公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座

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公認会計士高田直芳:売上値引という隠れ変動費に気づかぬ財務会計システムの愚かしさ

タカダ式原価計算&管理会計システム すべてを表示 会計物理学vs.古典派会計学

売上値引という「隠れ変動費」に気づかぬ
財務会計システムの愚かしさ


数多くの企業を訪ね歩いて、管理会計システムが描くCVP分析(損益分岐点分析)や、原価計算システムが描く公式法変動予算を見聞きするたびに、「『理論上の瑕疵』を理解せずに、なんとまぁ、愚かなことをしているものだ」と、笑わせてもらっています。 今回は、「理論上の瑕疵」に輪を加えた愚かさというべきか、「運用上の瑕疵」というものを、以下で紹介しましょう。
原価計算システムにしろ、管理会計システムにしろ、コストを固定費と変動費とに分解するのは、誰もが知っている話。 原価計算システムや管理会計システムを合わせたものを、ここでは「財務会計システム」と呼ぶことにします。 また、コストを固定費と変動費とに分解する作業を、「固変(こへん)分解」と呼びます。 現代の財務会計システムでは、上場企業から中堅中小企業に至るまで、そのすべてで「勘定科目法による固変分解」が採用されています。
中小企業庁のウェブサイト『5.4 直接原価方式による損益計算書の作成・計算手順』では、勘定科目の例が示されています。 これに基づいて固定費と変動費とを分けるのが、「勘定科目法による固変分解」です。 企業会計審議会『原価計算基準』でも、次の【資料1】で示すように、「勘定科目法による固変分解」が指示されています。
【資料1】

間接費を固定費と変動費とに分類するためには、間接費要素に関する各費目を調査し、費目によって固定費又は変動費のいずれかに分類する。

原価計算基準 三三(四)1』

「勘定科目法による固変分解」はかなりアバウトな方法であり、財務会計システムで実際に採用されているのは、費目別精査法と呼ばれるものです。 費目別精査法は、科目比率法または科目按分(案分)法と呼ばれます。 費目別精査法というのは、個々の費用項目ごとに、固定費と変動費の割合を細かく決める方法です。
固変分解にはもう一つ、「最小自乗法による固変分解」というのがあります。 別名、「線形回帰分析による固変分解」とも呼ばれます。 現代の財務会計システムで、「最小自乗法(線型回帰分析)による固変分解」を採用しているものはほとんどありません。 なぜか。 「最小自乗法による固変分解」で、コストを固定費と変動費とに分解すると、固定費がマイナスに転落するケースが頻出するからです。 固定費(経済学でいう「固定費用」)は、なぜ、マイナスになるのか。 その問題を認識し、改善する方法を提起した会計学者や経済学者、そして実務家は、いまだ一人も存在しません。 情けない話です。 いえ、ただ一つ、次の【資料2】に示す受賞論文があります。
【資料2】
上記の受賞論文では、現代の会計理論や財務会計システムには、「理論上の瑕疵」があることを、指数対数と微分積分を用いて論証し、その解決方法を提示しています。
おっと、今回は、「理論上の瑕疵」ではなく、「運用上の瑕疵」を紹介するのでした。 中小企業庁5.4 直接原価方式による損益計算書の作成・計算手順』や、企業会計審議会『原価計算基準 三三(四)1』を、3回くらい繰り返し読んでいると、ある重要な勘定科目が抜け落ちていることに気づきます。 答えは、「売上値引」です。 ビジネスの世界では、個人であろうと企業であろうと、こちらの言い値(定価)で、自らの商品やサービスを売り尽くせることはありません。 売上高を伸ばそうとすればするほど、「定価割れ」を余儀なくされます。 これが、売上値引です。
売上値引の本質は、変動費です。 売上高を伸ばそうとすればするほど、それに比例して、値引き額は拡大するのですから。 ところが、現代の会計制度では、売上値引は、売上高から直接控除(簿外処理)する扱いになっています。 つまり、売上値引は、「隠れ変動費」になっているのです。 同じ「隠れ変動費」としては、仕入値引があります。 仕入値引は、材料費や外注費から直接控除されるものですが、控除後の材料費や外注費は、固変分解の対象科目なので、売上値引のような「隠れ変動費」になりません。 それに対して、売上値引は簿外処理され、完璧な「隠れ変動費」となります。
中小企業庁企業会計審議会も売上値引という「隠れ変動費」には言及していないし、「オカミの仰せのままに」と権威主義の前で土下座している財務会計システムも、売上値引という「隠れ変動費」の存在に気づいていない。 その結果、どうなるか。 勘定科目法や費目別精査法などによる固変分解を採用している財務会計システムは、出鱈目な数値を、今日もどこかの上場企業などで算出しているのであります。
そうりゃ、そうでしょう。 例えば、すべての財務会計システムで搭載されているCVP分析(損益分岐点分析)の図表を、【資料3】に示します。
【資料3】CVP分析(損益分岐点分析)
画像
上記【資料3】の図表において、左端の縦軸はコストを表わしており、これには「理論上の瑕疵」があることを、【資料2】の受賞論文で論証しました。 上記【資料3】の図表において、下端にある横軸は売上高を表わしています。 これは、売上値引が直接控除(簿外処理)されており、【資料3】の縦軸にあるコストに反映されません。 なお、上記【資料3】にある右上がりの直線OAを消去すると、【資料1】の公式法変動予算になります。 この公式法変動予算も、勘定科目法まはた費目別精査法による固変分解に基づいています。 つまり、勘定科目法または費目別精査法による固変分解では、変動費の主たる地位を占める売上値引が、隠蔽されてしまっているのです。 次の【資料4】で、まとめておきましょう。
【資料4】
  • 理論上の瑕疵
      企業のコスト構造は「日々複利の連鎖構造を内蔵している」にも関わらず、それを単利計算構造で解き明かそうとすること。
      → 【資料2】の受賞論文で証明。
  • 運用上の瑕疵
      売上値引きという「隠れ変動費」に気づかずに、勘定科目法や費目別精査法による固変分解を行なうこと。
上記【資料4】に示す2つの瑕疵を考慮すると、勘定科目法や費目別精査法による固変分解を採用している原価計算システムや管理会計システムは、見事に破綻していることがわかります。 上記【資料3】の縦軸も横軸も破綻しているのだから、これはもう、笑うしかない。
上場企業諸君。 中小企業庁5.4 直接原価方式による損益計算書の作成・計算手順』や、企業会計審議会『原価計算基準』を、4回以上は読み直したほうがいいですよ。 理論面でも運用面でも破綻している固定費や限界利益を睨みながら、原価計算やコスト管理を扱うなんて、あなたがたには、上場企業としてのプライドというものがないのかな。
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