公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座

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公認会計士高田直芳:監査法人よ会計監査の力量と矜持を見せてくれ


監査法人よ、会計監査の力量と
矜持を見せてくれ

『高田直芳の実践会計講座 原価計算』
補足説明


法人税基本通達5-3-3では、次の定めがあります。
【資料1】

法人税基本通達5-3-3(原価差額の調整を要しない場合)

原価差額が少額(総製造費用のおおむね1%相当額以内の金額)である場合において、法人がその計算を明らかにした明細書を確定申告書に添付したときは、原価差額の調整を行わないことができるものとする。

上記の規定を「原価差額1%ルール」といいます。
上記【資料1】の規定は、「行なわない」場合を定めたものです。 「行なう」場合の、その会計処理方法は、次の拙著609ページで説明しています。
自分勝手な会計処理を行なって、税務否認を受けないように。
特にCVP分析(損益分岐点分析)に基礎を置いた直接原価計算制度を採用している企業は、拙著609ページで解説している会計処理を励行してください。
さて、上場企業で、原価差額の調整を行なわずにすんでいる例は皆無であると推測しています。
なぜか。
原価差額が総製造費用の1%に収まるわけがないからです。
まず、1%というのは、次の【資料2】に示す「A」と「B」の差です。
【資料2】
  1. 予定原価(または標準原価)
  2. 実際原価(または実績原価)
上記【資料2】の「A.予定原価(または標準原価)」は、学界・実務界のすべてで、1次関数で計算することとされています。 予定原価や標準原価に限らず、直接原価・活動基準原価・品質原価・原価企画・原価改善・バックフラッシュ・スループット・ライフサイクルコスティングなど、あらゆるものが、1次関数を基礎として構築されています。 1次関数とは、単利計算構造のこと。 したがって、いま紹介した予定原価などはすべからく、単利計算構造で構築されていることになります。
上記【資料2】の「B.実際原価(または実績原価)」もまた、単利計算構造であるならば、【資料2】の「A」と「B」の差は、1%に収まることでしょう。 ところが、です。 現実の企業活動は、次の【資料3】に示す現象になっていることを観察することができます。
【資料3】
  • 製造業に勤務する人であれば、工場内の各工程を観察してみてください。
    • 工場内に無数に存在する工程に、材料費・労務費・経費を次々と投入していくと、無限回数の振り替え計算が行なわれていることがわかります。
    • 材料・仕掛品・製品などが入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 流通業に勤務する人であれば、店舗に置かれた商品を観察してみてください。
    • 日々仕入れた商品は、棚に補充したそばから、消費者へ次々と販売されていきます。
    • 膨大な商品が入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 財務や経理に携われる人であれば、手元にある帳簿を観察してみてください。
    • 上場企業のような大規模組織になると、帳簿に記帳される仕訳の数は、1日で数百行や数千行にものぼります。
    • 振り替えの仕訳を含めれば、年間では数億行や数十億行の仕訳の数になります。
    • 入金と出金を無限に繰り返すその様は、無限連鎖の複利計算を行なっていることと同じです。
つまり、【資料1】の「B.実際原価(実績原価)」の本質は、複利計算構造にあることがわかります。 それを論じたのが、次の受賞論文です。

単利で計算されたコストと、複利で計算されたコストとを突き合わせて、両者の差が1%に収まるわけがない。 そんなこと、中学生にだって理解できる。 それを論証したのが、本ブログ『原価データを粉飾する上場メーカーが存在する』でした。
もし、1%に収まっているとするならば、それは粉飾決算が行なわれている可能性が大です。 かといって、「わが社の原価差額は、1%を大きく超えています」とは、上場企業のメンツにかけて、口が裂けても言えない。 他社の動向を気にしながら、横並びの行動をとるのは、ニッポン企業の特徴だから。
もうすぐ3月決算の会計監査が始まります。 監査法人諸君よ。 監査で原価差額をつついて、上場企業のメンツを潰してみるといいよ。 1%を大きく超える会計処理を見つけたら、「上場企業ともあろうものが、何をやっているんだか」と、大いに笑おう。 それくらいの力量と矜持を見せてくれ。
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