公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座

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公認会計士高田直芳:限界費用がゼロの社会とは何か

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限界費用がゼロの社会とは何か

2016年1月3日付の日本経済新聞に、興味をそそられる書評が掲載されていました。
興味をそそられたのは「限界費用ゼロ」という表現でありまして、上掲の書籍を読むかどうかは未定です。
限界費用というのは、管理会計や経営分析で用いられる用語に置き換えるならば、変動費率のことです。 変動費ではないので、お間違えなく。
限界費用ゼロというのは、変動費率がゼロと同義です。 コストは、変動費と固定費の二色に分けられますから、変動費率がゼロということは、コストのすべてが固定費になる、ということになります。 この点に関して、先ほどの日本経済新聞では、次のとおり言及していました。
固定費用が別にあるので、総費用はゼロにはならないが、財やサービスがほぼ無料になる。資本主義の「命脈」ともいうべき利潤が枯渇するというわけだ。
日本経済新聞、2016年1月3日
上掲の記事では、固定費用( fixed cost )という用語を用いています。 むしろ、埋没費用( sunk cost )と解釈したほうがいいでしょう。 埋没費用ではなく固定費用であっても、作ったものはすべて売れる(量産効果が無限に働く)という条件が成立するのであれば、財やサービスの価格はゼロに近づきます。 しかし、そのような夢物語など、現実にはあり得ません。
固定費用と埋没費用それぞれの定義については、次の書籍を参照。 上掲のマンキュー経済学の383ページに、固定費用( fixed cost )の定義が記述されています。 同書414ページに、埋没費用( sunk cost )の定義が記述されています。 変動費率がゼロで、企業のコストのすべてが埋没費用であって、それに加えてあともう一つの条件、すなわち完全競争市場であれば、「財やサービスがほぼ無料」になるし、「利潤も枯渇」します。 しかし、世の中のほとんどの仕組みは、不完全競争市場ですから、利潤が枯渇することはありません。
これから、確定申告シーズンが到来し、次に三月決算業務が到来する実務家にとって、資本主義の利潤が枯渇するかどうかなんて、どうでもいいこと。 それに経済学は、完全競争市場や無限の量産効果など、議論を極端な方向へ振って、読み手の不安を煽る傾向があるので、読み手の側は気をつけないといけません。
固定費用の話題が登場したついでに思うのは、今年(2016年)も、「固定費削減の嵐」が吹き荒れるのかなと。 固定費削減で真っ先に斬り込まれるのは、モノよりも、ヒト。 モノに係るコストを減らすには時間を要しますが、ヒトに係るコストは社長の号令一下、翌月から減らすことが可能です。 つまり、固定費削減といえば、人員削減が中心。 リストラといえば、今では「人減らし」と同義の感があります。 資本主義の論理としては、ヒトもモノも、減らすのは同じか。 しかしながら、かつて住友金属工業で社長や会長をつとめた下妻博氏の、次の言葉が、胸に突き刺さります。
「欧米流とか、資本の論理とか簡単に言わない方がいい。社員一人ひとりの後ろには家族がおるんだ」
日経産業新聞、2015年12月4日
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