公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座

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公認会計士高田直芳:人工知能AIが会計と監査を支配する


人工知能AI が
会計と監査を支配する


日本経済新聞で、次の記事が掲載されていました。
日本経済新聞2016年1月12日

急速に実用化が進む人工知能(AI )技術の影響についても聞いた(複数回答)。

AI の登場で将来、ニーズの低下が見込まれる資格として、日商簿記検定(1~3級、7.6%)や英語能力テスト(6.5%)といった会計系や語学系資格が多く挙がった。

いずれもコンピューターとの親和性が高くAI での代替が可能と見られたようだ。

上記の記事は、十分に予想される話です。 いずれ、不正会計や粉飾決算も、人工知能AI が考案することになるでしょう。 企業経営者が「利益をもう少し嵩上げせよ」と呟けば、人工知能AI は「イエス、ボス」と応えるはずです。 会計監査も、人工知能AI が仕切ることになるのでしょう。 財務諸表や帳簿を、画像診断装置にでもかざせば、黄信号や赤信号がともるのかも。 不祥事が起きるたびに作成される「第三者委員会報告書」も、人工知能AI が作成することになるのかな。
ただし、人工知能AI にも限界があります。 それは、「創造力」や、「問題発見・問題解決の能力」がないこと。 例えば、会計学や経済学などのノウハウをインプットされた人工知能AI は、企業のコスト構造を、1次関数で描いたり、2次関数や3次関数で描いたりすることでしょう。 ひょっとしたら、4次関数や5次関数で描こうとする人工知能AI があるかもしれません。 しかし、企業のコスト構造を、1次関数・2次関数・3次関数で描くことを「オカシイゾ」と見抜く(問題発見する)能力は、人工知能AI にはありません。 ましてや、それ以外の関数で、企業のコスト構造を描こうと考える(問題解決する)能力は、人工知能AI にありません。
人工知能AI は、いままで、膨大な会計処理を扱ってきました。 これからも、膨大な会計処理を扱うことでしょう。 どれだけ膨大な会計処理であろうと、その基本は、借方と貸方の繰り返しです。 それは、入金と出金の繰り返しです。 数十万件・数百万件という、ほとんど無限の入金と出金を繰り返す仕訳を、瞬時に処理する人工知能AI といえども、「コレハ無限ノ複利計算ダ」と見抜く人工知能AI は現われないのです。
現実の企業活動を、よくよく観察してみてください。 次に示す事実が判明します。
  • 製造業に勤務する人であれば、工場内の各工程を観察してみてください。
    • 工場内に無数に存在する工程に、材料費・労務費・経費を次々と投入していくと、無限回数の振り替え計算が行なわれていることがわかります。
    • 材料・仕掛品・製品などが入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 流通業に勤務する人であれば、店舗に置かれた商品を観察してみてください。
    • 日々仕入れた商品は、棚に補充したそばから、消費者へ次々と販売されていきます。
    • 膨大な商品が入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 財務や経理に携われる人であれば、手元にある帳簿を観察してみてください。
    • 上場企業のような大規模組織になると、帳簿に記帳される仕訳の数は、1日で数百行や数千行にものぼります。
    • 振り替えの仕訳を含めれば、年間では数億行や数十億行の仕訳の数になります。
    • 入金と出金を無限に繰り返すその様は、無限連鎖の複利計算を行なっていることと同じです。
19世紀から20世紀を経てこの21世紀に至るまで、数億人にものぼる人たちが、企業活動を観察してきたはず。 ところが、「これは無限の複利計算だ」と気づいた人は、いままで一人も現われなかったのです。
企業活動は「無限の複利計算構造を内蔵」し、それは「複利関数をもって描かれるべきだ」と唱えたのは、次の受賞論文が初めてです。
【資料1】
上記【資料1】の受賞論文では、企業のコスト構造を「複利関数」で描いています。 それが次の【資料2】の図表です。
【資料2】タカダ式操業度分析
画像
上記【資料2】で描かれている曲線ABCDEは、複利曲線です。 この曲線を、人間が人工知能AI に、1次関数や2次関数で描くことを強要するとどうなるか。 その矛盾する様子を、現在の原価計算制度やコスト管理手法に見ることができます。
現在の原価計算制度やコスト管理手法は、上場企業から中堅中小企業に至るまで、1次関数で運用されています。 1次関数というのは、預金の利息計算でいえば、単利計算です。 複利計算構造を内蔵する企業のコスト構造を、単利計算で解き明かそうというのは、どう考えても「理論上の瑕疵(かし)」がある。 複利運用された預金利息を、単利計算で検算しようとしても、理論上の瑕疵があるのと同じこと。 それでも無理を通そうとすると、どのような矛盾が吹き出すか。 マイナスの原価差異と、プラスの原価差異とが交互に現われるのです。 これについては、次の2本の関連ブログで言及しました。
【関連ブログ】
繰り返し注意喚起しておきますが、マイナスの原価差異とプラスの原価差異が交互に現われるのは、複利計算構造を内蔵する企業のコスト構造を、単利計算で解き明かすことによって現われる「瑕疵の証拠」なのです。 なお、「原価差異って何?」と首を傾げているようでは、「ヒトの退化」です。 「人工知能AI の進歩」と相まって、「会計のブラックボックス化」に拍車がかかるでしょう。
驚くべきことは、予定原価や標準原価に限らず、スループット会計、活動基準原価(ABC・ABM)、原価企画などもすべて、単利計算構造で構築されているという事実です。 上場企業から中堅中小企業に至るまで、「全員、右へ倣え」の原価計算制度やコスト管理手法を見聞するたびに、実務を知らぬ学者の権威にへいこらへいこらと媚びる、実務家たちの滑稽ぶりを見出します。 それは次の関連ブログで述べました。
【関連ブログ】
理論上の瑕疵(かし)を、人間に諭す能力は、AI にはありません。 これも、人工知能AI の限界です。
もちろん、上記【資料1】の受賞論文を人工知能AI にインプットすれば、人工知能AI は、複利計算構造を内蔵した企業のコスト構造を、複利曲線で描いてくれることでしょう。 ところが、現実は、そううまくはいきません。 なぜなら、人工知能AI は、次の警告文を表示するはずだからです。
このケースにおける法令は、著作権法です。 コンプライアンスを判断できない人工知能AI は、不正会計や粉飾決算を手掛ける能力を備えているといえます。 しかし、そんなものは、人工知能AI とは呼べません。 犯罪への抑止力を有しているかどうかが、人工知能AI と、ただの表計算ソフトとの境目になるでしょう。
企業のコスト構造を、無限の複利計算構造で解き明かすことを論じた学術論文は、【資料1】のみです。 日本だけでなく、欧米にも、同旨の学術論文や書籍は存在しません。 人工知能AI が、今後どれだけ進歩しようとも、【資料1】や【資料2】を真似することは、コンプライアンス違反なのです。 それが「会計系AI 」の限界です。 権威に媚びず、人工知能AI にもデカい顔をさせない。 そんな実務家でありたいと心掛けています。