公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座

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東芝の連結財務諸表に現われる虚数解


東芝の連結財務諸表に現われる虚数

東芝で先日(2017年4月11日)、監査意見のないままに決算発表が行なわれました。
この件に関しては、メディアなどで、膨大な情報が流れています。 概要は、日本経済新聞で4月13日から連載されている「東芝を読み解くキーワード」などを参照すればいいこと。
自らの手で不適切会計や減損損失を詳細に検証することなく、メディアの尻馬に乗り、会計知のないまま、東芝を批判する風潮には、ウンザリしています。


個人的な関心事は、今後発表される確定値がどのようなものであるか、にあります。
自分なりに、「この売上高で、この減損損失であれば、これだけの純損失になるだろう」と予想を立て、私が創設した会計物理学のキモともいえる「タカダ式確率微分方程式」で解いてみました。 その過程で、東芝の連結財務諸表から「虚数解」が浮かび上がり、「ありゃりゃ」となってしまいました。


虚数解とは何か。 高校のとき、2次方程式の解の公式で、判別式 D というものを学習しました。

【資料1】
  1.  D>0 ならば 2つの実数解
  2.  D=0 ならば 重解
  3.  D<0 ならば 虚数

「タカダ式確率微分方程式」は、2次方程式や3次方程式ではないので、上記【資料1】の定義をそのまま当てはめることはできません。 「虚数などというものが、社会で役立つとは思えない」と憤って、高校生のときに数学の教科書を投げつけた人がいるかも。 いえいえ、いま、東芝連結貸借対照表連結損益計算書・連結キャッシュフロー計算書を読み解くのに役立ちます。 サワリを以下で説明しましょう。


現代の会計学では、次の図表を用いて、売上高・総コスト(総費用)・利益の関係を説明します。

【資料2】CVP図表(損益分岐点図表)
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上記【資料2】を、CVP分析といいます。 CVP分析は損益分岐点分析や線形回帰分析とも呼ばれ、会計学や会計システムの世界では、「なんとかの一つ覚え」として、100年以上も用いられている分析手法です。


上記【資料2】の特徴は、線分OE(売上高線)と、線分AD(総コスト直線)とが、損益分岐点Fという1点で交わっていることです。 つまり、実数解は1つだけ。 【資料1】など無縁の世界です。 CVP分析は中学の算数で解けるので、高校の数Ⅰで挫折した人たちにとっては居心地のいい分析手法です。


【資料2】の特徴は、総コスト直線(線分AD)が、1次関数( )で描かれている点にあります。 企業のコスト構造を、単利計算構造で捉えていることと同じです。 ところが、現実の企業活動では、次の【資料3】に示す事実を観察することができます。

【資料3】
  • 製造業に勤務する人であれば、工場内の各工程を観察してみてください。
    • 工場内に無数に存在する工程に、材料費・労務費・経費を次々と投入していくと、無限回数の振り替え計算が行なわれていることがわかります。
    • 材料・仕掛品・製品などが入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 流通業に勤務する人であれば、店舗に置かれた商品を観察してみてください。
    • 日々仕入れた商品は、棚に補充したそばから、消費者へ次々と販売されていきます。
    • 膨大な商品が入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 財務や経理に携われる人であれば、手元にある帳簿を観察してみてください。
    • 上場企業のような大規模組織になると、帳簿に記帳される仕訳の数は、1日で数百行や数千行にものぼります。
    • 振り替えの仕訳を含めれば、年間では数億行や数十億行の仕訳の数になります。
    • 入金と出金を無限に繰り返すその様は、無限連鎖の複利計算を行なっていることと同じです。

つまり、企業のコスト構造の本質は、複利計算構造にあることがわかります。 実際の企業活動は無限の複利計算構造を内蔵しているにもかかわらず、現代の会計学はそれを単利計算構造のCVP分析で解き明かそうとする。 なんと愚かな所業。 100年以上もの間、企業実務を無視し「机上の空論」を振りかざしてきた会計学を、「古典派会計学」といいます。


古典派会計学はひとまず、うっちゃっておいて、【資料3】の命題に基づいて企業のコスト構造を複利関数( )で描くと、次の【資料4】になります。

【資料4】タカダ式操業度分析
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【資料4】では、総費用曲線(総コスト曲線)が、「自然対数の底 」を用いた複利曲線で描かれています。 そのため、売上高線とは、点B(損益操業度点)と、点E(収益上限点)の2箇所で交わります。 すなわち、【資料4】の作図法によれば、「2つの実数解」があることになります。


東芝の場合は、どうなるか。 巨額の減損損失によって、【資料4】の総費用曲線(総コスト曲線)は、左上方へシフトしていくことが予想されます。 それは次の関連ブログで説明しました。

【資料5:関連ブログ】

今後、東芝で予想される「総費用曲線のシフト」を描くと、次の【資料6】になります。

【資料6】タカダ式操業度分析
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不適切会計(不正会計・粉飾決算)が発覚する前は、【資料6】にある赤色の曲線上で業績が展開されていました。 【資料6】の赤色の曲線が、【資料4】の総コスト曲線ABCDEに該当し、2つの実数解(点Bと点E)が存在していました。 今後、巨額の減損損失を計上すると、【資料6】の赤色の曲線は、緑色の曲線へ、さらには青色の曲線へとシフトしていくことが予想されます。


【資料6】にある緑色の曲線に注目します。 売上高線と、点Sの1点で接しています。 これは【資料1】2. の「重解」に相当します。 【資料6】では、点Sを、「機会費用ゼロ点(機会原価ゼロ点)」と表示しています。 進んでも赤字、退いても赤字の「利益なき繁忙」の状態にあります。 「機会費用ゼロ点 S 」は、次の書籍の417ページ〔図14-4〕にある「ATC曲線の最下点」と同じです。

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ただし、決して間違ってほしくないのは、日本の経済学者だけでなく、欧米の経済学者も全員、企業のコスト構造を2次関数または3次関数で捉えている点です。 企業活動を「無限の複利計算構造」で捉えようとしている経済学者や会計学者は、1人もいないことを申し添えます。 それに対し、古典派会計学や経済学を完璧に置き去りにしているのが、【資料4】や【資料6】のタカダ式操業度分析です。 私(高田直芳)のオリジナルです。


【資料6】にある青色の曲線に注目します。 これは、売上高線とは交わらない状態です。 【資料2】の損益分岐点分析と決定的に異なる状態です。 【資料6】の青色の曲線上では、どのような売上高を計上しようとも、必ず損失になります。 【資料1】3. の「虚数解」に相当します。 ただし、「タカダ式確率微分方程式」から導かれた虚数解が、実際に正しいかどうかを検証するには、私の数学知識では限界があります。 「タカダ式確率微分方程式の未解決問題その1」としておきます。


「タカダ式確率微分方程式」とは、タカダ式操業度分析にとどまらず、次の関連ブログで紹介している方程式を基礎にして、会計物理学のノウハウを詰め込んだものをいいます。

【資料7:関連ブログ】

古典派会計学というのは、自らを権威付けるために、難解な用語を駆使しているだけ。 化けの皮を剥がせば、中学の算数止まりです。


ところで、【資料1】2. の「重解」は、次の式で表わすことができます。

【資料8】

上記【資料8】の導出方法については、次の拙著177ページ、または下掲【資料9】の受賞論文9ページ〔図表11〕で説明しています。

「2つの実数解」については、上掲書166ページで、表計算ソフトEXCELの「ソルバー機能」を用いて解く方法を紹介しています。 【資料1】1. の「2つの実数解」と同2. の「重解」は、「タカダ式確率微分方程式」に頼ることなく、計算することができます。


さて、「未解決問題その1」があるということは、「その2」もあります。 実数解や虚数解の判別式云々の話は、まだまだ底が浅い。 話はさらに、次の方向へと転回します。 【資料4】にある複利曲線(総費用曲線ABCDE)に注目します。 この曲線上を企業業績が移動するのは、春夏秋冬の季節変動の影響を受けるからです。 その様子を、次の受賞論文の25ページ(ヤマト運輸)、27ページ(アサヒビールアース製薬)で描きました。

【資料9】

上記の受賞論文に掲載している、アース製薬の時系列推移を、次の【資料10】に掲げます。

【資料10】アース製薬/タカダ式操業度分析の時系列推移
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【資料10】にある「予算操業度100%ライン」とは、【資料4】の予算操業度売上高を100%としたものです。 また、【資料10】にある「損益操業度率」とは、【資料4】の損益操業度売上高を百分率で表わしたものです。 【資料10】にある「四半期実際操業度率」とは、四半期ごとの実際売上高の時系列推移です。 殺虫剤を扱うアース製薬は、夏場の操業度率が高く、冬場の操業度率が低く推移しています。 これが季節変動です。 【資料10】で大きく波打つ波形は、三角関数 であり、円周率 の世界に足を踏み入れたものです。


もう一度、【資料6】の赤色・緑色・青色の曲線に注目します。 これらは「自然対数の底 」を用いた複利関数で描かれています。 そして、「虚数 」が現われる。 となると、話は次の書籍に行き着きます。

上掲書は、次の関連ブログでも紹介しました。

【資料11:関連ブログ】

上掲書『オイラーの贈物』234ページに、次に示す「オイラーの公式」があります。

【資料12】オイラーの公式

または

上記【資料12】のオイラーの公式は、ノーベル物理学賞受賞者ファインマンが、「人類の至宝だ」と絶賛したものです。 本ブログでその存在を予言している「タカダ式確率微分方程式」は、その途中で、【資料10】のオイラーの公式が、ひょっこり顔をのぞかせるはずなのですが……。 こいつが難儀な作業でして。 私の数学知識では、タカダ式確率微分方程式オイラーの公式との関係性を導き出すことができません。 「タカダ式確率微分方程式の未解決問題その2」としています。


私は在野の実務家であり、いかなる「象牙の塔」にも属していないので、学問の発展に貢献する義務がないのが気楽なところ。 会計専門書に掲載されたり会計システムで映し出されたりしているCVP図表【資料2】を眺めながら、日々、笑い転げています。 「タカダ式確率微分方程式」は、いまのところ我が家のサーバー奥深くに仕舞い込んだまま。 次の【資料13:関連ブログ】の【引用6】のエピソードに嫌気が差しているので、「タカダ式確率微分方程式」を公表する動機づけが乏しい。

【資料13:関連ブログ】

「タカダ式確率微分方程式」については特許申請を考えていますが、現在、会計監査や税務などの業務多忙につき時期は未定。 税金を原資とした俸給・補助金助成金などで、ぬくぬくと暮らしている人たちとは、住む世界が異なります。 22世紀になって、人工知能AI が「タカダ式確率微分方程式」を超えてくれることを期待する。 頑張ってくれ、Artificial Intelligence 。

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