公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座










はてなブログは、ウェブリブログのバックアップ用であり、更新には数日の遅れがあります。

はてなブログ内のリンクはすべて、BIGLOBEウェブリブログへ接続します。

公認会計士高田直芳:すべての上場企業で採用される何とかの一つ覚えの固変分解


すべての上場企業で採用されている
なんとかの一つ覚えの固変分解

~ タカダ式操業度分析 vs.古典派会計学 ~

従前ブログ『おすすめの経済学書籍』では、会計学の「なぜ」を知るためには経済学を学ぶことが重要だ、と述べ、そのための書籍を4冊、紹介しました。
会計学を補強するために、経済学を学ぶのは大切なのですが、あらゆる経済学書を読みあさっても、決して説明されない理論があります。 それは、総コストを、固定費と変動費とに分解する方法です。
経済学では、総コストを総費用と呼び、固定費と変動費をそれぞれ固定費用可変費用と呼びます。 その経済学では驚くべきことに、総費用を、固定費用可変費用とに分解する方法を一切説明することなく、その先の話(完全競争市場や独占的競争市場など)が進められます。 この問題については、従前ブログ『実務で役立たない固定費の分類』で、次の毎日新聞のコラムを引き合いにだしました。
【資料1】毎日新聞2014年9月27日

無人島に流れ着いた物理学者と化学者と経済学者が缶詰を見つけたが、缶切りがない。

物理学者は「石をぶつけよう」、化学者は「たき火で破裂させよ う」と提案、経済学者に意見を聞く。すると彼、「ここに缶切りがあるとしよう……」。

市場経済を数学的に理論化する経済学の現実離れをからかったジョーク である。

上記のコラムの表現を拝借するならば、「ここに、固定費と変動費とが分解されているとしよう」という調子で話が進められることになります。
実務で役立たないことを議論する人たちの顛末は、従前ブログ『会計学が経済学から見下されるこれだけの理由』に委ねるとして、以下では「固定費と変動費とに分解する方法」の話を進めることにしましょう。 固定費と変動費とに分解することを、略して「固変(こへん)分解」といい、主に次の【資料2】の種類があります。
【資料2】
  1. 現代の会計学で扱う固変分解
    1. 勘定科目法による固変分解(「勘定科目法」と略称)

    2. 費目別精査法による固変分解(「費目別精査法」と略称)

    3. 最小自乗法(最小2乗法)による固変分解(「最小自乗法」と略称)

  2. タカダ式操業度分析で扱う固変分解
    1. 指数関数法による固変分解(「指数関数法」と略称)

    2. 対数関数法による固変分解(「対数関数法」と略称)

上記【資料2】1.には、実査法や高低点法といったものもありますが、実務ではほとんど用いられないので省略します。 上記【資料2】2.の指数関数法と対数関数法については、下記【資料6】で、セブン-イレブン・ジャパンの決算データをもとに説明します。
上記【資料2】1.a.の勘定科目法または【資料2】1.b.の費用別精査法は、すべての上場企業で採用されている固変分解といっていいでしょう。 また、世に1千万本の会計ソフトがあるとするならば、その1千万本すべてに、勘定科目法または費目別精査法が搭載されているといっていいでしょう。 勘定科目法によって固定費と変動費とに分解する方法は、次の拙著164ページ〔図表120〕で紹介しています。 前掲書164ページ〔図表120〕では、68種類のコストを、固定費と変動費とに分解する方法を紹介しています。
ところで、会計学には、管理会計財務会計という2つの分野があります。 管理会計で固変分解を行なって、固定費・変動費・限界利益(変動利益)などへと展開していく理論を、CVP分析(損益分岐点分析・限界利益分析・線形回帰分析)といいます。 財務会計で固変分解を行なって、予定配賦率や標準配賦率としてくくり、予定原価計算・標準原価計算・直接原価計算へと展開していくのが、いわゆる原価計算制度です。 それを会計基準としてまとめたものが、企業会計審議会『原価計算基準』です。 原価計算実務では、【資料2】1.a.の勘定科目法ではなく、【資料2】1.b.の費目別精査法のほうが用いられます。 費目別精査法は、科目比率法や科目按分法(科目案分法)と呼ばれることがあります。 費目別精査法については、次の関連ブログを参照してください。
【関連ブログ】
勘定科目法や費目別精査法といった分類の相違があっても、その計算方法は、管理会計のCVP分析(損益分岐点分析・限界利益分析・線型回帰分析)と同じです。 何が同じかというと、1次関数( )で表わされる、という点において。 この1次関数の式にある「 」は変動費率であり、「 」は固定費です。 すべての上場企業で採用されている固変分解も、1千万本のソフトに搭載されている固変分解も、1次関数( )に基づいている、という点では、まったく同じなのです。
「すべて」と言い切るからには、根拠があります。 上場企業が四半期ごとに公表する決算短信の、1ページ目の最下段にある業績予想が、その根拠です。 総コストを固定費と変動費とに分けなければ、営業利益・経常利益・当期純利益などの予想数値を計算することができないですから。 その業績予想を行なうために、上場企業のすべてで採用されているのが、1次関数のCVP分析です。 まさに「何とかの一つ覚え」。 また、上場企業で行なわれている原価計算実務は、予定原価・標準原価・基準原価といった名称の違いはあっても、そのすべてが1次関数の勘定科目法や費目別精査法に基づいています。 ここにも「何とかの一つ覚え」を見ることができます。
勘定科目法や費目別精査法には「理論上の瑕疵」があることを、本ブログや次の受賞論文で論証してきました。
【資料3】
上記の受賞論文に関連したブログとしては、次のものがあります。
【関連ブログ】
勘定科目法や費目別精査法の最大の弱点は、企業外部の者が、有価証券報告書などを用いて固変分解ができないこと。 上記【資料3】の受賞論文では、ドラッグストアの有価証券報告書を用いて勘定科目法を適用していますが、これは稀なケース。 そこで企業外部の者が、有価証券報告書などを用いて固変分解を行なう場合は、【資料2】1.c.の最小自乗法(最小2乗法)を採用することになります。 次の拙著132ページでは、表計算ソフトのSLOPE関数とINTERCEPT関数を用いた最小自乗法を紹介しています。 企業外部の者が取り組む固変分解の方法としては、最小自乗法も、これまた「何とかの一つ覚え」です。
最小自乗法の最大の弱点は、縦軸(Y軸)の固定費が、マイナスに転落するケースに、しばしば遭遇することです。 この問題については、【資料3】の受賞論文でも言及しましたし、次の関連ブログでも説明しました。
【関連ブログ】
最小自乗法では、なぜ、固定費がマイナスに転落するのか。 その原因は、やはり1次関数( )を採用しているからです。
1次関数とは、預金の利息計算でいえば、単利計算のこと。 ところが、現実の企業活動では、次の【資料4】に示す事実を観察することができます。
【資料4】
  • 製造業に勤務する人であれば、工場内の各工程を観察してみてください。
    • 工場内に無数に存在する工程に、材料費・労務費・経費を次々と投入していくと、無限回数の振り替え計算が行なわれていることがわかります。
    • 材料・仕掛品・製品などが入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 流通業に勤務する人であれば、店舗に置かれた商品を観察してみてください。
    • 日々仕入れた商品は、棚に補充したそばから、消費者へ次々と販売されていきます。
    • 膨大な商品が入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 財務や経理に携われる人であれば、手元にある帳簿を観察してみてください。
    • 上場企業のような大規模組織になると、帳簿に記帳される仕訳の数は、1日で数百行や数千行にものぼります。
    • 振り替えの仕訳を含めれば、年間では数億行や数十億行の仕訳の数になります。
    • 入金と出金を無限に繰り返すその様は、無限連鎖の複利計算を行なっていることと同じです。
つまり、企業のコスト構造の本質は、複利計算構造にあることがわかります。 上記【資料4】に基づいて描いたのが、次の【資料5】です。
【資料5】タカダ式操業度分析
画像
上記【資料5】にある曲線ABCDEは、複利曲線で描かれています。 現代の会計学が説く1次関数( )とはまったく異なる世界観が、【資料5】にあります。
上記【資料5】を、セブン-イレブン・ジャパンに当てはめたのが、次の【資料6】上図です。
【資料6】タカダ式操業度分析/セブン-イレブン・ジャパン
画像
現在の企業情報開示制度(ディスクロージャー制度)では、四半期報告書という名が示すように、年に4回しか財務諸表(決算書)が開示されません。 そのため、【資料6】では、4個の点だけをプロットしています。 私(高田直芳)以外の公認会計士やアナリストたちは、その4個の点を1次関数で結ぼうとします。 それに対して、私だけが「これは複利曲線で繋げることができるぞ」と見抜きました。 それをまとめたのが【資料3】の受賞論文です。
上記【資料6】上図は、指数関数で描いた複利曲線です。 指数関数の逆関数は「対数関数」であり、その対数関数で描いたのが、【資料6】下図になります。 上記【資料6】上図を「指数関数法による固変分解」といい、同下図を「対数関数法による固変分解」といいます。 上記【資料6】下図にプロットされた4個の点は、直線上に並んでいますが、その縦軸は「対数目盛」であることに注意してください。 指数関数と対数関数とは表裏一体ですから、【資料6】の上下にある、基準固定費、損益操業度売上高、予算操業度売上高、最大操業度売上高はすべて一致します。 指数曲線などの描きかた、そして基準固定費や予算操業度売上高などの金額の算出方法については、【資料3】の受賞論文で詳述しています。 上記【資料5】や【資料6】の図表を用いた分析方法について、かつてはSCP分析( Sales Cost and Profit Analysis )と称していました。 現在は、「タカダ式操業度分析」の名称で統一しています。
指数関数法や対数関数法は、私(高田直芳)のオリジナルです。 日本だけでなく、欧米にも存在しない固変分解の方法です。 指数関数法や対数関数法に基づいて固変分解を行なったり、業績予想を組み立てたりすることは、著作権侵害となります。 上場企業たるもの、コンプライアンス違反には、くれぐれもご注意を。
近年、人工知能AIが、会計や経理の世界を支配する、という意見が喧(かまびす)しい。
【関連ブログ】
しかしながら、人工知能AIがどれほど高度に発達しようとも、【資料6】に並ぶ4個の点から、そこに複利計算構造を見抜くことはできません。 少ない数のデータから、ものの本質を見抜くのは、人工知能AIでは不可能なのです。
上記【資料5】や【資料6】の指数曲線や対数曲線を描くにあたっては、「自然対数の底e」を用いて、微分積分を繰り返します。 その難解な構造を前に、「1次関数のCVP分析のほうが扱いやすい」と主張する人がいます。 簡単で単純な仕組みの会計など、いずれ人工知能AIに取って代わられることを覚悟したほうがいい。 1次関数のCVP分析(損益分岐点分析・限界利益分析・線形回帰分析)や、これまた同じ1次関数の原価計算制度を語っている人たちは、いずれ人工知能AIによって駆逐されることでしょう。
淘汰されゆく運命にある「1次関数のCVP分析に立脚した管理会計」や、同じく「1次関数に立脚した財務会計原価計算制度)」を、「古典派会計学」と呼ぶことにしよう。 【資料2】1.で例示した勘定科目法・費目別精査法・最小自乗法などを、「何とかの一つ覚えの固変分解」と呼ぶことにしよう。 人差し指を立てて古典派会計学を得意気に語る者たちよ、あなたがたは、高校生の頃に訓示を受けた「進取創造」の気概を忘れたか。
広告を非表示にする