公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座










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公認会計士高田直芳:東芝問題~彼らの動機はどこにあったのか~


東芝問題
~彼らの動機はどこにあったのか~

『高田直芳の実践会計講座「戦略会計」入門』補足説明

東芝問題については、2015年7月20日付で「第三者委員会調査報告書」が公表されたことにより、個人的には、すっかり興味をなくしてしまいました。
それでも、2015年9月になってようやく、有価証券報告書が公表され、本ブログでも再三、取り上げた経緯があることから、一連の資料をざっと読み通しました。
あれこれ参照しながら、思わず「んん~っ」と唸ってしまったのが、「STP減損」という文字でした。
STPとは、「サウス・テキサス・プロジェクト」の略称。
2010年11月29日付の東芝のプレスリリース「米国大手エンジニアリング会社ショー・グループとの原子力発電所建設に関する協力関係の構築について」を参照すると、次の固有名詞が飛び交っています。
  • STP(サウス・テキサス・プロジェクト)
  • ショー社(米国大手エンジニアリング会社)
  • NINA社(ニュークリア・イノベーション・ノースアメリカ社)
  • NRGエナジー社(米国の電力会社)
東芝は北米で、原子力発電所の建設を行なおうとしたのでした。 これら一連のプロジェクトを、STP(サウス・テキサス・プロジェクト)といいます。
このSTPは、2011年3月の東日本大震災により、呆気なく頓挫。 米国電力会社のNRGエナジー社は、さっさと見切りを付けて撤退してしまいました。 東芝も2012年3月期に、STPに係る減損を一括計上すべきでした。 減損会計というのは、そういう仕組みです。 なお、減損については、機会費用などと絡めた次の関連ブログを参照。
【関連ブログ】
ところが、です。 2014年5月22日付で公表された「2014年度、経営方針説明会」4頁を参照すると、2014年3月期になって、「NINA社の減損▲310億円」を計上。 2015年8月18日付で公表された「新経営体制、ガバナンス体制改革策及び業績予想について」18頁、20頁、28頁を参照すると、2015年3月期になって、「STP減損▲410億円」を計上。 東芝は、2年遅れ、3年遅れの2期にわたって、減損合計▲720億円を計上したのでした。
減損会計の考えからすれば、2012年3月期に、▲720億円を一括処理すべきもの。 2012年4月以降、会計監査人から、やいのやいのと催促されたのは、想像に難くない。 東芝ではそれに抗して、3年後の2015年3月期まで先送りしていたということ。 原発事業でしくじった▲720億円を取り繕うために、歴代社長の心の中に、不適切会計へ突き進む「動機」が生まれたのだろうな、と邪推するのでありました。
話題が変わりますが、IFRS基準を採用している企業では、「のれん」の定期償却を行なわず、減損処理のみを行ないます。 定期償却を行なわないのだから、償却費相当分の利益を、嵩(かさ)上げすることができます。 これぞ「奇貨おくべし」ということで、IFRS基準を採用する上場企業が増加しています。 ある期に、一気に減損かぁ。 今後、粉飾決算の動機は、業績悪化ではなく、減損にあると見た。 巨額の減損損失を隠蔽するために、第二・第三の東芝が現われる予感がします。
それにしても、米国企業はさっさと見切りを付けたのに、東芝は未練を断ち切るのに3年も要しました。 減損会計における最大のリスクは、未練にあると見た。 ニッポン男児は、別れた彼女の思い出を、いつまでも引きずるといいます。 わかるよ、わかる、その気持ち。
東芝問題に関連したブログ一覧】