公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座

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公認会計士高田直芳:会計や監査で統計学を活用するために必要なこと

タカダ式原価計算&管理会計システム タカダ式操業度分析vs.古典派会計学 すべてを表示

会計や監査で、統計学を活用するために必要なこと

現在、いくつかの上場企業において、原価計算コンサルティング管理会計コンサルティングを手掛けています。 その過程で、厄介な存在になっているのが、予実差異分析。
コストを例に取ると、実績が予算を上回れば、その差額を不利差異(借方差異)といいます。 実績が予算を下回れば、その差額を有利差異(貸方差異)といいます。
第1の問題点として、予実差異分析で絶対に扱いを誤ってはならないのが、有利差異。
コストの実績が予算を下回ったからといって、「よかった、よかった」と評価してはならない。 有利差異といえども、その金額が大きい場合には、「なぜ、予算と乖離したのか」を究明しないといけません。 つまり、予実差異分析で重要なのは、予算と実績との差額を「絶対値」で評価することにあります。
ところが、本当に、バカ正直に「絶対値」で評価しようとすると、大きな誤りを犯します。 なぜか。 その理由は、次の関連ブログで説明したように、現代の会計理論やコスト管理には、正規分布曲線や中心極限定理といったものに対する理解が皆無だからです。
【資料1:関連ブログ】
有利差異と不利差異を絶対値に置き換えて、それで正規分布曲線を描こうだなんて、統計学をナメるにもほどがある。 このような体たらくでは、次の関連ブログで説明している「確率微分方程式」や「会計物理学の世界」などを理解できる者も皆無というべきか。
【資料2:関連ブログ】
第2の問題点としては、予算と実績の差額そのものの「中味」です。 これを解明するのは、ほとんど不可能に近いものがあります。 四半期ごとに区切っても、80日間くらいのものが積み上がるのですから。 そこで用いるのが、統計学の「標準偏差」です。 ビッグデータともいうべき予実差異の偏差をかき集めると、おのずと「おや?」というものが浮かび上がります。
ところが、ここで第3の問題点が立ちはだかります。 現代の財務会計論(原価計算制度を含む)や、管理会計論では、実績値を、1次関数の単利計算構造で捉えていることです。 原価計算制度は、予定配賦率や標準配賦率という語で代表されるように、その基本は単利計算構造にあります。 管理会計論は、CVP分析(損益分岐点分析)で代表されるように、その基本はこれまた、単利計算構造にあります。
現実の企業活動は、単利計算構造になっているのでしょうか。 現場の最前線で、汗と油にまみれているとき、私(高田直芳)は【資料3】に示す事実を見出しました。
【資料3】
  • 製造業に勤務する人であれば、工場内の各工程を観察してみてください。
    • 工場内に無数に存在する工程に、材料費・労務費・経費を次々と投入していくと、無限回数の振り替え計算が行なわれていることがわかります。
    • 材料・仕掛品・製品などが入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 流通業に勤務する人であれば、店舗に置かれた商品を観察してみてください。
    • 日々仕入れた商品は、棚に補充したそばから、消費者へ次々と販売されていきます。
    • 膨大な商品が入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 財務や経理に携われる人であれば、手元にある帳簿を観察してみてください。
    • 上場企業のような大規模組織になると、帳簿に記帳される仕訳の数は、1日で数百行や数千行にものぼります。
    • 振り替えの仕訳を含めれば、年間では数億行や数十億行の仕訳の数になります。
    • 入金と出金を無限に繰り返すその様は、無限連鎖の複利計算を行なっていることと同じです。
つまり、企業のコスト構造の本質は、複利計算構造にあることがわかります。 企業活動の本質が複利計算構造にあることを、指数関数・対数関数に微分積分を適用することによって証明したものが、次の受賞論文です。
【資料4】
次の【資料5】は、上記【資料4】の受賞論文に掲載している図表です。
【資料5】タカダ式操業度分析
画像
実績値を、上記【資料5】の複利曲線ABCDEに展開して、その標準偏差を計算すると、予実差異が、ぴたぴたと当てはまります。
上記【資料4】の受賞論文を公表する前までは、私(高田直芳)も、財務会計論(予定配賦率・標準配賦率)や管理会計論(CVP分析)の通説に倣い、単利計算構造の「直線」上で、標準偏差を求めていました。 しかし、実務感覚と合わない予実差異分析に、長年、悩まされ続けました。 克服するには、どうしたらいいか。 企業活動は「複利曲線」上を歩むのだ、ということを理解するのが、統計学を、会計や監査の場で活かすための第一歩です。
現代の財務会計論(予定配賦率・標準配賦率)や管理会計論(CVP分析)を操る人たちが、100万人いるとするならば、そのうちの99万9999人は、企業活動の本質が「複利計算構造」にあることを理解していない。 企業活動の本質を「単利計算構造」で捉えることは、「理論上の瑕疵」と「運用上の瑕疵」があることを理解していない。
【資料6】
上記【資料6】の瑕疵を放置したまま、99万9999人は今日も、単利計算構造の「直線」上を、えっちらおっちらと歩む。 これだけの人数がいれば、10人や20人くらいは、「これって、直線ではなく、複利曲線ではないか?」と気づきそうなものだが、誰一人として気づかなかったとは情けない。 会計の世界が、いかに権威主義に毒されているかが、よくわかります。 そんな彼ら(彼女ら)が、にわか仕込みの統計学ビッグデータ分析を用いたところで、予実差異は「あっかんべー」をして逃げていくだけだ。