公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座










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公認会計士高田直芳:勘定連絡図に上場企業の力量の小ささが大きく現われる


勘定連絡図に、上場企業の
「力量の小ささ」が大きく現われる

[決定版]新・ほんとうにわかる経営分析
補足説明


原価計算システムや管理会計システムと称するものは、すべからく「勘定連絡図」というものを作成する機能を備えています。
一例を示すと、次の【資料1】の通り。
【資料1】勘定連絡図
画像
上記【資料1】の勘定連絡図は、次の拙著76ページに収録してあるものです。 上記【資料1】の勘定連絡図は、原材料回転期間・仕掛品回転期間・製品回転期間などの経営指標を説明するために作成したものなので、簡明な構造としています。
私(高田直芳)が、「原価計算コンサルティング」や「管理会計コンサルティング」を行なうときに、企業側から提示してもらうのが、企業側がいままで利用していた勘定連絡図です。 上記【資料1】の勘定連絡図に、次の3種類の方法で原価差異(原価差額)を表示するのは、簿記2級(工業簿記)のレベルです。
【資料2】
  • シングルプラン
  • パーシャルプラン
  • 修正パーシャルプラン
上記【資料2】の基礎知識を持ち、次の拙著で1冊640ページもの超大作を著わした私といえども、企業側から提示された勘定連絡図を、ひと目で読む解くのは難しい。 難儀だなと痛感するのは、勘定連絡図に掲載されている原価差異の名称に、その企業の文化というか、生き様が現われているからです。 1社ごとに原価差異の名称は異なり、その語義も異なるので、勘定連絡図を見るたびに、どっと疲れます。 ただし、どのような名称を用いようとも、その名称にどのような定義を与えていようとも、私(高田直芳)は、上場企業などから提示される勘定連絡図すべてに、「理論上の瑕疵がある」ということで、駄目出しをします。 なぜか。
原価差異(原価差額)は、以前のブログ『監査法人よ、会計監査の力量と矜持を見せてくれ』でも説明したように、予定原価(標準原価)と、実際原価(実績原価)の差額です。 予定原価(標準原価)は、上場企業から中堅中小企業に至るまで、1次関数で計算されています。 預金の利息計算でいえば、単利計算のこと。 例えば「日歩5銭」で、単利計算を行なってみましょう。 日歩(ひぶ)というのは、100円に対する、1日あたりの利息のこと。 日歩5銭は、日利で0.05%ですから、年利に換算すると、18.25%(=0.05%×365日)になります。 材料費・労務費・経費の合計を1億円として、これを元金と見立てた場合、1年後の元利合計額は、次の【資料3】のように計算されます。
【資料3】
    1億円×(100%+18.25%)=118,250,000円

実際原価(実績原価)のほうも、1次関数の単利計算で集計されているのであれば、【資料2】のいずれの方法であろうとも、原価差異の名称がどのようなものであろうとも、解読するのは簡単です。 ところが、です。 現実の企業活動は、次の【資料4】に示す現象になっていることを観察することができます。
【資料4】
  • 製造業に勤務する人であれば、工場内の各工程を観察してみてください。
    • 工場内に無数に存在する工程に、材料費・労務費・経費を次々と投入していくと、無限回数の振り替え計算が行なわれていることがわかります。
    • 材料・仕掛品・製品などが入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 流通業に勤務する人であれば、店舗に置かれた商品を観察してみてください。
    • 日々仕入れた商品は、棚に補充したそばから、消費者へ次々と販売されていきます。
    • 膨大な商品が入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 財務や経理に携われる人であれば、手元にある帳簿を観察してみてください。
    • 上場企業のような大規模組織になると、帳簿に記帳される仕訳の数は、1日で数百行や数千行にものぼります。
    • 振り替えの仕訳を含めれば、年間では数億行や数十億行の仕訳の数になります。
    • 入金と出金を無限に繰り返すその様は、無限連鎖の複利計算を行なっていることと同じです。
つまり、実際原価(実績原価)の本質は、複利計算構造にあることがわかります。
そこで、1億円を、日利0.05%の複利で計算すると、次の【資料5】になります。
【資料5】
    1億円×(100%+0.05%)365日=120,015,941円

上記【資料3】の単利計算で求めた予定原価(標準原価)は、118,250,000円でした。 上記【資料5】の複利計算で求めた実際原価(実績原価)は、120,015,941円でした。 したがって、両者の差である原価差異(原価差額)は、次の【資料6】になります。
【資料6】
    予定原価(標準原価)-実際原価(実績原価)
      =118,250,000円-120,015,941円
      =▲1,765,941円(不利差異)

シングルプランであれば、▲1,765,941円は、【資料1】の左下にある製造経費勘定に計上されます。 パーシャルプランであれば、▲1,765,941円は、【資料1】の中央にある仕掛品勘定に計上されます。 修正パーシャルプランであれば、▲1,765,941円は、製造経費勘定と仕掛品勘定に分かれて計上されます。
さて、すべのてビジネスパーソンに、次の質問をしよう。

上記【資料1】の勘定連絡図に計上した原価差異▲1,765,941円を、分析する意義はあるのだろうか。

複利計算構造を内蔵した実際原価(実績原価)と、単利計算の予定原価(標準原価)とを比較して、何を語ろうというのだろうか。

複利の予算」と「複利の実績」を比較するのであれば、話はわかる。 しかし、「単利の予算」と「複利の実績」を比較するのは、どう考えても「理論上の瑕疵」がある。 その瑕疵に気づかずに、上場企業から中堅中小企業に至るまで、すべての企業が、▲1,765,941円の原価差異分析に取り組んでいるのです。 私(高田直芳)が企業を訪問し、重箱の隅をつついたような勘定連絡図を見て、「力量が小せぇ、小せぇ」と、腹を抱えて笑う理由を理解してもらえたと思います。 そして、「理論上の瑕疵」を改めようという意欲ある企業に対し、翌日から、原価計算コンサルティング管理会計コンサルティングが始まるのです。
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