公認会計士高田直芳 会計物理学&会計雑学講座










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公認会計士高田直芳:アマゾンの最安値問題を説明できない会計学の愚かさを問う〔その3〕


アマゾンの最安値問題を
説明できない会計学の愚かさを問う
その3


今回は、第3回です。 前2回は、次の説明を行ないました。
【資料1】

  1. アマゾンの最安値問題 【関連ブログ その1】
    → 価格上限規制
    → 生産者余剰の一部が、消費者余剰へ転嫁される。

  2. 酒類販売の安値販売の規制強化 【関連ブログ その2】
    → 価格下限規制
    → 消費者余剰の一部が、生産者余剰へ転嫁される。
上記の問題が起きるのは、価格弾力性に原因があるからです。 次の書籍246ページで、その理由が述べられています。 【資料1】の事例において、もし、アマゾンへの納入業者が直面する供給曲線の価格弾力性が「1」よりもはるかに大きいのであれば(無限大であるならば)、公正取引委員会が目くじらを立てることはありません。 なぜなら、生産者余剰は限りなくゼロとなり、アマゾンによって搾取されるものがないからです。 価格弾力性が「1」よりもはるかに小さいから、公正取引委員会が介入するのです。
そこでまず、価格弾力性が「1」よりもはるかに大きい(無限大になる)ケースを考えてみることにします。 これは、供給曲線が水平になる、ということです。 それを図解しているのが、次の書籍152ページに掲載されている〔図5-6 供給の価格弾力性はどのように変化するか〕です。
マンキュー ミクロ経済学
N.グレゴリー マンキュー
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上掲書〔図5-6〕の一部を描いたのが、次の【資料2】です。
【資料2】供給曲線の価格弾力性
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世界に名だたるマンキュー教授が描くのですから、【資料2】は正しいのでしょう。 そうなると、いくつかの疑問が浮かび上がります。
そもそも、供給曲線は、どのようにして描かれるのでしょうか。 『マンキュー・ミクロ経済学』414ページでは、短期の供給曲線の根拠が記述されています。 また、同書417ページでは、長期の供給曲線の根拠が記述されています。 短期にしろ、長期にしろ、限界費用を連ねたものが供給曲線になる、というのが経済学の結論です。
では、限界費用とは何か。 これは総費用曲線上の「接線の傾き」のことです。 会計学の用語でいえば、変動費率のこと。(変動費ではありません) したがって、変動費率(限界費用)を連ねたものが、供給曲線になります。
会計学では、変動費率をどのようにして表わしているのか。 これは「何とかの一つ覚え」みたいに、次に掲げるCVP図表(損益分岐点図表)というものを利用します。
【資料3】CVP図表(損益分岐点図表)
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上記【資料3】において、∠CABは変動費率、すなわち限界費用を表わします。 この変動費率(限界費用)の傾きは、一定です。 したがって、会計学では、供給曲線を、横軸に水平で描くことになります。 これは何を意味するか。
会計学では供給曲線を水平に描くのですから、
    →供給の価格弾力性は「1」よりもはるかに大きく、無限大となり、
    →生産者余剰はゼロとなります。
したがって、会計学者や公認会計士などの会計専門家の立場からすると、
    →アマゾンジャパンが、納入業者に対して最安値を要求する行為は、納入業者にとって何ら不利益とならず、
    →アマゾンジャパンの最恵待遇条項は、まっとうな約款であり、
という結論になります。 へぇ、そうなんですか。 ──まったく何を考えているんだか。 こういう、とんちんかんな結論を導く会計学を、古典派会計学といいます。
参考までに述べると、【資料3】で、供給の価格弾力性を「1」よりも大きく描くことは可能です。 それは、総費用線ACの傾きが、売上高線ODを上回る場合です。 ただし、この場合、固定費はマイナスに転落します。 そうした作図が、理論として成り立つのかどうか。 前世紀(20世紀)初頭から百年以上もの間、「成り立つのだ」としてきたのが、古典派会計学です。 ──まったく何を考えているんだか。
古典派会計学の、どこに誤りがあるのでしょうか。 現実の企業活動を観察すると、次の【資料4】に示す事実を見出すことができます。
【資料4】
  • 製造業に勤務する人であれば、工場内の各工程を観察してみてください。
    • 工場内に無数に存在する工程に、材料費・労務費・経費を次々と投入していくと、無限回数の振り替え計算が行なわれていることがわかります。
    • 材料・仕掛品・製品などが入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 流通業に勤務する人であれば、店舗に置かれた商品を観察してみてください。
    • 日々仕入れた商品は、棚に補充したそばから、消費者へ次々と販売されていきます。
    • 膨大な商品が入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 財務や経理に携われる人であれば、手元にある帳簿を観察してみてください。
    • 上場企業のような大規模組織になると、帳簿に記帳される仕訳の数は、1日で数百行や数千行にものぼります。
    • 振り替えの仕訳を含めれば、年間では数億行や数十億行の仕訳の数になります。
    • 入金と出金を無限に繰り返すその様は、無限連鎖の複利計算を行なっていることと同じです。
つまり、企業のコスト構造の本質は、複利計算構造にあることがわかります。 上記【資料4】の命題に基づいて、企業のコスト構造を描くと、次の【資料5】になります。
【資料5】タカダ式操業度分析
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上記【資料5】で描かれている曲線ABCDEは、複利曲線です。 それに対し、【資料3】では、企業のコスト構造を右上がりの直線で描いています。 これは企業のコスト構造を、単利計算構造で捉えていることになります。 企業のコスト構造は複利計算構造を内蔵しているにもかかわらず、それを単利計算構造で解き明かそうとする古典派会計学が、如何にとんちんかんな理論であるか、知れようというものです。
上記【資料5】にある曲線ABCDE上の接線の傾きは限界費用なのですから、これを繋ぎ合わせると、次の【資料6】の供給曲線を描くことができます。
【資料6】タカダ式操業度分析から導かれる供給曲線
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上記【資料6】が、【資料2】および『マンキュー・ミクロ経済学』152ページ〔図5-6〕とよく似ていることを確認してみてください。 上記【資料6】で表示している方程式は、【資料5】から導かれる供給曲線の方程式です。
【資料4】から【資料6】までの理論に基づいた場合、アマゾンジャパンの最恵待遇条項は不当な約款であり、公正取引委員会が介入する行為は正しい、という結論が導かれます。 以上が、100万人が信奉する古典派会計学に対して、たった1人で対抗する「会計物理学の世界」です。 なお、【資料4】と【資料5】の詳細は、次の受賞論文を参照のこと。
【資料7】
CVP分析(損益分岐点分析)に立脚した古典派会計学を墨守する人たちに警告しておく。 そのような体たらくだから、いつまで経っても会計学は、経済学から見下されるのだということを。