公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座

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公認会計士高田直芳:会計知や税知のない人は社会保険のカラクリに騙される

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「会計知」や「税知」のない人は
社会保険のカラクリに騙される


サラリーマンがサラリーマンたる所以は、自分の給料から「何が」控除されているかを把握していないことです。
「オレは仕事に専念するだけだ。それを上司が正当に評価して、給与に反映されているはずだ」と思い込んでいる人が大半でしょう。
だから、次の関連ブログで説明した源泉徴収票を理解できているサラリーマンは、皆無に近いと予想しています。
【関連ブログ】
源泉徴収票さえ理解できていないのだから、社会保険の裏に隠されたカラクリを理解している人も皆無といえるでしょう。
現在、健康保険料と厚生年金保険料は、企業と社員とで折半して(50%ずつ)負担する仕組みになっています。 例えば、平成28年の東京都の場合で、月給を20万円としたとき、健康保険料は23,080円であり、この半額(11,540円)を企業と社員とで負担しています。 厚生年金保険料であれば36,364円であり、この半額(18,182円)を企業と社員とで負担しています。 「企業と折半なら、しょうがないか」と納得しているサラリーマンがいるとしたら、随分と間抜けな話です。 なぜかって?
健康保険料や厚生年金保険料の半額を社員側が負担しているという話は、形式的に負担している、というだけであって、社員の側が実質的にどれくらい負担しているかを語ってはいないからです。 それを理解していますか?
この問題については、次の書籍が参考になります。 上掲書125ページに、次の記述があります。 「あなた」とあるのは社員のことであり、「雇用者」とあるのは企業のことです。

つまり、あなたは自分の分担する額だけを支払うのではない。

あなたの雇用者が分担する額はすでにあなたの低い賃金に反映されているので、あなたは実質的に雇用者の分まで支払っていることになるのだ。

形式的には、企業と社員とで50%ずつ負担している健康保険料と厚生年金保険料ですが、実質的には社員が100%負担しているのです。 そのカラクリが、『クルーグマン ミクロ経済学』第4章第5節で、様々な図表を引き合いにして証明されています。
もう一つ、雇用保険というのがあります。 平成28年の雇用保険料率は、「1000分の11」になっています。 この「1000分の11」について、社員が負担する雇用保険料は「1000分の4」とされ、企業が負担する雇用保険料は「1000分の7」とされています。 「4 対 7」を百分率で表わすならば、「36.4% 対 63.6%」になります。 つまり、形式的には、社員の負担割合は、36.4%です。 健康保険料や厚生年金保険料の負担割合は50%でしたから、雇用保険料は社員側の負担が軽くなっています。 「オレよりも、企業側の負担割合が高いのか。よし、よし」と納得しているサラリーマンがいるとしたら、これまた大間抜けな話です。 答えは、先ほど『クルーグマン ミクロ経済学』から引用したように、雇用保険料は実質的に、社員が「1000分の11」の全額を負担しているのです。 雇用保険料を「4 対 7」として、社員側の負担を軽く見せているのは、厚生労働省の役人が捻り出したカラクリです。 霞が関には、かなりの知恵者がいるようだ。
上記で取り上げたのは、健康保険料などでした。 では、企業が全額を負担している法人税や法人住民税は、どうなのか。 『クルーグマン ミクロ経済学』125ページでは、次のように述べています。

あなたの雇用者は税金を支払っているが、それは賃金の減少によって全額補償されている。

だから、雇用者ではなく、労働者が税の全額を負担しているのだ。

つまり、法人税や法人住民税もその全額(100%)が、サラリーマンの給与から差っ引かれているということ。 政府が企業に対して賃金引き上げを要求するのであれば、法人税率の引き下げもセットでなければ意味がない、ということです。 政治評論家や経済評論家は、それをわかっているのかな。 というか、あなたは、こうしたカラクリを理解していましたか。 「会計知」や「税知」がないというのは、もの悲しい。