公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座

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公認会計士高田直芳:正規分布曲線や中心極限定理を扱えないコスト管理のお粗末

上掲書165ページに、次の文章があります。
【資料1】小島 寛之『世界を読みとく数学入門』

ものごとの観測や計測には、誤差というものがつきまとう。(略)しかし、その観測誤差に法則が潜んでいることを突き止めるには、数千年の歴史が必要だった。

(略)最初にそれに感づいたのは再びガリレオ・ガリレイである。

ガリレオは、観測値が真の値に対して、左右対称に分布すること。真の値の近くが非常に多く観測され、遠い値が観測されることは非常に希であること。その2つの法則を記録している。

上記【資料1】にある「法則」を関数として表わしたものが、「ガウス分布」または「正規分布」と呼ばれるものであり、同書166ページ以降で説明されています。 ガリレオが発見した「誤差」の考えかたを、現代の原価計算制度(コスト管理を含みます)に応用して、以下の話を進めます。
企業会計審議会が制定した会計基準原価計算基準』では、その冒頭で「真実の原価」を算定表示することが目的の一つであると、宣言しています。 上記【資料1】にある「真の値」と同じものです。 この『原価計算基準』に従って、えっちらおっちらと計算して、仮に「真実の原価」に到達したとしましょう。 企業活動で実際に発生する原価(実際原価または実績原価)が、「真実の原価」とピタリと一致するのであれば、原価差異(原価差額)は、常にゼロとなります。 ところが、現実はそううまくいかないことから、企業会計審議会『原価計算基準』の後半では、原価差異の種類を事細かに定めているわけです。
原価差異(原価差額)は【資料1】にある「誤差」ですから、原価差異は正規分布という法則に従うのが、「正しい原価計算」であり「正しいコスト管理」であるはずです。 ところが、です。 上場企業から中堅中小企業に至るまで、すべての企業で算定されている原価差異は「正規分布になっていない」と推測しています。 その理由を説明するために、まず、「真実の原価」というのは「あるべき原価」であり、実務上は、予定原価(または標準原価)として具体化されるものであることを紹介しておきます。 この予定原価(標準原価)は、上場企業から中堅中小企業に至るまで、1次関数で計算されています。 預金の利息計算でいえば、単利計算のこと。
例えば「日歩5銭」で、単利計算を行なってみましょう。 日歩(ひぶ)というのは、100円に対する、1日あたりの利息のこと。 日歩5銭は、日利で0.05%ですから、年利に換算すると、18.25%(=0.05%×365日)になります。 材料費・労務費・経費の合計を1億円として、これを元金と見立てた場合、1年後の元利合計額は、次の【資料2】のように計算されます。
【資料2】
    1億円×(100%+18.25%)=118,250,000円
実際原価(実績原価)のほうも1次関数の単利計算で集計されているのであれば、予定原価(標準原価)と実際原価(実績原価)の差である原価差異は正規分布するはずです。 ところが、です。 システムエンジニアたちが寄ってたかって原価計算システムや管理会計システムをいじくり回しても、原価差異が正規分布することはありません。 なぜか。 その理由を解明するために、現実の企業活動を観察してみましょう。
現実の企業活動は、次の【資料3】に示す現象になっていることを観察することができます。
【資料3】
  • 製造業に勤務する人であれば、工場内の各工程を観察してみてください。
    • 工場内に無数に存在する工程に、材料費・労務費・経費を次々と投入していくと、無限回数の振り替え計算が行なわれていることがわかります。
    • 材料・仕掛品・製品などが入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 流通業に勤務する人であれば、店舗に置かれた商品を観察してみてください。
    • 日々仕入れた商品は、棚に補充したそばから、消費者へ次々と販売されていきます。
    • 膨大な商品が入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 財務や経理に携われる人であれば、手元にある帳簿を観察してみてください。
    • 上場企業のような大規模組織になると、帳簿に記帳される仕訳の数は、1日で数百行や数千行にものぼります。
    • 振り替えの仕訳を含めれば、年間では数億行や数十億行の仕訳の数になります。
    • 入金と出金を無限に繰り返すその様は、無限連鎖の複利計算を行なっていることと同じです。
つまり、企業のコスト構造の本質は、複利計算構造にあることがわかります。
上記【資料3】の考えかたに従って、1億円を、日利0.05%の複利で計算してみます。 次の【資料4】になります。
【資料4】
    1億円×(100%+0.05%)365日=120,015,941円
上記【資料2】の単利計算で求めた予定原価(標準原価)は、118,250,000円でした。 上記【資料4】の複利計算で求めた実際原価(実績原価)は、120,015,941円です。 したがって、両者の差である原価差異(原価差額)は、次の【資料5】になります。
【資料5】
    予定原価(標準原価)-実際原価(実績原価)
      =118,250,000円-120,015,941円
      =▲1,765,941円(不利差異)
上記【資料5】で求めた誤差には、どのような意味があるのでしょうか。
「単利の予定原価」と「単利の実際原価」の比較であれば、その誤差(原価差異)は正規分布するはずです。 「複利の予定原価」と「複利の実際原価」の比較であれば、その誤差(原価差異)は正規分布するはずです。 ところが、企業会計審議会『原価計算基準』は、「単利の予定原価」と「複利の実際原価」を比較して、その誤差(原価差異)を求める構成になっています。 上記【資料5】が、まさにその計算結果です。 複利運用された預金利息を、単利計算の式で検算して、その誤差にどのような意味があるのか。 その誤差は、正規分布するのか。 このような計算方法は「理論上の瑕疵」を抱えたものであり、瑕疵を抱えたデータで、正規分布曲線など描けるわけがないのです。
以上の問題を解決したのが、次の受賞論文です。
【資料6】
企業活動を「日々複利の無限連鎖構造」と看破した著作物は【資料6】の受賞論文だけであり、日本だけでなく、欧米にも存在しない理論であることを申し添えておきます。 また、税金を原資とした補助金助成金などは1円ももらい受けずに、【資料6】の受賞論文を完成させたことも申し添えます。
上記【資料6】の受賞論文の内容が難解な場合は、次の拙著343ページを参照してください。 上掲書343ページにあるタカダ式変動予算によれば、「複利の予定原価」と「複利の実際原価」の誤差(原価差異)から、一定の法則(正規分布)が導かれます。 なぜか。 タカダ式変動予算のコスト曲線は、「自然対数の底e」を用いた指数関数で描かれるからです。 一方、正規分布曲線も、「自然対数の底e」を用いた正規分布関数で描かれるからです。 同じ「自然対数の底e」という関数形を用いることが、正規分布という「法則」を生み出す基礎となります。
上記【資料6】の受賞論文や、拙著『高田直芳の実践会計講座 原価計算』に掲載しているタカダ式変動予算を使って、いま述べた「法則」の仕組みを説明しましょう。
【資料7】タカダ式変動予算
画像
上記【資料7】にある予算許容曲線(曲線ABC)は、「自然対数の底e」を用いた複利曲線です。 この予算許容曲線(曲線ABC)と予定配賦直線(直線OBD)とに挟まれた「遊休差異」と「過重差異」はともに、不利差異(借方差異)となります。 企業会計審議会『原価計算基準』が定める原価差異のように、不利差異(借方差異)になったり、有利差異(貸方差異)になったりすることはありません。 まさか、『原価計算基準』に従って算出された不利差異と有利差異を絶対値でくくって、正規分布させようだなんて、統計学を愚弄するにもほどがある。 上記【資料7】のタカダ式変動予算では、原価差異(遊休差異&過重差異)が常に不利差異として発生することから、これが「誤差」となり、予算操業度点Bを中心として正規分布曲線が描かれることになります。 そして、上記【資料7】にある予算操業度点B(垂線BE)で、統計学で有名な「中心極限定理」が成立します。
数年前から統計学がブームとなり、原価計算システムや管理会計システムに、確率・統計のノウハウを盛り込むことがブームになっています。 原価計算システムや管理会計システムの構築に携わるシステムエンジニア(SE)が、この日本にどれだけいるのかは知りません。 ただ、確実にいえるのは、SEたちが構築する原価計算システムや管理会計システムは、必ず頓挫します。 原因の1つめは、そのシステムは、企業会計審議会『原価計算基準』に準拠しているが故に、1次関数を基礎に置いてプログラミングされている点です。 原因の2つめは、【資料6】の受賞論文で述べた「無限の複利計算構造」という発想がない点です。 「自然対数の底e」を用いた関数ではないということ。 数千人・数万人のSEが束になってかかろうとも、異なる関数形(1次関数vs.自然対数)から弾き出される誤差(原価差異)に、一定の法則(正規分布)など見出せるわけがないのです。
原価計算システムや管理会計システムを得意気になって開発している者たちに問う。

  • 上記【資料5】で算出された▲1,765,941円という値に、どのような根拠があるのか。

  • 不利差異と有利差異の組み合わせで、正規分布曲線を描けるのか。

  • そこには中心極限定理が成立するのか。

原価差異分析に「正規分布中心極限定理など必要ない」と主張する人がいるとしたら、その人が取り組む原価計算管理会計は、極めてお粗末なものだといえます。
ときどき、上場企業やコンサルティングファームから、「原価差異の異常値が、いつまで経っても解消されないのは、何故か」と問われることがあります。 ものごとの本質を自ら追求することを放棄し、他者の模倣へと安易に流れていくSEやコンサルティングファームに、原価計算管理会計を扱う資格はない。
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