公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座










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公認会計士高田直芳:内部留保とROE経営の関係

日銀のマイナス金利政策が、企業の設備投資をどれだけ後押しするのか、それを評価するのは難しい。
設備投資に手をこまねく企業の株価を、投資家はどう評価したらいいのか、これまた悩ましい。
ROE(自己資本利益率)や、D/Eレシオは、経営指標としてどれだけ役に立つのか。
しばし株価ボードを睨む目を休めて、「内部留保」という経営指標に注目することにしましょう。
日本経済新聞「ゼミナール」では、2016年2月18日以降、大和総研の執筆により、内部留保に関する解説記事が掲載されています。
その記事では、内部留保を、【資料1】のように定義しています。
【資料1】

内部留保とは何か。

企業はモノやサービスを販売し、その売り上げから原材料や、賃金などの費用を支払う。

残った利益から株主に配当などを支払い、最後に残った資金である「留保利益」が翌期以降の事業活動の原資となる。

日本経済新聞「ゼミナール/内部留保の解剖(1)」
2016年2月18日
上記の記事では続いて、留保利益のストックが、連結貸借対照表の利益剰余金で表わされる、と述べています。 ただし、利益剰余金を、内部留保として扱ってしまうのは、アバウトすぎます。 内部留保の「中味」を細かく検証してこその、経営分析です。
では、内部留保の構成要素は、どのようにしたら求めることができるのでしょうか。 上記【資料1】の記事を読むと、連結損益計算書連結株主資本等変動計算書から、内部留保を求めることができそうです。 ところが、です。 企業内部の人ならともかく、企業外部の投資家やアナリストが、連結損益計算書などから内部留保を求めることは不可能です。 現在のディスクロージャー(企業情報開示)制度は、そこまで親切な様式になっていません。
他に何かいい情報はないかと、有価証券報告書を眺めていると、あった、あった、いいのがありました。 連結キャッシュフロー計算書です。 第1四半期と第3四半期の連結キャッシュフロー計算書を省略する上場企業が多く、「第三の財務諸表」と持て囃されている割りには、邪険に扱われている存在です。
その連結キャッシュフロー計算書で、最初に注目したいのが、営業活動キャッシュフロー。 しかし、これには、債権債務の増減額まで含まれているので、営業活動キャッシュフロー内部留保になりません。 それに営業活動キャッシュフローは、内部留保を求めるにあたって、何か大きな要素が欠けている。
次に注目するのが、フリーキャッシュフロー。 これは、営業活動キャッシュフローと投資活動キャッシュフローを足し合わせたものと定義されます。 ところが、フリーキャッシュフローは、内部留保という概念から、もっともっと懸け離れてしまいます。
では、内部留保を具体的に求めるには、どうしたらいいか。 答えは、拙著『[決定版]新・ほんとうにわかる経営分析』251ページの〔図表175〕において、灰色で染めた項目を集計したものになります。 この書籍は、2016年2月の新刊です。
連結キャッシュフロー計算書を作成するのは、大変な労苦を要します。 それを、上場企業は、えっちら、おっちら、と作成してくれる。 企業外部の投資家は、その苦労に感謝しながら、内部留保をササッと求めましょう。
拙著『[決定版]新・ほんとうにわかる経営分析』251ページの〔図表175〕で求めた内部留保を、経営分析でどのように役立てるか。 以下では、「ROE経営」との繋がりを考えてみることにしましょう。
第一に、内部留保の増大は、利益剰余金を増大させ、自己資本を増大させ、ROEを低下させます。 第二に、企業としては、設備投資によって、新しいビジネスを創出し、ROEの分子(当期純利益)を増加させることによって、ROEを改善する必要があります。
ところが、「黒田バズーカ」や「マイナス金利」によって、将来の不透明感が増す中で、企業としてはおいそれと設備投資に取り組むわけにいきません。 過大な設備投資によって迷走するシャープが、反面教師になります。
そこで第三弾として取り組むのが、内部留保を活用した「自己株式の消却」です。 これはROEの分母(自己資本)を圧縮し、ROEを改善する効果があります。 日本経済新聞(2016年2月日)「なるほど投資講座」では次の【資料2】の記事が掲載されていました。
【資料2】

ゴールドマン・サックス証券の計算では「持ち合い株主」の比率が増えるに従って、企業の自己資本利益率(ROE)は下がる傾向がありました。

持ち合い解消の流れが強まる中、その受け皿として自社株買いが増えていると考えられます。

日本経済新聞「ゼミナール/内部留保の解剖(1)」
2016年2月18日
2016年2月28日付の日本経済新聞では「自社株買い最高へ、8年ぶり、今年度5兆円近く、株価下支え」というタイトルの記事が掲載されていました。 自社株買いが、なぜ、盛んなのかは、上記で述べた内部留保との関連で理解する必要があります。 その「なぜ」を徹底的に追い求めたのが、拙著『[決定版]新・ほんとうにわかる経営分析』です。
経営分析は、次の二本柱から構成されます。 ROEやD/Eレシオなどの「百分率」は、収益性分析の基本です。 それ以外に、内部留保などの「金額」そのものを扱うキャッシュフロー分析も、お忘れなく。
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