公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座










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公認会計士高田直芳:マイナス金利時代では経営指標やランキング表の評価は反転する


マイナス金利時代では
経営指標やランキング表の評価は反転する

[決定版]新・ほんとうにわかる経営分析
補足説明


前回ブログ『マイナス金利という異常事態は企業に債務超過を奨励す』では、そのタイトルでも示したように、債務超過に転落することが、企業業績としては正しい方向性(ベクトル)であることを論証しました。
現実問題として、債務超過など、そうそうあるものではありません。
例えば100万円を投資して、101万円を回収することができれば、金利はプラスの1%。
マイナス金利というのは、100万円を投資して、100万円を下回る金額でしか回収できないこと。
いままでの常識では、損をする投資話。 それを損とは扱わないよ、というのが、マイナス金利です。
こういう取引を延々と続けていくと、いずれは債務超過に転落します。 それは現実的にあり得ない。
しかし、金利がプラスの時代の常識を、マイナスに反転した時代にそのまま当てはめていいわけでもありません。 マイナス金利の時代では、ベクトルが180度、逆になっていることを理解する必要があります。 したがって、各種の経営指標やランキング表も、上下を引っ繰り返して眺める必要があります。
例えば、次の【資料1】に示す財務諸表で、自己資本比率とD/Eレシオの位置取りを確認しておきます。
【資料1】自己資本比率とD/Eレシオの位置取り
画像
上記【資料1】の図表は、次の書籍の45ページに収録してある〔図表22〕の一部を抜粋したものです。 ところで、上掲の拙著『[決定版]新・ほんとうにわかる経営分析』では、債務超過について、3種類の定義を紹介しています。 債務超過というのは通常、同書109頁にある2番目の定義を用いるのですが、今回は1番目の定義を用います。 つまり、「企業集団の財務戦略」ではなく、「親会社の財務戦略」の巧拙を問うことになります。 そりゃそうでしょう。 いまの時代、財務は、親会社が一手に担うところが多いのですから。
さて、マイナス金利の時代では、増資や自己資金ではなく、金融機関から借りられるだけ借りたほうが、機会損失(opportunity loss)を抑えることができます。 そうなると、【資料1】にある経営指標に、どのような影響を及ぼすか。 まず、【資料1】にある¶13自己資本比率は、これが小さい企業ほど、マイナス金利を追い風にして疾走しているのだな、と評価することができます。
メディアなどでときどき「自己資本比率ランキング表」を掲載して、自己資本比率の高い企業を誉めそやします。 それは、向かい風に帆を張るようなもの。 マイナス金利時代における「評価ベクトル」は逆です。 自己資本比率ランキング表の上位を占める企業は、マイナス金利の追い風に帆を張っていない、と評価すべきことになります。 むしろ、自己資本比率が低い(=他人資本比率が高い)企業ほど、高い評価が与えられなければなりません。
次に、【資料1】にある¶11D/Eレシオは、どうか。 金利がプラスの時代には、D/Eレシオが低い企業ほど、高い評価を受けました。 ところが、マイナス金利時代では、その評価が180度、変わりますから、D/Eレシオが高い企業ほど、高い評価が与えられなければなりません。
ここで、困った問題が起きます。 借りるだけ借りたカネを、どう使ったらいいのか、という問題です。 国が公表する資料やメディアの記事などを読むと、2016年は、景気後退期になっているらしい。 そのような時期に、積極的な投資などできるわけがありません。 そこで、持て余し気味のカネを使って行なわれているのが、前回ブログ『「内部留保」と「ROE経営」の関係』でも説明した「自社株の消却」になります。 そうなると、【資料1】にある¶21自己資本当期純利益ROEは、青天井で上昇するのが道理というもの。 しかし、現実は厳しい。 少なくともマイナス金利の時代が終わるまで、ROEを横目で睨みつつ、自己資本比率やD/Eのランキング表を、上下で引っ繰り返して眺める経営戦略が、「次善の策」となるのでしょう。 マイナス金利の時代に、「最善の策」はないようです。