公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座










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公認会計士高田直芳:単一工程管理より工程別管理のほうが優れているのか


単一工程管理より工程別管理のほうが優れているのか
『高田直芳の実践会計講座 原価計算』補足説明

上場企業や大企業を訪ねると、そのほとんどで、工程別の生産管理や、工程別の原価計算に出くわします。 これらの「工程別」のルーツって、どこにあるか知っていますか?
工程別原価計算のルーツは、企業会計審議会『原価計算基準』二五にあります。 日本の原価計算制度を統制している、唯一の会計基準です。
上場企業が自主開発している原価計算システムにしろ、システム開発会社がセールスする原価計算システムにしろ、「企業会計審議会の『原価計算基準』に準拠しています」と主張されたら、社長をはじめとする経営陣は黙るしかありません。
会計知識に疎(うと)い役員では、現場の主張に対して、反論のしようがないですから。
そして、現場(事業部門)の強烈な自己主張に対して、バックアップ部門(経理部門・監査部門・監査法人)が反論できなかったのが、東芝問題の本質であったはず。
【関連ブログ】東芝の不適切会計問題って、そんなに大騒ぎするものなのか
そこで、企業経営者に助け船を出しましょう。
社長の質問 「その『原価計算基準』は、いつ頃、定められたものなのか?」 部下の回答 「昭和37年(1962年)です」
社長の質問 「昭和37年(1962年)以降、現在に至るまで、何度の改正があったのか?」 部下の回答 「一言一句、改正されたことがありません」 社長としては、「なんだ、それ?」という顔をしてください。
昭和37年(1962年)は、どういう時代であったか、ご存じですか。 東海道新幹線が開通する前。 第1回東京オリンピックが開催される前。(2020年の話ではありません) 1960年代の高度経済成長期が始まる前。 1ドル360円の固定相場制の時代です。 万力や、カナヅチや、スパナなどを、とんてんかんと叩きながら、製品の一つひとつを職人が「手作り」していた時代です。 「万力=まんりき」なんて、どれだけの人が知っているでしょう。 あれから53年が経過した現在(2015年7月)でも、一言一句、改正されていないのが、企業会計審議会『原価計算基準』です。 そのような会計基準に基づいて開発された原価計算システムであっても、「正確な原価の計算」を行なえるのだ、と信じているのが、いまのSE(システム・エンジニア)たちです。
重ねて質問です。 『原価計算基準』が定める工程別原価計算のルーツって、何だかわかりますか? 答えは、アダム・スミス(1723~1790)の『国富論』(1776年刊)です。 マンキュー経済学Ⅰミクロ編(第3版)394ページを参照すると、次の記述があります。

スミスは、分業化によって、ピン工場は労働者1人当たり何千ものピンを毎日生産することができると報告している。

いまから53年前に制定された『原価計算基準』にある工程別原価計算のルーツは、いまから240年ほど前に刊行された『国富論』の、「ピン工場における分業化」の話に基づいています。 もし、単一工程の生産管理や原価計算よりも、複数工程の生産管理や原価計算のほうが、「原価の正確性が高まるのだ」と主張する人を見かけたら、その現場では「ピン工場の亡霊」が徘徊していることになります。 日本で行なわれているコスト計算やコスト管理なんて、こんなもの。
権威に弱い者はその権威を逆用し、木偶(でく)と化した会計基準で、おのれの正当性を主張する。 権威に弱い者は、権威を振りかざす者に、押し黙る。 「ピン工場の亡霊」や「木偶と化した会計基準」などの権威を打破していこうというのが、次の受賞論文であり、『公認会計士高田直芳の原価計算&管理会計システム』です。
権威に縋(すが)りつく者には、権威を打破しようとする者の気概はわかるまい。
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