公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座










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公認会計士高田直芳:アマゾンの最安値問題を説明できない会計学の愚かさを問う(その1)


アマゾンの最安値問題を
説明できない会計学の愚かさを問う
その1


次の記事を読んだ人は多いことでしょう。
【資料1】日本経済新聞2017年6月2日

電子商取引(EC)大手のアマゾンジャパン(東京・目黒)が、最安値での出品を納入業者に保証させる契約を見直すことを受け、公正取引委員会は1日、契約が独占禁止法に違反するかを判断するための調査を打ち切ると発表した。

上記の記事について、経済学または会計学の視点で、次の3回にわたり、いくつかの問題点を紹介することにします。
【資料2:関連ブログ】
今回、公正取引委員会が問題視したのは、最恵待遇(MFN)条項と呼ばれる契約手法です。
【資料3】日本経済新聞2017年5月31日

インターネット上の様々なECサイトはそれぞれ契約期間の長さや割引率などが異なるため、企業が製品などを納める価格も本来は異なるはずだ。

アマゾンは強い取引上の立場を使って納入業者に対して他の競合ECサイトと同等の価格・品ぞろえを約束させている。(途中略)

アマゾンに限らず幅広い品ぞろえと低価格を実現するため小売業界などで一般に用いられてきた手法だが、電子商取引(EC)市場で急成長を遂げたアマゾンの市場支配力が強まり過ぎるとして懸念も出ていた。

最恵待遇(MFN)条項というのは、経済学でいう「価格上限規制」です。 価格上限規制については、次の『マンキュー・ミクロ経済学』であれば172ページ〔図6-1〕を参照。 『クルーグマン・ミクロ経済学』であれば172ページ〔図5-2〕または174ページ〔図5-3〕〔図5-4〕を参照。
マンキュー ミクロ経済学
N.グレゴリー マンキュー
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マンキュー・ミクロ経済学』や『クルーグマン・ミクロ経済学』に掲載されている図を見て間違えてならないのは、右上がりの供給曲線はアマゾンへの納入業者が直面するものであり、右下がりの需要曲線はアマゾンが直面するものである、と見立てることです。 ここで描かれている需要曲線を、アマゾンから商品を購入する最終消費者が直面するもの、と見立ててはいけません。
公正取引委員会が問題視した最恵待遇条項が抱える問題点は、『クルーグマンミクロ経済学』174ページ〔図5-4〕の右図で説明することができます。 1つめは、この〔図5-4〕において、灰色で塗られた部分が発生することです。 これは、市場全体で大きな損失が発生していることを表わしています。 2つめは、生産者余剰の一部が、消費者余剰へ転嫁することです。 これは、納入業者の利益の一部を、アマゾンが搾取することを表わします。 3つめは、最恵待遇条項によってアマゾンは、消費者余剰の一部(〔図5-4〕の灰色の部分)を失うことになりますが、その損失部分を犠牲にしても、納入業者から搾取する生産者余剰のほうがはるかに「お得だ」ということです。 【資料3】の記事にもあるとおり、市場支配力が強すぎる企業の場合、いま述べた3つの問題が現われます。 公正取引委員会は、それが、けしからん、ということです。