公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座

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公認会計士高田直芳:減収増益や増収減益を図解できない会計学のその愚かさを問う

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減収増益や増収減益を図解できない会計学
その愚かさを問う

~会計物理学はマクロ経済をも解き明かす~

2017年2月11日付の日本経済新聞では、次の記事が掲載されていました。
【資料1】日本経済新聞2017年2月11日

上場企業の2017年3月期業績が2期ぶりに最高益を更新しそうだ。

前期よりも円高水準にあり、全体で7期ぶりの減収になるものの、付加価値の高い製品やサービスで採算が大きく改善する。

上掲の記事はこの後、2面にわたる解説が展開されています。 付加価値などにツッコむ余地がありますが、記事は緻密に分析された内容です。 いや、ちょっと待てよ。 「2期ぶりに最高益を更新」と「7期ぶりの減収」の関係を、どれだけの人が正確に理解しているだろうか、と心配になってしまいました。 なぜなら、会計の専門家を自認する会計学者・公認会計士コンサルタントたちにとって、「2期ぶりに最高益を更新」と「7期ぶりの減収」の関係は、まったく説明がつかない現象だからです。
まず、定義を整理しておきます。 「減収」というのは、売上高が減少する略称です。 売上高が増加することを、「増収」といいます。 売上高からすべてのコスト(総コストまたは総費用)を減算したものが「利益」であり、これには営業利益・経常利益・当期純利益などがあります。 「増益」は利益が増えることであり、「減益」は利益が減ることです。 以上を組み合わせると、企業業績は次の4つのパターンに色分けされます。
【資料2】

  1. 増収増益
    ……売上高が増えて、利益も増えること

  2. 減収減益
    ……売上高が減って、利益も減ること

  3. 増収減益
    ……売上高は増えるが、利益は減ること
      「利益なき繁忙」といいます。

  4. 減収増益
    ……売上高は減るが、利益は増えること

上記【資料1】の記事は、【資料2】の「 4. 減収増益」のことを述べています。
そこで問題となるのは、現代の会計学は【資料2】の4つのパターンを、きちんと説明できるのか、という点です。 答えは、「できない」。 その理由を考えてみます。
ひと口に会計学といっても、これは管理会計・財務分析・経営分析・原価計算など多岐に分かれます。 ただし、どのように枝分かれしようとも、そこで示されるのは、次の【資料3】です。
【資料3】CVP図表(損益分岐点図表)
画像
上記【資料3】を用いて【資料2】のパターンを説明する方法を、CVP分析・損益分岐点分析・限界利益分析といいます。 「損益分岐点分析と限界利益分析は違うぞ」と反論する向きには、次の関連ブログを紹介しておきます。
【資料4:関連ブログ】
上記【資料3】において赤色で描かれた直線は、1次関数で表わされることから、CVP分析(損益分岐点分析)は別名「線形回帰分析」と呼ばれることがあります。 1次関数の線型回帰を原価計算制度に応用したものが、上場企業から中小企業に至るまで、大正9年から「なんとかの一つ覚え」のごとく採用されている予定原価・標準原価です。
【資料5:関連ブログ】
【資料3】の縦の線分ABEに注目します。 売上高が点Eにあるとき、利益は線分ABで表わされます。 売上高が点Eから点Fへ減ったとしましょう。 これは「減収」です。 このとき、利益は、線分ABから線分CDへ「縮小」しますから、「減益」となります。 売上高が点Fから点Eへ増加(増収)した場合は、線分CDから線分ABへと伸長(増益)します。 【資料3】を用いて説明できるのは、【資料2】の「1. 増収増益」と「2. 減収減益」の2つのパターンだけです。 【資料3】をどのように引っ繰り返しても、【資料2】の「3. 増収減益」と「4. 減収増益」は説明できません。 これが、現代の会計学が抱える「理論上の瑕疵(かし)」です。
さすがに経済学は、会計学のような瑕疵を抱えていません。 次の【資料6】に示す経済学書などを参照すると、2次関数または3次関数を用います。
【資料6】
次の【資料7】は、2次関数で描いたものです。
【資料7】経済学(2次関数)
画像
【資料7】において、横軸にある売上高が点Eから点Fへと減少(減収)したとき、利益は線分ABから線分CDへと伸長(増益)します。 これが、減収増益です。 【資料7】を用いれば、【資料2】に示した4つのパターンすべてを説明することができます。 会計学は2つのパターンしか説明できないのに対し、経済学は4つのパターンすべてを説明できる。 会計学が、経済学から見下される理由が、よくわかるというものです。
【資料8:関連ブログ】
「理論上の瑕疵」を放置している現代の会計学を、「古典派会計学」と呼ぶことにしています。
ただし、残念ながら、私(高田直芳)にいわせるならば、古典派会計学も経済学も、五十歩百歩で、どちらも大したことありません。 なぜなら──、
【資料9】
  • 上記【資料3】や【資料7】の赤色の直線または曲線が、企業のコスト構造を表わすものとした場合、
  • それが、なぜ、1次関数・2次関数・3次関数で描かれるのか、その説明がなされていないからです。
ちなみに、【資料7】の曲線は2次関数ですから、経済学では、企業活動を「放物運動」として捉えていることがわかります。 すなわち、等速度運動と等加速度運動の合成です。 しかし、なぜ、放物運動なのか。 経済学者は、【資料7】の上方に、ブラックホールなどの重力場でも想定しているのでしょうか。 日本だけでなく欧米の経済学書や論文などを調べてみましたが、【資料9】の「なぜ」に答えてくれる文献を見つけることはできませんでした。 そもそも、上場企業の有価証券報告書データなどを用いて、2次関数・3次関数を具体的に描いてみせた書籍や論文も存在しませんでした。 経済学よ、実務を愚弄するにもほどがある。 ──と批判するなら、自ら対案を示す必要があります。 それが、栃木の野に下った実務家の意地というものです。 税金を原資とした俸給で、ぬくぬくと暮らしている連中に、負けるわけにいきません。
私は、企業実務の最前線で、汗と油にまみれて働いているとき、次の事象を見出しました。
【資料10】
  • 製造業に勤務する人であれば、工場内の各工程を観察してみてください。
    • 工場内に無数に存在する工程に、材料費・労務費・経費を次々と投入していくと、無限回数の振り替え計算が行なわれていることがわかります。
    • 材料・仕掛品・製品などが入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 流通業に勤務する人であれば、店舗に置かれた商品を観察してみてください。
    • 日々仕入れた商品は、棚に補充したそばから、消費者へ次々と販売されていきます。
    • 膨大な商品が入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 財務や経理に携われる人であれば、手元にある帳簿を観察してみてください。
    • 上場企業のような大規模組織になると、帳簿に記帳される仕訳の数は、1日で数百行や数千行にものぼります。
    • 振り替えの仕訳を含めれば、年間では数億行や数十億行の仕訳の数になります。
    • 入金と出金を無限に繰り返すその様は、無限連鎖の複利計算を行なっていることと同じです。
つまり、企業活動の本質は、複利計算構造にあることがわかります。 それに基づいて描いたのが、次の【資料11】に示す「タカダ式操業度分析」です。
【資料11】会計物理学(タカダ式操業度分析)
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【資料7】と【資料11】それぞれの赤色はどちらも曲線であり、これらを曲線回帰といいます。 ただし、【資料7】と【資料11】とでは、その基本構造はまったく異なります。 【資料7】は2次関数の曲線型であるのに対し、【資料11】は複利関数の曲線形です。
【資料11】では、横軸の売上高が点Eから点Fへ減少(減収)するとき、利益は増加(増益)します。 これは、減収増益です。 もちろん、【資料11】を用いると、【資料2】の4つのパターンをすべて説明することができるし、【資料1】の記事も納得できる内容となります。 「いや、上記【資料1】の記事は、上場企業全体の集計であり、いわばマクロ経済である。マクロ経済では、複利計算構造はあり得ない」という反論がありそうです。 その反論はお門違いであることを、内閣府が公表している資料で検証してみます。
次の【資料12】は、内閣府のウェブサイトにある「国民経済計算(GDP統計)SNA産業連関表」でアップロードされているものを、私(高田直芳)が加工したものです。
【資料12】内閣府「SNA産業連関表」より
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【資料12】(1)の産出額を「ひぃ、ふぅ、みぃ」と数えていくと、「891兆6614億01百万円」であることがわかります。 【資料12】の1列目にある (1) から (16) までは、SNA産業連関表を構成する項目であり、2列目の (17) 以降は私(高田直芳)のほうで計算構造を示しました。
【資料12】にある「 (3) 支出=付加価値」を、国内総生産GDPと同義であると解釈します。 なぜなら、総務省統計局「国民経済計算」を参照すると、「国内総生産GDP)は、国(地域)内の生産活動による財貨・サービスの産出から原材料などの中間投入を控除した付加価値の総計である」と定義されているからです。 縦割り行政とはいえ、内閣府総務省とでその解釈が異なることはないでしょう。 したがって、【資料12】 (3) にある「支出=付加価値464兆2309億59百万円」を、この年の国内総生産GDPと同義であると解釈します。
次に、過去のSNA産業連関表をもとに、次の【資料13】で時系列展開を行ないました。
【資料13】SNA産業連関表の時系列展開
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【資料13】の最下行にある金額(産出額から間接税・補助金まで)が、【資料12】の金額と一致していることを確認します。 これにより、この年の国民所得 NI は、【資料13】の右端にある1330兆2668億66百万円と推計されます。 この推計方法は、総務省統計局「国民経済計算」に従っています。
国内総生産GDPから国民所得NIを計算する「初級マクロ経済学」を展開していて、面白い符合に気がつきます。 それは、次の対応関係があることです。
【資料14】

  1. 産出額
    →損益計算書の売上高

  2. 国内総生産GDP
    →付加価値(上掲【資料1】にあるものと同じ)

  3. 国民所得NI
    →損益計算書の利益(営業利益・経常利益・当期純利益

【資料14】の組み合わせは、暴論といわれそうです。 それは違います。 経済学を専門とする人々は、会計学を見下しているので、損益計算書や貸借対照表に興味はないし、会計学を専門とする人々は、マクロ経済に興味を持っていません。 互いに興味がなければ、互いを関連づけようという発想は生まれない。 門外漢は口を挟むな、という風潮もあるでしょう。 ただそれだけの話です。
総仕上げです。 次の【資料15】は、「産出額」と「中間投入・固定資本減耗・間接税・補助金」の関係を分布させたものです。
【資料15】会計物理学・タカダ式操業度分析(マクロ経済編)
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【資料15】の横軸は「売上高」に相当し、縦軸は「総コスト」に相当します。
【資料15】にある点の並びを、よぉく見比べてみてください。 これらの点は、【資料7】の2次関数ではなく、【資料11】の複利関数の形状をしていると読み解くことができます。 日本というマクロ経済も、複利計算構造を内蔵していることがわかります。
【資料15】は、なぜ、【資料11】の複利関数で読み解くべきなのでしょうか。 理由は簡単です。 【資料12】や【資料13】のSNA産業連関表にある「中間投入」は、産業から産業へと資源が再投入(複利運用)されていくからです。 それは、【資料10】で述べた「無限回数の複利計算構造」に他なりません。 アメリカの著名な経済学者といえども、マクロ経済を「日々複利の連鎖からなる計算構造」と見立て、複利関数でマクロ経済を描写する思考には至っていないことを申し述べておきます。 経済学者やエコノミストたちの思考は、1次関数であり2次関数であり3次関数どまりなのです。 以上の論旨は、次の【資料16】の受賞論文や、【資料17】の拙著に基づいています。
【資料16】
【資料17】
上記の受賞論文や拙著で展開している体系を「会計物理学」として創設し、私(高田直芳)のオリジナルとして展開しているのがこのブログです。
【資料18:関連ブログ】
会計物理学は、古典派会計学を凌駕し、ミクロ経済学だけでなく、マクロ経済学に変革を求めるものです。 その基本路線は、「文章だけの分析」に飽き足らず、具体的な数値をもとに図を描いて、実務に即した分析を行なうところにあります。