公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座

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公認会計士高田直芳:決算番付のランキングに何を期待するか


決算番付のランキングに
何を期待するか


2016年5月25日付の日本経済新聞「決算番付2016(2)」では、増収率と減収率のランキング表が掲載されていました。 翌26日の「決算番付2016(3)」では、増益率のランキング表が掲載されていました。
伝統的な管理会計や経営分析に毒されている人たちは、増収率は「善」で、減収率は「悪」と考えていることでしょう。
つまり、増収は必ず「増益」と結びつき、減収は必ず「減益」に結びつくと。 また、増益の企業は必ず「増収」なのだと。
その根拠となるのが、次の【資料1】です。
【資料1】CVP図表(損益分岐点図表)
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上記【資料1】を、CVP図表(損益分岐点図表)といい、管理会計や経営分析などの世界で、100年以上もの間、絶対的通説として君臨してきた図表です。
上記【資料1】において、実際の売上高が損益分岐点売上高(点F)を超えてどんどん増えると、右端にある当期純利益(線分AC)は無限に拡大していきます。 これが増収増益です。 その反対に、実際の売上高が横軸上の点Eから左へ移動すると、当期純利益(線分AC)はどんどん減っていきます。 これが減収減益です。 浅はかな会計知しか持っていない人たちは、上記【資料1】は絶対に正しいのだと信じて疑わない。 増収ランキングに掲載された企業は、必ず増益なのだと信じて疑わない。 増益ランキングに掲載された企業は、必ず増収なのだと信じて疑わない。
ところが現実には、増収になっても減益となる企業が存在するし、減収になっても増益となる企業が存在します。 厄介なのは、増収減益や減収増益が、【資料1】では説明できないことです。 「CVP分析は絶対に正しいのだ」と信じて疑わぬ人たちは、増収減益や減収増益といった現象を、意図的に避けて通る。 これを「管理会計の粉飾」といいます。
そうした矛盾やら粉飾やらを乗り越えるために著わしたのが、次の受賞論文です。
【資料2】
上記【資料2】の受賞論文5ページ〔図表6〕に、若干の修正を加えたものを、次の【資料3】に掲げます。
【資料3】タカダ式操業度分析
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上記【資料1】で描かれている線分BPCは、「直線形または直線型」です。 預金の利息計算でいえば、単利計算構造です。 それに対し、【資料3】で描かれている曲線ABCDEは、「曲線形または曲線型」です。 この曲線形(曲線型)の正体は、複利曲線です。 すなわち、預金の利息計算でいえば、複利計算構造です。 企業活動を「日々複利の連鎖構造」で解き明かそうというのが、【資料3】です。
上記【資料3】において、「A1 → B1」へと増収になると、利益は「線分A1A2 → 線分B1B2」へと増益になります。 これが増収増益です。 その逆は、減収減益になります。 同じ【資料3】において、「D1 → E1」へと増収になると、利益は「線分D1D2 → 線分E1E2」へと減益になります。 これが増収減益です。 その逆は、減収増益になります。 上記【資料1】のCVP図表(損益分岐点図表)では解き明かせなかった「増収減益・減収増益」が、【資料3】では見事に解き明かせることになります。
現在の会計システムでは、そのすべてで、【資料1】のCVP図表(損益分岐点図表)が搭載されています。 「見える化」などと自慢しているシステムばかりですが、その実態は「増収増益・減収減益」の2面しか映し出さず、「増収減益・減収増益」の4面までは映し出してはいないのです。 管理会計システムや原価計算システムを名乗るものが、いかに出鱈目なシステムであるかが、よくわかります。 それをありがたがって利用しているあなたがたは、現実の半分のものしか見えていない、ということです。
2016年5月25日付の日本経済新聞では、増収の企業と減収の企業とが掲載されていました。 しかし、増収にランキングされている企業の中には、減益になっている企業が存在します。 また、減収にランキングされている企業の中には、増益になっている企業が存在します。 例えば、2016年5月25日付の日本経済新聞の減収ランキングの9位に掲載されていたファナック。 同社については、【資料2】の受賞論文12ページ〔図表15〕で、減収が増益に結びつくことを論証しています。
2016年5月26日付の日本経済新聞では、増益率の高い企業が掲載されていました。 そのすべてが、増収とセットになっていると考えるのは、絶対的通説に毒されている証拠。 減収でありながら、増益になっている企業が、2016年5月26日付のランキング表に掲載されています。
では、増益の最大点はどこか。 それを満たすところを、経済学では「利潤最大化条件」といいます。 「MR(限界収入)=MC(限界費用)」という式で表わされます。 残念なのは、世界中で経済学者やエコノミストを名乗るのは100万人以上もいるのですが、具体的な企業データを用いて、利潤最大化条件を満たす「実務解」を示した者が一人もいないことです。 日本だけでなく、アメリカなどの学術論文や専門書を探しても、「利潤最大化条件の実務解」を示したものは、1本も1冊もありません。 「机上の空論」を振り回す経済学に対し、具体的な企業データを用いて「利潤最大化条件の実務解」を求めようとするのが、【資料2】にある最大操業度点Dです。 この点Dで「MR=MC」が成立し、線分GDが最大利潤を表わします。 この線分GDを、「タカダライン」と呼びます。 最大操業度点Dから垂線を下ろした点Kが、企業の利潤を最大化する売上高(最大操業度売上高)になります。
企業は、営利を追求してこその存在(商法501条)。 儲かってこそ、社会的責任を果たすことができます。 実績のない者の話など、誰も耳を傾けてはくれません。 営利とは、利潤の最大化を目指すこと。 次の日経記事でも明確に述べられています。

英国の産業革命に端を発した近代資本主義は高度に発達した産業技術により可能となった。以来、産業資本主義から金融資本主義へと内容は変化しつつも、核となる最大利潤追求の営利欲は制度の変遷と共に巨大化の一途をたどっている。

日本経済新聞「大機小機」2016年5月26日
さて、メディアは、なぜ、ランキング表を掲載するのか。 読者は、なぜ、増収・増益のランキング表や、ROE・D/Eレシオ・自己資本比率などのランキング表に群がるのか。 人はそこに「模範解答」を見つけようとするからでしょう。 幼少の頃から、与えられた問題には必ず「模範解答があるのだ」と教え込まれてきたからです。
ということを考えているときに、次の一文を見つけました。

私はパッケージを破ってタバコを一本抜き取ると、フィルターをちぎり取って火をつけた。二人は、それを不思議な儀式でも見物するような眼つきで見ていた。タバコにはフィルターが、写真にはカラーが、家や車にはクーラーがついているのが普通だと思っている世代なのだ。問題があれば、必ず模範解答がついているとも思っている。

原りょう『私が殺した少女』
引用した小説は、直木賞受賞作。 同氏の小説については、本ブログ「『夜は甦る』原りょう」でも紹介しました。
100年以上もの間、管理会計原価計算・経営分析の世界では、【資料1】のCVP図表(損益分岐点図表)に基礎を置いた絶対的通説が君臨してきました。 そして、それを信じて疑わぬ者たちが、損益分岐点売上高・限界利益などの模範解答に群がってきました。 創造と革新を欠いた人間というのは、現実の半分も見えていない。
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