、捨てることです。 次に重要なのは、製造業の製品には、「なぜ、評価減がつきまとうのか」という点です。 答えは、「固定費」にあります。 流通業の商品には、固定費はほとんど含まれません。 商品仕入高のほとんどは、外部購入費用から構成されるので、その大半が「客観的な原価」によって構成されます。 製造業の製品には、固定費が含まれます。 この固定費は内部の見積もり費用ですので、製品製造原価にはかなりの割合で「主観的な原価」が紛れ込みます。 これが、製品の評価減となって現われます。 実務を知らず、机上の理論をもてあそんでいる人たちには理解できない「実務の取り扱い」です。
流通業では、1年間で発生した固定費は、その全額が、販売費及び一般管理費に計上されます。 つまり、固定費の全額が、損益計算書のコストとして計上されるということ。 それに対して、製造業では、1年間で発生した固定費は、その全額が、損益計算書に計上されるわけではありません。 固定費の一部は、貸借対照表棚卸資産(製品・仕掛品)に加算されます。 これを全部原価計算といい、日本の原価計算制度における原則的な処理方法です。
固定費の全額が損益計算書に計上されず、その一部が貸借対照表に計上されると、どうなるか。 貸借対照表へ振り替えられた金額だけ、損益計算書に計上されるコストが少なくなります。 その結果、損益計算書の利益が大きくなるのです。 次の拙著では、棚卸資産をがんがん膨らませることにより、固定費を貸借対照表へどんどん振り替えて、損益計算書の利益をぐんぐん膨らませる方法を紹介しました。 粉飾決算の手法の中では、高度の部類に属します。 以上に似た話を、このブログで説明したことを記憶しているでしょうか。 そうです、シャープです。 次の関連ブログで説明しました。
【関連ブログ】
拙著(ほんとうにわかる管理会計&戦略会計)の事例や、シャープの事例に限らず、製造業で棚卸資産をがんがん計上すると、その期の利益はぐんぐん膨らみます。 ところが、翌期はそれが剥がれて、赤字に転落します。 2014年3月期と2015年3月期のシャープが、それを見事に実証してくれました。 東芝の場合、剥がれた赤字を補うために、別途、さらなる工夫を施そうとして、収拾が付かなくなったのかな。 そういう疑問が湧き起こったのです。 杞憂としておきましょう。
もう一つ、疑問に思ったこと。 上掲の日本経済新聞の記事では、「在庫を多く持つこと自体は経営判断と見ることができる」とありました。

  • ひょっとして、その経営判断の裏には、在庫を多く持つことによって、その在庫に固定費を多く加算し、損益計算書の利益のカサ上げを図ろうという意図があったのではないか。

  • そういう意図を持った策士が、経営判断をする者の近くにいたのではないか。

  • 経営判断を下す者に「会計知」がなかったために、策士の策で、まんまと一杯、食わされたのではないか。
ミステリー小説の読み過ぎですね。 すみませんでした。 そこまでの知恵を働かせる策士が、社内にいれば、「不適切な会計処理」を是正することもできたわけですから。 粉飾決算というのは、小人閑居して不善を為す事例を集積したものです。
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