公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座










はてなブログは、ウェブリブログのバックアップ用であり、更新には数日の遅れがあります。

はてなブログ内のリンクはすべて、ウェブリブログへ接続します。

公認会計士高田直芳:東芝の不適切会計問題ってそんなに大騒ぎするものなのか


東芝の不適切会計問題って
そんなに大騒ぎするものなのか


2015年7月9日付の日本経済新聞では、「不適切会計では総額で1700億~2000億円の営業利益の減額修正が必要となる見通し」とありました。
1億円の札束は約10キログラムの重さなので、2000束×10キロ=20トン。 とてつもない重さだといえます。
しかし、これを決算書の数値とみた場合、それほど大騒ぎするものなのか、というのが、個人的な感想です。
もちろん、2000億円という金額は、大きい。
しかし、この金額は、過去5年間の累計額です。
東芝の、過去5年間の営業利益の累計額を調べると、1兆0566億89百万円です。 この金額で2000億円を割ると、18.9%なり。
東京証券取引所有価証券上場規程405条と、同施行規則407条を参照すると、「投資者の投資判断に及ぼす影響が重要なもの」として、「直ちにその内容を開示しなければならない」ものとされるのは、プラスマイナス30%以上の変動があったとき、です。 おいおい、18.9%なら、「想定の範囲内」でしょう。 もちろん、単年度で2000億円の修正を行なうわけですから、その影響は大きく、課徴金処分は避けられません。 「TOSHIBA」というブランドの毀損も、大きいし。 しかし、どうにも、むず痒(がゆ)さが残る話だなと。
2015年7月10日付の日本経済新聞では、「東芝が抜本的な構造改革を迫られている」とありました。 おいおい、たかだか18.9%の修正で、抜本的な構造改革を行なう必要があるのかなと。 むしろ不思議に思ったのは、2015年7月9日付の日本経済新聞で「今月21日にも外部の専門家でつくる第三者委員会が調査報告書をまとめる」という記事。 まだ10日以上も先の話です。 そう、まだ10日以上もあるのに、企業の内部情報が、メディアにポロポロと漏れていることのほうが、内部統制上、問題ではないのかなと。 メディアへ情報をリークするのは、いつの世も、反主流派だし、人の口に戸は立てられぬ、か。 東芝のような大組織になると、「一枚岩になって、この難局を乗り切ろう」というわけには、いかないのでしょう。
最も注目したいのは、2015年6月22日付の日本経済新聞の記事。
日本経済新聞、2015年6月22日

組織としては何重にもチェックする構造になっている。

東芝カンパニー制を採用し、それぞれ最高財務責任者がいる。

その下の工場や事業所にも経理部がある。

つまり、事業所経理部→カンパニー経理部→東芝経理部、さらには監査法人、取締役会と何カ所も関所があるが、「現場が『見積もりは正しい』と主張すれば反証は難しい」という。

原価計算システムが複雑すぎて、本社の経理部門や監査部門、そして監査法人さえ「検算」できないということなのでしょう。 なぜ、複雑な原価計算や原価管理が、組織内部で大手を振って、のし歩くのか。 その理由は、至って簡単です。 次の拙著や本ブログで再三指摘しているように、企業のコスト構造は、複利計算構造を内蔵しているにもかかわらず、それを単利計算で解き明かそうとするからです。 例えば複利運用した預金利息を、1次関数(y=ax+b)の単利計算で「検算」しようとするならば、ものすごい労力を必要とします。 嘘だと思うなら、書店へ行って「原価計算」や「管理会計」と名の付く書籍を、片っ端から調べてみてください。 そこに記述されているのは、すべて、1次関数(y=ax+b)の単利計算に基づく原価計算論と管理会計論ですから。 企業のコスト構造を、複利計算で解き明かしたものは、上掲の拙著だけです。 日本だけでなく、欧米の学術論文や学術書でも論じられていません。
現実の企業活動では、次の事実を観察することができます。
  • 製造業に勤務する人であれば、工場内の各工程を観察してみてください。
    • 工場内に無数に存在する工程に、材料費・労務費・経費を次々と投入していくと、無限回数の振り替え計算が行なわれていることがわかります。
    • 材料・仕掛品・製品などが入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 流通業に勤務する人であれば、店舗に置かれた商品を観察してみてください。
    • 日々仕入れた商品は、棚に補充したそばから、消費者へ次々と販売されていきます。
    • 膨大な商品が入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 財務や経理に携われる人であれば、手元にある帳簿を観察してみてください。
    • 上場企業のような大規模組織になると、帳簿に記帳される仕訳の数は、1日で数百行や数千行にものぼります。
    • 振り替えの仕訳を含めれば、年間では数億行や数十億行の仕訳の数になります。
    • 入金と出金を無限に繰り返すその様は、無限連鎖の複利計算を行なっていることと同じです。
以上のように、製造業や流通業を問わず、企業のコスト構造は、無限回数の複利計算構造を内蔵していることがわかります。
次の【関連ブログ】では、国立大学病院原価計算システム「HOMAS」の運用が頓挫し、1億8000万円の税金が無駄遣いされた話を紹介しました。
国立大学病院原価計算システム「HOMAS」は、間接費を四次配賦までするらしい。 1億8000万円も投じて、何をやっているんだか。 開いた口が塞がらぬ、とはこのことです。 複利計算構造を内蔵しているものを、単利計算で解き明かそうというのだから、配賦計算を4回も重ねるのは当然か。 そのように複雑怪奇なシステムが世にはびこっては、経理部門や監査部門が「検算」できるわけがありません。
それに対して「公認会計士高田直芳の原価計算&管理会計システム」が行なう配賦計算は、1回です。 「原価計算工房」の後継システムであり、通称は「高田原計」。 複利計算構造を内蔵するコスト構造を、複利の計算式で2回も、3回も、4回も繰り返す、愚かなことはしません。 「数Ⅰで挫折した高校生」でも検算できる、というのが、「高田原計」の特徴です。 配賦計算の回数を増やせば増やすほど、システムが複雑であればあるほど、「原価情報の精度が高まる」と勘違いしている人たちが多いような気がします。 経理部門・監査部門・監査法人が「検算」できないようなシステムであることが、そもそも「不適切」です。 経理部門などが検算して、「これは、おかしいぞ」となれば、18.9%の範囲内で修正できていたはずですから。
コーポレート・ガバナンス(企業統治)といえば、聞こえはいいですが、組織は所詮、人が動かすもの。 様々な軋轢や大勢の思惑で、権力闘争や派閥抗争が生まれます。 それは回避することができません。 いろいろな人のメンツを立てながら、それをどう調整していくかが、「社内政治」というもの。 問題の本質は、それがうまく機能しているかどうかでしょう。