公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座

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公認会計士高田直芳:『文系のための数学教室』小島寛之

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『文系のための数学教室』
小島寛之


上掲の書籍では、「数学嫌いの人」に対して、単純に嫌いになるのではなく、「下手の横好き」というか「現代数学の横好き」を推奨しています。
随所に、きらりとヒカル言葉が散りばめられていて、ハッとさせられます。
【引用1】小島寛之『文系のための数学教室』

「お前の話は論理的じゃない」などと相手をなじる人は、往々にして、自分の望む結論でない理屈に対してそう言いがちで、こういう人のほうこそ論理的でないことがままあります。

上司の叱責に対して、言葉を呑み込む部下の気持ちを代弁か。
【引用2】小島寛之『文系のための数学教室』

「君のことを好きじゃないわけではない」と言われて、「そうかわたしのことを好きなのか」と単純に喜ぶ人はあまりいないでしょう。

二重否定に関して、「数理論理」と「日常論理」の使い分けに、思わずニヤリ。
【引用3】小島寛之『文系のための数学教室』

作家の曾野綾子氏が、ゆとり教育を推進する文部省(当時)の答申で、「生きてきて数学が役に立ったのは、曲がっていくよりまっすぐに行ったほうが近い、といことだけだが、そんなことならイヌ・ネコでも知っている」と発言して、数学教育界に衝撃を与えました。

これって「三角形の2辺の和は、残りの1辺よりも長い」という証明だったのですね。 民主主義と数学の相性の悪さについて述べられています。
【引用4】小島寛之『文系のための数学教室』

民主主義というものは場面によってはぞっとするような結果を引き出しかねない危うさを持っています。

経済政策を民主主義で決めることは、喩えてみるなら、ある重病の患者の治療方針を、専門の知見を持った少数の医師ではなく、大多数の無知識の市民が投票で決めるようなもので、深刻な誤謬を孕んでいる可能性もあります。

英国のEU離脱を暗示していて、驚きました。
様々な経済学書を読んでいるとき、「企業行動の理論」と「消費者行動の理論」とは、どうして異なるのだろうと、常々疑問に思っていました。 私の浅学を、見事に解決してくれる話がありました。
【引用5】小島寛之『文系のための数学教室』

経済学では、人々の経済行動を「利益追求」という観点から分析します。

たとえば、企業について考えるときには、このことは簡単明瞭です。企業の目的を、「利潤最大化」と仮定するのです。

(略)ところが、消費者の行動となると一筋縄ではいきません。なぜなら、消費者は「人間」だからです。

(略)そんなわけで、経済学が人間の消費行動を分析する方法を完成するには、けっこう時間がかかりました。

定番となる理論が完成したのは二十世紀になってからのことでした。それは「選好理論」と呼ばれる方法です。

上記の文章に続いて、消費者行動の選好理論を野放図に拡張するのは危険であることが指摘されています。 たとえば、人を殺すことの快楽と、裁きを受ける刑罰とを比較して、殺人の可否を決定する、といった「選考」になりかねないからです。 数学を学ぶにあたっての、心構えを説いた1冊だといえます。
1997年にノーベル経済学賞を受賞した「ブラック=ショールズ方程式」について、面白いエピソードが紹介されていました。
【引用6】小島寛之『文系のための数学教室』

ブラック=ショールズ公式が発表された1973年の翌年には、ある会社がこの公式をプログラムとして搭載したポケット電卓を売り出しました。

ショールズが「特許料をくれ」とかけ合うと「公表されたアイデアだからその必要はない」とすげなく、「それならせめてその電卓をくれないか」と要求を大幅に引き下げると「自分で買ってくれ」と言われたそうです。

これはなかなか示唆に富む、というか、苦々しいエピソードです。 抜け目ないハイエナたちに食いものにされるくらいなら、アイデアを死蔵させてしまったほうがいい、と考える人がいるかもしれません。 次の関連ブログでは、「タカダ式確率微分方程式」の存在を示しました。
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知的財産権を尊重しないヤカラが跋扈する限り、新たな知的財産は、そのまま埋もれさせてしまうしかないのでしょう。