公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座

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公認会計士高田直芳:損益分岐点分析と限界利益分析の違いvs.タカダ式操業度分析の異同

タカダ式操業度分析vs.古典派会計学 すべてを表示 人工知能AI ファイナンス 会計物理学

損益分岐点分析と限界利益分析の違い
vs.
タカダ式操業度分析の異同


本ブログでは何の説明もなく、「損益分岐点分析」や「CVP分析」の別称として、「限界利益分析」という名称を用いてきました。
限界利益分析は、貢献利益分析と呼ばれることもあります。
厳密には、損益分岐点分析とCVP分析とは同義であるのに対し、限界利益分析(貢献利益分析)とCVP分析(損益分岐点分析)とは異なります。 それを以下で、図表を用いて説明しましょう。
次の【資料1】は、管理会計や経営分析の教科書、そして会計系のシステムでは、必ず掲載または搭載されている図表です。
【資料1】損益分岐点分析その1(CVP分析その1)
画像
上記【資料1】では、次のように定義します。
【資料2】
    緑色の線分OA …… 売上高線 赤色の線分BC …… 総コスト直線 水色の線分BD …… 固定費線 線分AC …… 営業利益(経常利益や当期純利益もで代替可) 線分CD …… 変動費 線分DE …… 固定費 点P …… 損益分岐点 点G …… 損益分岐点売上高
上記【資料1】の問題点は、管理会計や経営分析で重要な経営指標とされている「限界利益」が、一目でわからないことです。 そこで、【資料1】にある三角形BCDと、長方形OBDEを、上下で入れ替えます。 入れ替えた結果が、次の【資料3】になります。
【資料3】損益分岐点分析その2(CVP分析その2)
画像
上記【資料3】のように変更しても、損益分岐点Pや、損益分岐点売上高Gの位置は変わりません。 さらに【資料3】では、線分AFが「限界利益」として炙り出されることになります。 また、∠AOFを「限界利益率」として表わすことができます。 (【資料1】の∠CBDは変動費率であって、限界利益率ではありません)
限界利益限界利益率には、どのような役立ちがあるのか。 これについては、次の拙著で詳述しています。 特に【資料4】は、2014年に改訂を行ない、第2版としています。
【資料4】
【資料5】
【資料6】
上掲書では、限界利益限界利益率を、変動利益・変動利益率と呼んでいる点に注意してください。 【資料4】の277ページ以降の「イソップ物語 金の斧銀の斧」では、限界利益率(変動利益率)という経営指標を用いると、「正直者のおじいさん」よりも「不正直者のおじいさん」のほうが、業績への貢献度が高いことを、具体的な数値で証明しています。 限界利益限界利益率が、企業の経営戦略を策定する上で、有用な経営指標だといわれる所以です。
上記【資料3】だけでも限界利益限界利益率を議論するには十分なのですが、これでは損益分岐点分析どまり。 上記【資料3】を、次のように改変します。 すなわち、【資料3】にある三角形OFEを取り払い、【資料3】にある平行四辺形OBCFを長方形に変えてしまうのです。 それが次の【資料7】の図表です。
【資料7】限界利益分析(貢献利益分析)
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【資料3】と【資料7】では、緑色の線分、赤色の線分、水色の線分がそれぞれ対応しています。

  • 上記【資料7】では、原点Oが、左下の点Hではなく、縦軸中央に移動していることに注意してください。

  • 【資料7】の損益分岐点Pは、【資料1】や【資料3】の損益分岐点とまったく変わりがないことを確認してください。

  • 【資料3】の限界利益率∠AOFと、【資料7】の限界利益率∠JHLも、まったく変わりがないことを確認してください。

上記【資料7】で限界利益限界利益率を議論することを、厳密な意味での「限界利益分析」といいます。 いきなり【資料7】を掲げて、「これが限界利益分析だ」と説明しても、ちんぷんかんぷん。 【資料1】→【資料3】→【資料7】の手順を踏むのが、限界利益分析を理解するための作法です。
損益分岐点分析ではときどき、「限界利益は、固定費の回収に貢献する利益だ」という説明が行なわれます。 この点を捉えて、限界利益を、貢献利益と読み替える場合があります。 限界利益分析と貢献利益分析とは同義というわけです。 では、「固定費を回収する」とは、どういうことか。 【資料1】や【資料3】で説明するのは難しい。 【資料7】を見ると、売上高がゼロのとき、固定費OHに相当する赤字が生じています。 売上高が少しずつ増えていくと、点Hから点Pへと駆け上がっていき、損益分岐点Pを超えると黒字になります。 この駆け上がるプロセスが、「限界利益は、固定費を回収する」という意味です。
ここからは別の話。 【資料1】【資料3】の損益分岐点分析や、【資料7】の限界利益分析は、管理会計や経営分析の教科書では鮮やかに説明されますが、実務ではまったく役に立ちません。 特に【資料7】の限界利益分析は、実務を知らない者たちが、重箱の隅をつついて捻り出した図表です。 問題は、【資料1】【資料3】【資料7】で描かれた赤色の線分にあります。 これは、企業のコスト構造を、1次関数の直線形(線型)で表わそうとしています。 1次関数とは、単利計算構造のこと。 すなわち、現代の管理会計や経営分析を語る人たちの発想は、企業のコスト構造を単利計算構造で捉えていることになります。
【資料1】【資料3】【資料7】にある最大の問題点は、どこにあるか、わかりますか。 答えは、損益分岐点Pを超えると、営業利益や限界利益が無限に増大するところにあります。 「作ったものは、すべて売れる」 「損益分岐点を超えれば、利益は無限に増大する」 こうしたことを仮定しているのが、損益分岐点分析であり、限界利益分析なのです。 人口知能AI に経営戦略の策定を委ねた場合、人工知能AI はすべての経営資源が枯渇するまで、ツマ楊枝やゼムクリップを生産し続けることになります。 その恐ろしさを説明したのが、次の関連ブログです。
【関連ブログ】
現実の企業活動は、単利計算構造なのか。 私(高田直芳)は、数多くの実務経験を積んでいく過程で、次の【資料8】に示す事実に気がつきました。
【資料8】
  • 製造業に勤務する人であれば、工場内の各工程を観察してみてください。
    • 工場内に無数に存在する工程に、材料費・労務費・経費を次々と投入していくと、無限回数の振り替え計算が行なわれていることがわかります。
    • 材料・仕掛品・製品などが入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 流通業に勤務する人であれば、店舗に置かれた商品を観察してみてください。
    • 日々仕入れた商品は、棚に補充したそばから、消費者へ次々と販売されていきます。
    • 膨大な商品が入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 財務や経理に携われる人であれば、手元にある帳簿を観察してみてください。
    • 上場企業のような大規模組織になると、帳簿に記帳される仕訳の数は、1日で数百行や数千行にものぼります。
    • 振り替えの仕訳を含めれば、年間では数億行や数十億行の仕訳の数になります。
    • 入金と出金を無限に繰り返すその様は、無限連鎖の複利計算を行なっていることと同じです。
つまり、企業のコスト構造の本質は、複利計算構造にあることがわかります。
特に【資料7】の限界利益分析を、複利計算構造で組み立て直すと、どうなるか。 次の【資料9】の受賞論文5ページにある図表を、【資料10】に再掲して説明を進めます。
【資料9】
【資料10】タカダ式操業度分析
画像
上記【資料10】について、【資料2】の色に染め変えたのが、次の【資料11】【資料12】【資料13】です。
【資料11】タカダ式操業度分析その1
単利計算構造の【資料1】を、複利計算構造の【資料10】で描き直したもの画像
【資料12】タカダ式操業度分析その2
単利計算構造の【資料3】を、複利計算構造の【資料10】で描き直したもの画像
【資料13】タカダ式戦略利益分析
単利計算構造の【資料7】を、複利計算構造の【資料10】で描き直したもの画像
【資料11】→【資料12】→【資料13】の手順を踏むのが、ここでも正しい作法です。
さて、上記【資料7】の限界利益分析では、損益分岐点Pを超えると、営業利益や限界利益は無限に増大します。 実務に携わる人であれば、「そんなバカな」と思うことでしょう。 ところが、机上で、【資料1】【資料3】の損益分岐点分析や、【資料7】の限界利益分析を操る人たちに、その声は届きません。 「机上の空論」で損益分岐点分析や限界利益分析を扱うものを「古典派会計学」と呼び、これを打破していこうということで、私(高田直芳)1人で闘いを挑んでいるのが、【資料9】の受賞論文から始まる「タカダ式操業度分析」です。 タカダ式操業度分析以外にもオリジナルの方程式を編み出しており、それら一連の体系を「会計物理学」と呼んでいます。
【関連ブログ】
上記【資料7】の限界利益分析と、【資料13】のタカダ式戦略利益分析とを見比べてみてください。 【資料7】の限界利益分析では、損益分岐点Pを超えると、営業利益や限界利益は無限に増大するのでした。 【資料13】では、縦軸上の点Sから出発した緑色の線は、損益操業度点Hを超えても、上昇していきます。 ここまでは、【資料7】の限界利益分析と同じです。 ところが、【資料13】では、損益操業度点Hを超えると、緑色の曲線は頭打ちの傾向を示し、点Qを超えると下降していきます。 これが「収穫逓減」です。 それに対し、【資料11】と【資料12】は、「費用逓増」です。 収穫逓減と費用逓増は表裏一体であることがわかります。
【資料13】にある点Qのところを「最大操業度売上高」といいます。 経済学で有名や利潤最大化条件「限界収入MR=限界費用MC」を満たすところでもあります。 「限界収入MR=限界費用MC」については、次の書籍499ページを参照。
マンキュー経済学Ⅰミクロ編
N.グレゴリー マンキュー
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古典派会計学は、経済学が数百年にもわたって磨き上げてきた理論を、まったく学習していないことがわかります。 だから会計という分野は、いつまで経っても、経済学から見下されるのです。
【関連ブログ】
経済学の知見がなくとも、高校のときに学習した「ロルの定理」を用いることによって、【資料13】の点Qを求めることができることを紹介しておきます。
【関連ブログ】
ところで、【資料13】では、最大操業度売上高に到達したときの線分QRを、「戦略利益(タカダ式限界利益)」と表示しています。 戦略利益という語は、次の拙著345ページが初出です。
【資料14】
「戦略利益」という語は、【資料14】の拙著を出版するとき(2010年5月)、インターネットなどでさんさん調べた結果、いまだ誰も使用していないということで、採用するに至りました。 「戦略利益」は、【資料7】で用いるのが、正しい作法です。 【資料7】の限界利益分析にある線分JL(限界利益)は、単利計算構造に基づきます。 それに対し、【資料13】のタカダ式戦略利益分析にある線分QR(戦略利益)は、複利計算構造に基づきます。 以上が、企業活動を、単利で捉えるか、複利で捉えるかの違いです。
単利と複利の違いなど、小学生でも理解できる話です。 ところが、古典派会計学を信奉する人たちは、単利と複利の違いが理解できないのです。 損益分岐点分析や限界利益分析を基礎に置く古典派会計学が、小学生たちから嘲笑されることになろうとも、それは古典派会計学が説明を負うべき責任。 とはいえ、空調のきいた部屋で「机上の空論」をこねくり回している人たちに、室外の嘲笑は聞こえないか。 こいつは救いようがない。