公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座










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公認会計士高田直芳:有償取引と循環取引のああ勘違い

「会計知のない人」が陥る錯覚の一つに、有償取引(無償取引を含みます)と、循環取引との混同があります。
部品や材料を有償支給(または無償支給)する取引は正当なものであるのに対し、循環取引粉飾決算のひとつです。
取り違えてはいけません。
最初に有償取引を簡単に説明しておきましょう。 次の4社を想定します。
【資料1】
    A社(原材料の供給業者) B社(元請け会社、完成品メーカー、大企業) C社・D社(下請け会社、部品メーカー、複数の中小企業)
次の取引を想定します。
【資料2】
  1. B社は、A社から、大量の原材料を一括購入します。
  2. B社はこの原材料を、C社やD社へ渡し、C社やD社に加工を行なわせます。
  3. C社やD社では、B社から供給された原材料を用いて部品を作り、これをB社へ納入します。
  4. B社では、C社やD社から受け入れた部品を組み立てて、製品を完成させ、これを外部に販売します。
上記【資料2】2.で供給される原材料について、金銭のやり取りをするのが有償支給であり、やり取りを行なわないのが無償支給です。 「会計知」のない企業は、まず間違いなく、無償支給を採用します。
無償支給は、C社やD社にモラルハザードを生じさせるので、B社にとってはコストの垂れ流しとなります。 B社が、コストの垂れ流しを忍従せざるを得ないのは、B社に「会計知」がないことの代償です。 また、無償支給を採用している企業が、コスト削減を声高に唱えるのは、自己矛盾です。 有償支給を採用しているのか、無償支給を採用しているのかで、その企業の「会計知レベル」や「コスト削減活動のレベル」を判定することができます。 手軽なリトマス試験紙といえるでしょう。
有償支給は別名、バイセル取引(Buy-Sell)と呼ばれます。 その取引価格を、マスキング値差と呼びます。 有償支給の場合は、無償支給のようなモラルハザードが生じません。 ただし、会計処理は非常に面倒なものとなります。 有償支給を採用した場合の会計処理(仕訳)や、法人税・消費税の扱いについては、次の拙著196ページ以降で詳述しています。 無償支給には、どのようなメリットがあるのか。 有償支給には、どのようなメリットがあるのか。 こうした取引は、下請けイジメにならないのか。 そうした問題点については、次の関連ブログで紹介しています。
【関連ブログ】
有償支給や無償支給には様々な問題点がありますが、その取引自体は、まっとうなものであり、次に紹介する循環取引と混同しないようにしてください。
次に、循環取引です。 次の3社を想定します。
【資料3】
    甲社(ソフト開発会社) 乙社(ソフト開発会社) 丙社(ソフト開発会社)
次の取引を想定します。
【資料4】
    甲社から乙社へ、あるソフトを、100万円で販売します。
    乙社から丙社へ、このソフトを、120万円で販売します。
    丙社から甲社へ、このソフトを、140万円で販売します。
    甲社から乙社へ、このソフトを、160万円で販売します。
3社間で、ソフトをぐるぐると転売していくことを、循環取引といいます。 その特徴は、次の通りです。
【資料5】
  1. 有形の製品では搬送が大変なので、無形のソフトが使われます。 これなら、伝票1枚で、売上高と仕入高を計上できますから。
  2. 乙社と丙社を経由して、甲社に再び戻ってくるのが、循環取引の特徴です。 外部の顧客へ販売されることがないのが、最大の特徴です。
循環取引に手を染めると、甲社・乙社・丙社の3社は、いずれも資金繰りに窮して経営破綻します。 外部から、カネが入ってこないのですから。 当たり前といえば、当たり前の結論です。 有償取引や無償取引は、B社から外部へ販売されて、おカネが入ってきます。 そこが循環取引と異なるところ。
甲社と乙社の2社間だけで、ソフトのやり取りを行なうのは、循環取引といいません。 2社間の取引では、売掛金と買掛金が両建てとなり、第三者に容易にバレてしまうからです。 外部からカネを引き込もうとして、循環取引に、手形やファクタリング(電子記録債権・電子記録債務)を絡ませると、どうなるか。 絡んだ場所が、地獄の一丁目。 次の拙著297ページから298ページで、角の曲がりかたを説明しています。 金融機関のみなさん、有償支給や無償支給の取引を見て、「すわ、粉飾決算か!」と騒ぐと、恥をかくので、気をつけましょう。