公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座

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公認会計士高田直芳:外資系コンサルティングファームを人差し指一本で投げ飛ばす

先日、某上場メーカーから問い合わせがありました。 似たような問合せが、私(高田直芳)のところへ、しばしば寄せられます。 その共通項を以下で紹介しましょう。
【資料1】
  1. 弊社(某上場メーカー)では、コンサルティングファームの指導で、原価計算システム(管理会計システム)を導入しました。

  2. 導入当初は、原価差異(予算と実績の差額)が異常に大きい値として現われました。

  3. その原因は「操作が不慣れなせいだ」と、コンサルティングファームから説明されて、当時は引き下がりました。

  4. ところが、何年経過しても(現在でも)、原価差異が異常に大きな値となって現われ続けます。

  5. 「これはシステムバグではないか」とコンサルティングファームへ問い合わせたところ、コンサルティングファームからは次の回答がありました。

    1. コンサルティングファームが提供する原価計算システム(管理会計システム)の理論は、企業会計審議会『原価計算基準』に従ったものである。

    2. コンサルティングファームが提供する原価計算システム(管理会計システム)は、数多くの導入実績がある。

    3. 理論面でも実績面でも、コンサルティングファームが提供する原価計算システム(管理会計システム)に、誤りはない。

    4. 原価差異が異常に大きな値となって現われる原因は、貴社(上場メーカー)の会計処理そのものに誤りがあるからである。

  6. しかし、弊社(上場メーカー)は、大手監査法人の監査を受けており、自社の会計処理に誤りがあるとは考えられません。

さぁて、どこに問題が隠されているのでしょうか。 結論を簡単に述べると、これはアンデルセンの代表作『裸の王様』と同じ構造です。 「愚か者には、この衣装を見ることができません」と主張する仕立屋が、コンサルティングファームです。 そのコンサルティングファームへ高額の報酬を支払い、愚か者呼ばわりされたくない上場メーカー(王様とその家来)は、原価計算システム(管理会計システム)をあれこれと操作しながらも、改善策が見つからず、自己嫌悪に陥ります。
問題の本質は、上記【資料1】 2. と 4. にある「原価差異」の計算方法にあります。 原価差異は、次の1.と2.の差額から求められます。
【資料2】
  1. 予算 …… 予定原価・標準原価
  2. 実績 …… 実際原価・実績原価
まず、上記【資料2】2.について見てみましょう。 製造業に限らず、流通業や、本社の財務部門・経理部門を観察すると、次の事実を観察することができます。
【資料3】
  • 製造業に勤務する人であれば、工場内の各工程を観察してみてください。
    • 工場内に無数に存在する工程に、材料費・労務費・経費を次々と投入していくと、無限回数の振り替え計算が行なわれていることがわかります。
    • 材料・仕掛品・製品などが入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 流通業に勤務する人であれば、店舗に置かれた商品を観察してみてください。
    • 日々仕入れた商品は、棚に補充したそばから、消費者へ次々と販売されていきます。
    • 膨大な商品が入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 財務や経理に携われる人であれば、手元にある帳簿を観察してみてください。
    • 上場企業のような大規模組織になると、帳簿に記帳される仕訳の数は、1日で数百行や数千行にものぼります。
    • 振り替えの仕訳を含めれば、年間では数億行や数十億行の仕訳の数になります。
    • 入金と出金を無限に繰り返すその様は、無限連鎖の複利計算を行なっていることと同じです。
つまり、企業のコスト構造は、「無限の複利計算構造を内蔵している」ことがわかります。
では、上記【資料2】1.の予定原価や標準原価は、どうなっているか。 その理論的な根拠となる、企業会計審議会『原価計算基準』を3回くらい読み返すと、この会計基準は、1次関数の単利計算構造で構築されていることがわかります。 上記【資料2】以外でも、以下のものはすべて、単利計算構造に基づいています。
【資料4】
単利計算構造のモノサシ(予定原価・標準原価)で、複利計算構造のコスト(実際原価・実績原価)を測定したところで、納得のいく実務解(原価差異)が得られるわけがないのです。 これを「理論上の瑕疵(かし)」といいます。 複利で運用した預金利息を、単利計算構造の1次関数で検算できるわけがない。 そんなこと、『裸の王様』に登場する子供でもわかる話です。 ところが、現在の原価計算システム(管理会計システム)には「理論上の瑕疵」があることを、コンサルティングファームも、上場メーカーも理解していないのです。
『裸の王様』に登場する仕立屋は、「悪意あるペテン師」です。 仕立屋は、自分たちがペテン師であることを知っている。 ペテン師に悪意がある場合は、まだ救いようがあります。 「こんなことをしていては駄目だよ」と指摘されれば、彼らはシッポを巻いて逃げていきますから。 だから、次の受賞論文に記述されていることを、王様もペテン師も、多少なりとも理解できるはずです。
【資料5】
上記の受賞論文などにある方程式を、公式集としてまとめたのが、次の関連ブログです。
【資料6:関連ブログ】
その日その日を平々凡々と暮らしている人たちには、理解不能な公式集です。
始末に負えないのが、自分たちが上場メーカーに提供している原価計算システム(管理会計システム)に、「理論上の瑕疵」があるとは自覚していない「善意のコンサルティングファーム」です。 特に、外資コンサルティングファームともなると、ニッポン企業を見下しているところがあるので、処置なしです。 「オレハ、オマエニ用事ガアルカラ、オレノトコロニ、訪ネニコイ」というのは、(外資系に限らず)コンサルティングファームに共通する態度のようです。
童話では、「愚か者には見えない衣装」を着せられて、うろたえる王様ですが、家来には見える衣装が、「朕には見えないぞ」とは言えず、王様もそして家来も右往左往することになります。 原価計算システム(管理会計システム)を利用する上場メーカーも、同様に右往左往します。 ニッポン企業は総じて「外資系」というブランドに弱く、へいこらへいこらするので、どの上場メーカーも声を大にして反論する勇気がない。 「他社はうまく運用できているのだろう。自分たちの会社だけが駄目なんだな」と自己嫌悪に陥るのです。
悪いのは、妙ちくりんなプライドに縛られている上場メーカーのほうなのか。 いえいえ、コンサルティング会社にも上場メーカーにも、共通する素因があります。
【資料6】日本経済新聞「大機小機/思考停止が悪を生む」2015年6月11日

自分を持たず思考や判断の基準を他に依存する真面目な組織人で、組織の方針に忠実に従うことで評価を得、責任あるポジションに就きながらも行いの是非も問わず「思考停止した人間」が無自覚な悪をなす。

企業活動は複利計算構造を内蔵するにもかかわらず、それを単利計算構造でゴリ押ししようとするのは、思考停止もいいところ。 そんな連中、たとえ10万人が束になってかかってきても、私なら人差し指一本で投げ飛ばします。 いくら無自覚でも、素っ裸で転べば、自らの過ちに気づくでしょう。
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