公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座

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ETV特集経営戦略の策定にミクロ経済学と管理会計は役に立つ


ETV特集/経営戦略の策定に
ミクロ経済学管理会計は役に立つ


この連休中に放映されたTV番組の中で、繰り返し視聴したのが、次のETV特集
【資料1】
デービッド・アトキンソン(小西美術工芸社)社長は、ゴールドマン・サックス証券アナリストから転身した英国人(社名の「芸」は旧字)。
異色といっては失礼。 日本の文化財を誰よりも理解し、誰よりも危機感を抱いている。
いまから2年前(2015年5月)、村上龍カンブリア宮殿』にも出演していました。
日本の総人口が減少していけば、観光客も修学旅行も当然、減少する。 国や自治体からの補助金も先細り、文化財を修復する資金もままならぬ。
このまま手をこまぬいていては、日本の文化財は荒廃する一方。 どうする、ニッポン。 アトキンソン社長が、【資料1】の番組内で提言した内容に、私は画面の前で腕組みをして、「う~ん」と唸り声を上げるばかりでした。
特に、組織を存続させるための、人事制度改革の話は秀逸です。 小西美術工芸社で導入された人事制度は、役所や象牙の塔の中で胡座をかいている人たちには、思いもよらない話です。 彼らは、「予算が足りぬ。予算を増やせ」と主張するばかりだから。 詳細は、【資料1】の番組を視聴してもらうこととして、今回は、アトキンソン社長の話に、ミクロ経済学のノウハウが盛り込まれていたことを、以下で補足説明しておきます。
アトキンソン社長が強く指摘していたのは、日本の文化財の拝観料が、諸外国に比べて「安すぎる」という点でした。 外国の拝観料が平均で1,891円であるのに対し、日本の拝観料の平均は593円。 その差は3.2倍。 しかも、日本の拝観料は一律。 平等という意味を、履き違えているというべきか。 外国から日本を訪ねに来る観光客は、カネをかけているのだから、一部の観光客の拝観料を高くしても問題ない、というのが、アトキンソン社長の主張です。 なるほど、なるほど。
具体的な経営戦略として、次のように、拝観料に差を付ける。
【資料2】

  • 庭園だけを見たい観光客の拝観料は600円。

  • 庭園だけでなく本殿も見たい観光客には、プラス1,000円。

  • 神事などのイベントまで見たい観光客には、さらにプラス1,000円。
拝観料を一律にするのではなく、観光客の希望に応じて、異なる拝観料を設定する戦略です。 これって、ミクロ経済学でいう「消費者余剰の総取り戦略」ですね。
消費者余剰って何? と首を傾げる人は、次の書籍の208ページ〔図7-1〕を参照。 『マンキューミクロ経済学』208ページ〔図7-1〕では、ジョン、ポール、ジョージ、リンゴの4名に、エルビス・プレスリーのアルバムを販売する戦略が描かれています。
この場合、ジョン以下4名全員に、均衡価格の50ドルで売るのは、ド素人の経営戦略。 レコード会社が採用する経営戦略は、そうではない。 ジョンには100ドル、ポールには80ドル、ジョージには70ドル、リンゴには50ドルで売るのです。 モノやサービスを強く欲しがる人には、相応の価格を設定して高く売る。 これにより、レコード会社は、上掲書219ページ〔図7-7〕にある「消費者余剰」(水色で染められた三角形)を、レコード会社の生産者余剰(橙色の三角形)として取り込むことができるのです。 いわば、オセロゲーム(リバース)みたいなもの。 アトキンソン社長が提言しているのは、上掲書219ページ〔図7-7〕にある消費者余剰を、生産者余剰として取り込むことにより、文化財修復の資金を捻出しようというものでした。 これは見事な経営戦略だ。
消費者余剰については、次の関連ブログで、「取引利益」という用語でも説明しています。
【資料3:関連ブログ】
相手の「取引利益」をゼロにして、「取引利益」のすべてを自分のものにする場合、需要曲線と供給曲線はどのように描かれるのか、というのが、上記関連ブログの内容でした。
日本のビジネスパーソンや官僚と話をしていて痛感するのは、法令や規則やマニュアルなどにはやたらと詳しいが、ミクロ経済学に関する知識が疎かにされていること。 日本の経営者や経営幹部に伝えたい。 経営戦略を策定するにあたり、ミクロ経済学のノウハウは、非常に役立つものであるということを。
ただし、残念ながら、ミクロ経済学には、大きな弱点があります。 具体的な決算データを用いた実証が、決定的に足りないことです。 「机上の空論」に終始し、実務で役立たないのが、経済学の困ったところ。
【資料4:関連ブログ】
それを補うのが、管理会計という世界です。 次の拙著は、それを詳細に解説したものです。 ただし、残念ながら、現在の管理会計には「理論上の瑕疵」があります。 例えば──、
【資料5】

  1. 損益分岐点を超えると、利益が無限に拡大する、という理論構成は、おかしくないか。

  2. 企業価値を測定するための一般公式や実務解は存在しない、というのが通説なのに、企業価値を得意気に語る人たちが存在するのって、おかしくはないか。

  3. コンサルティングファームから分厚い報告書を受け取ったのに、それに基づいて行なったM&Aで、巨額の減損が発生するのは何故なのか。
そうした矛盾を克服していこうというのが、私(高田直芳)が創設した会計物理学という世界です。 その一端を示す公式集を、以下に掲げておきます。
【会計物理学の公式集】 Google Chart API で作成
  1. タカダ式操業度分析
    1. タカダ式コスト関数

        ……基準固定費( Standard Fixed Cost ) ……自然対数の底( Base of Natural Logarithm ) ……予算係数( Budget Factor )
    2. 売上高関数

      1. 収穫一定 

      2. 収穫逓減 

      3. 収穫逓減(マクローリン展開テイラー展開
  2. タカダ式操業度分析の収益指標
    1. 損益操業度売上高・収益上限点売上高

    2. 予算操業度売上高(予算係数の逆数)

    3. 最大操業度売上高その1(管理会計の利潤最大化条件)

    4. 最大操業度売上高その2(管理会計の利潤最大化条件)

  3. 最適キャッシュ残高方程式
    1. 2項分布を応用した最適キャッシュ残高方程式

    2. ポアソン分布を応用した最適キャッシュ残高方程式

  4. タカダ式キャッシュフロー方程式

  5. タカダ式操業度分析の経営指標
    1. 実際操業度率( Actual Operating Rate )

         ……実際売上高 ……予算操業度売上高
    2. 損益操業度率( Profit and Loss Rate )

          ……損益操業度売上高 ……予算操業度売上高
    3. 戦略利益( Strategic Benefit )

      =(営業利益or当期純利益)+(基準固定費)×(実際操業度率)

  6. キャッシュフロー関係の経営指標
    1. タカダ式フリーキャッシュフローその1

      =(実際キャッシュ残高)-(最適キャッシュ残高方程式の解)

    2. タカダ式フリーキャッシュフローその2

      =(実際キャッシュ残高)-(タカダ式キャッシュフロー方程式の解)

  7. タカダ・デフレーター

  8. タカダ式ポートフォリオ指数

  9. 倒産確率デフォルト方程式

  10. タカダ式企業価値方程式
    1. 他人資本方程式

    2. 自己資本方程式

    3. タカダ式企業価値方程式

  11. 最適資本構成タカダ理論の解法
    1. 解法その1(収穫逓減による)

      微分する。

    2. 解法その2(代替財による)

      (最適デット比率):(最適エクイティ比率)

      =(自己資本コスト率):(他人資本コスト率)

    3. 上記 a. b. のどちらの解法によっても次の一般公式が導かれる。

  12. 最適資本構成タカダ理論の一般公式
    1. 他人資本比率の最適解

    2. 自己資本比率の最適解

    3. D/Eレシオの最適解( Optimal Solution )

    4. D/Eレシオの実績値( Actual Solution )

         ……加重平均資本コスト率

それにしても、日本人が、アトキンソン社長と同じ主張をしても、同じ日本人からは受け入れられないだろうな。 欧米コンプレックスは、いかんともしがたい。
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